資産運用

2025.07.27 08:30

清原達郎、伝説のファンドマネージャーが教えるこれからの相場

清原達郎|投資家

これはアクティビスト系のファンドのやり方に似ていますが我々はそうはなりませんでした。「friendly activism (友好的アクティビズム)」という言葉がありますが、これはoxymoron (矛盾)で皮肉めいています。アクティビストは企業にとって嫌なやつであればあるほどパフォーマンスが良くなりますから。経営への影響という、ある種の嫌がらせを続けなければいけないので手間もかかるし、それが「快感」でなければ精神的負担も大きいでしょう。

我々は逆に投資先の社長を情報源にする道を選んだのです。どんなに小さな会社でも社長の情報網はすごい。これを生かすのです。

──日本市場では、新NISAなどをめぐる個人投資家や海外投資家の資金流入が加速しています。

清原:個人投資家が新NISAを通じて株式投資を増やしていることはとてもポジティブです。少額でも裾野が広い個人投資家層に積立投資が広がれば、日本株の需給はじわじわ改善するでしょう。

最大のメリットは「これだけ個人に新NISAが浸透すると、もう日本政府は日本株式にネガティブな政策は取れない」ということです。法人税を大きく上げるとか、自社株買いに課税するとか、そんな政策はリスクとして考えなくてもよい。まさに投資の起点がさらに投資を呼び込む「好循環のスパイラル」です。(続きは7月25日発売「Forbes JAPAN 2025年9月号」でご覧ください。)


きよはら・たつろう◎1981年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年、野村證券に入社し海外投資顧問室に配属。86年、野村證券NY支店配属。98年、タワー投資顧問で基幹ファンド「タワーK1ファンド」をローンチ。2023年、同ファンドの運用を終了し、退社。著書『わが投資術』(講談社)は、投資家のバイブルになっている。

文=下原一晃 イラスト=ベルンド・シーフェルデッカー

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2024.08.13 08:00

清原達郎に学ぶ「わが投資術」と「危機への対処」

清原達郎

清原達郎

どん底も絶頂も経験した投資家は、この先の日本経済をどのように見通しているのか。理論と直観を武器に闘い抜いてきた男が語る日本の美点と幸福について。


2005年に発表された「最後の長者番付」で、私は高額納税者トップとして名前が掲載されました。「タワー投資顧問運用部長・清原達郎」の2004年分の納税額は36億9238万円。3位にはユニクロの柳井正さん(10億8393万円)がおりましたね。投資会社でヘッジファンドを運用する一サラリーマンが日本一の長者として名前が上がったわけで、いろんなことが起きました。埼玉県の元モデルとかいう女性が「5000万円預けたい」といきなり私を訪ねて会社に来たこともありました。これぞ詐欺師という人にも会いましたねえ。

「伝説の投資家」などと呼ばれたり、今年出版した『わが投資術 市場は誰に微笑むか』が15万部を超えるベストセラーになったりと、まあ、こうした評価の元は20年前の「長者番付」にあるわけです。

直観とは経験値の積み重ねである

ただ、私は才能のある投資家ではありませんし、SNSをやりませんので、私を名乗るアカウントはすべて詐欺です。「他人からの情報をうのみにせず、自分で考えて判断する」という至極真っ当な行動原理に基づく投資をしているだけです。例えば私の投資方針は「割安小型株投資」ですが、その理由のひとつはIPO銘柄の財務諸表に「厚化粧」がされている可能性があるからです。

どんなに信頼性の高い情報であっても95%くらいに信じておくことが肝心です。なぜなら、時間の経過とともに新しい情報が入ってくるからです。人間は印象第一主義というか、初めに信じた情報を信じ続ける慣性が働いてしまうのですよ。事後的に修正できる余地を残しておいたほうが、判断の確度をあげることができるのです。

ただ、すべての判断が理詰めというわけでもありません。判断の因数の何割かは「直観」です。ただし、大きな判断を下すとき「どこまでが直観でどこからが理屈なのか」は正直わからないと思います。
 
コロナで株価が暴落した2020年3月、私は力いっぱいメガバンクの株を買いましたが、それが直観によるものかどうか判別できません。暴落した瞬間、私は「これは買いだ」と思いましたが、次の瞬間にはある程度の理屈は考えていましたから。アイデアが出てくる最初の瞬間が「直観」に近い概念かもしれません。ですから、あえて言葉にするとすれば、「直観とは経験値の積み重ね」にほかならないと思います。
 
投資において直観と理屈の境界線はあるようでないようなものかもしれません。思い出すのはリーマンショックで600億円の実現損失を出してしまったときのこと。ただでさえ致命的な打撃を受けていたところに、ゴールドマン・サックスから「マージンを変更したい」と。これは簡単に言えばロングポジションの100株に対して50のお金を借りられたのに、30に減らしてほしいと言われたようなものです。さらには私の運営するファンドから約半数の顧客が離れていってしまいました。ファンドのお金はどんどん少なくなり、最後には個人預金30億円を全部ファンドにぶちこみ、私の全財産がファンドに投入されました。
次ページ > 社員を大切にできない会社など論外

取材=谷本有香 文=出野宏一 写真=野口 博

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資産運用

2025.07.25 08:30

「アンロック・ジャパン」の衝撃 これからの最良の資産運用術

イラストレーション=スプーキープーカ

イラストレーション=スプーキープーカ

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号は、「次のバフェット・モデルを探せ」特集だ。一代で1,500億ドルの資産を積み上げたオマハの賢人ウォーレン・バフェット。「投資の神様」の引退表明というビッグニュースは、瞬く間に世界中に響きわたった。足元では、トランプ第二次政権の関税政策によって世界経済の不透明感が高まり、景気の先行きが読めない不安相場に。金融マーケットは大きな転換点を迎えた可能性がある。

投資家たちはこの変化にどう向き合っていくべきか。本特集の冒頭では、Forbes JAPAN創刊初期から連載を通じて金融業界の未来を指し示してきたレオス・キャピタルワークスの藤野英人と根津アジア・キャピタル・リミテッドのデービッド・スノーディ、創刊編集長で本誌ファウンダーの高野真が、業界とマーケットのこれからについて語り合った。キーワードは、「アンロック・ジャパン」だ。


高野 真(以下、高野私は本誌ファウンダーの立場ですが、フォーブス ジャパンを立ち上げる前は27年にわたり株式のリサーチや資産運用業務に従事してきました。皆さんも1990年代からこの業界に携わっていますよね。まずこの30年間の業界の歩みをどうとらえているか教えてもらえますか。

藤野英人(以下、藤野日本の資産運用業界は劇的に良くなってきたと思います。運用会社の商品は多様化してきましたし、投資家の質も上がってきています。今、日本にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)と聞いてすぐにピンとくる人が少なくとも2,000万人はいるでしょう。

デービッド・スノーディ(以下、スノーディ私が日本でヘッジファンドの活動を始めたのは2000年ごろでしたが、当時、独立系の運用会社はほとんどありませんでした。日本の運用残高上位20社のうち独立系のシェアは今も2割に満たないという調査報告がありますが、もともとがゼロだったわけですから、2割はいい進歩です。これからは、運用スタイルのダイバーシティがより重要になってきますね。多様性が広がることは、業界全体としての成長につながると思います。

藤野:今、運用会社のスタートアップを増やしていこうという動きが出ていて、官民が連携して資金供給の円滑化を図るプログラムも実施されています。新興の運用業者が増えると、投資先の層も広がっていく。上場会社だけでなく、ベンチャー企業や企業再生案件なども応援されていけば、日本の産業強化につながります。投資家のお金も一方向だけに行かなくなって、一つひとつのファンド単位ではボラティリティがありつつも、業界全体で見ると平準化される良い流れができるはずです。

スノーディ:一方、個人投資家に目を向けてみると、専業もしくはセミプロのボラティリティ(変動率)に耐性がある投資家層と、NISA(少額投資非課税制度)を利用しているようなボラティリティに回避的な層のふたつがあって、ここに近年、金融に比較的詳しい新興富裕層が入ってきている印象です。

藤野:24年に新NISAが始まったタイミングで米国株に投資するインデックスファンドが非常に好調だったがゆえに、そこに日本の個人投資家の資金がかなり集中してしまったところがありますよね。この状況は、いずれ修正がかかっていくと見ています。

一方で、海外の年金基金などの機関投資家は、インデックスファンドだと市場平均のパフォーマンスで付加価値が出せませんから、基本的にアクティブファンドに投資しています。アクティブの大半は中長期的にインデックスに成績が劣るというデータもありますが、実はプロはうまく使っているのです。このことは、個人投資家の間で標準的な理解になったほうがよいですね。

ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
次ページ > マーケットの中長期的な展望は

文=眞鍋 武 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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2025.07.03 11:30

ウォーレン・バフェットが数千億ドルを稼いだ「紙一枚で説明する」投資法

Paul Morigi/Getty Images for FORTUNE

Paul Morigi/Getty Images for FORTUNE

ウォーレン・バフェットの投資手法がシンプルであることは有名だ。「オマハの賢人」と呼ばれる彼はかつて、生涯で20件の投資案件に絞る投資家は「より良い結果を得る」と話した。なぜなら、そうした人は「最良の機会に集中せざるを得ない」からだ。この哲学は、どんな投資家も紙1枚で投資判断を説明できるようにすべきだという彼の信念にも及んでいる。

バフェットが具体的な投資手法を公表したことはないが、数十年にわたる株主書簡や公的な発言から、彼が使用しているフレームワークは明らかになっている。バフェットが企業を評価する際に重視するのは、事業のファンダメンタルズ、経営の質、財務指標、バリュエーションの4つである。本稿では、ウォーレン・バフェットが紙一枚で投資判断を説明する際に書かれているであろうチェックポイントを紹介しよう。

ビジネスを理解できるか?

バフェットの最初のルールはシンプルだ。彼は、「理解できないビジネスには投資しない」彼の投資シートの一番上には、その会社が何をしているのか、どのように儲けているのかが、一文で明確に書かれていることだろう。バフェットは、投資対象を自分が分析しやすいビジネスに限定し、経営理念が曖昧な企業は避ける。

ここで考えるべき問いとは、以下のようなものである。このビジネスは予測可能な収益を上げているか? 競争上の優位性を簡単に説明できるか? この企業の「競争における堀(モート、優位性)」は長い年月に耐えられるか?

利益を上げているか?

バフェットは利益率の高い企業を高く評価し、EVA(経済的付加価値)、つまり資本コストを考慮した後の利益を重視する。バフェットの投資シートには、株主資本利益率(ROE)、負債水準、キャッシュ創出能力などを表す数字が含まれていることだろう。

彼が求めるのは、単に割安な企業ではなく、「適正な価格で買える、高い競争力を持つ優れた企業」である。そして、投資シートには、その企業が一貫した収益性を持ち、効率的な資本展開をしていることを示す数字がなければならない。

マネジメントはオーナーのように行動するか?

バフェットは、経営陣が歴史的に利益を会社に再投資してきたか、もしくは配当を通じて株主に資金を再配分してきたかを評価する。経営陣が株主価値の最大化に注力していることを示唆するため、彼は後者を支持する。

透明性は極めて重要だ。彼は、「どの企業にもミスはありますが、そのミスを公表している企業だけが株主の信頼に値します」と話す。バフェットの投資シートには、経営陣がミスを認め、投資家と誠実にコミュニケーションをとっているかどうかが書かれていることだろう。

次ページ > 誰でもそのフレームワークを適用できるバフェットの手法のすばらしさ

翻訳=江津拓哉

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