高級フレンチやソープ… 東大院教授の「接待漬け」から「破綻」まで
タイ・バンコクの夜を楽しんだその人物は翌日、こう口にしたと言われている。
「感動しました。素晴らしい体の女性で、楽しみました」
発言主は、皮膚科の権威として知られる教授。2024年3月のことだ。
「性接待」の感想は黙っているのが暗黙の了解。脇に控えた部下はそう考え、「余計なことを……」と思ったが、上役に向かって口にはしなかったという。
2年近くがたった1月24日、警視庁捜査2課は、東大大学院医学系研究科の教授、佐藤伸一容疑者(62)を収賄容疑で逮捕した。
タイに同行した部下の男性医師(46)も収賄容疑で、接待をしたとされる一般社団法人「日本化粧品協会」の男性代表理事(52)は贈賄容疑でそれぞれ任意の調べを受けている。
佐藤容疑者は、共同研究の相手だった代表理事から、ソープランドや高級クラブで何度も接待を受けていたとされる。
汚職事件へと発展した数々の接待とは、どんなものだったのか――。【長屋美乃里】
「23万4000円」の領収書
24年5月、東京・吉原。佐藤容疑者と部下だった男性医師の姿は、高級店として知られる1軒のソープランドにあった。
ウサギの耳のコスチュームを着けた女性がもてなすスタイルを掲げる店で、1人当たりの料金は7万~8万円に上る。引率した代表理事を含む3人は、この店で2時間余りを過ごし、帰路に着いたという。
料金は3人で23万4000円。2週間後にも同じ3人で再訪し、吉原の「常連」になっていく。
男性医師<佐藤先生をご自宅までお送りしました。○○さん(風俗店の女性の源氏名)に大興奮でした!!笑>
代表理事<良かったです!!お疲れ様でしたm(__)m>
そんなやりとりが、LINE(ライン)で交わされた。
後にこうした関係は決裂し、代表理事は、佐藤容疑者と男性医師に東大を加えた3者を相手に損害賠償請求訴訟を起こすことになる。
東京地裁に双方が提出した資料からは、一連の接待の様子が浮かび上がってくる。
高級フレンチから始まった日々
接待の始まりは23年2月にさかのぼる。
その頃、日本化粧品協会は東大との共同研究を見据え、話し合いが大詰めを迎えていた。
最初の会食は、東京・有楽町のビル地下にある高級フランス料理店で開かれた。
3人は個室に集い、研究の方向性や運営方法を話し合った。会計は15万6358円。代表理事が全額を担った。
「払うつもりだった」と思っていた佐藤容疑者らに対し、代表理事は「機嫌を損ねるのは良くないだろう」と考えたという。
翌3月、東大と協会の間で共同研究の枠組み「社会連携講座」の契約が無事に結ばれた。
以降、接待は高級レストランでの会食から、高級クラブでの会合、ソープランドでの遊興にエスカレートしていく。
ラインで「ほかにも良いクラブが…」
代表理事と男性医師の言い分によれば、接待の頻度は月2回程度だった。
銀座の和食店ですっぽんとフカヒレのコース(23年3月10日)▽西麻布のイタリアンレストラン(23年3月30日)▽「雌牛専門」をうたう銀座・並木通りの高級焼き肉店(24年7月)――。
食後に銀座のクラブに繰り出す夜もあった。1回当たりの金額は、高いときで70万円を超えたという。
連絡は、男性医師と代表理事が主にラインで取り合った。たとえば、23年3月にはこんなやり取りがあった。
男性医師<3/10の△△(和食店の名称)ですが、佐藤先生がスッポンとフカヒレのコースがいいなぁ、とおっしゃっていました。笑>
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