資産運用

2025.07.27 08:30

清原達郎、伝説のファンドマネージャーが教えるこれからの相場

清原達郎|投資家

日本の株式市場は今、とてもシンプルに語ることができます。リスク1で考慮しなければならないのが自社株買いを含めた「株主還元」だけだからです。これは需給面で株価に直接的な影響を与える要素で、アクティビストも注目する指標になるためです。地政学的リスクなど日本株には存在しないし、日本企業のガバナンスはこの数年で大転換してきました。それを評価して外国人投資家は日本株を買っているので、業績を評価して買っているとは思えない。私はこの点について楽観的です。自社株買いは高水準でもバランスシートに無理な負担をかけているわけではなく、継続可能なレベルで行われていますから。

また、アクティビスト・ファンドのパフォーマンスも良好で日本企業への積極的な取り組みも減らないことから、上場企業は株主への対応を迫られることになるでしょう。これは私のメインシナリオではないですが、万が一自社株買いが大きく減速すれば外国人投資家は日本株を売るでしょうね。日経225が1万円程度下がっても不思議ではないです。

繰り返しますが、ここで語っているのはリスク1だけ。リスク2や3のような予測不能な事象が現実に起きうる以上、高値圏にある日本株や米国株はリスクに対して脆弱です。今後も今年の4月や去年の8月のような暴落は十分ありえますが、日本株については今のような高水準の自社株買いが続いている限り、相場には復元力があり心配は無用。暴落したとき、株を売るのは最も愚かな行為となるでしょう。

より長期的なスパン、例えば今後5年間の予想では、私はさらに楽観的です。

というのも、今足元で持ち合い解消の売りが加速しているからです。特に生損保は急いでいるように見えます。生損保の解消売りはあと2年でほぼ終わり、メガバンクも4年でほぼ終わる。そのとき、自社株買いが今の水準で維持されていれば需給は好転します。「日本株ショーテッジ(株式の希少性向上)」の時代が到来し、次の上昇局面に入っていくことが想像できます。

──清原さんは「割安小型成長株」への集中投資という投資スタイルです。同類の戦略を立てるファンドも少なくないなか、なぜ清原さんのK1ファンドは突出した成績を収めることができたのでしょうか。

清原:私の運用方法でほかの投資家と大きく違う点は流動性リスクに対する考え方です。私が正しかったと主張するつもりはなく、運が良かっただけなのかもしれませんが。小型株はその流動性の低さのため、大量に買うと買値は上がり、売ると大きく下がります。発行済み株式数の3%以上を買うと機関投資家は大きいリスクをとっていると感じます。ファンドが解約されると売らなければいけなくなるからです。10%も買ってその会社が成長株でないことがわかって投げ売ったら大損害です。

しかし30%買ったらどうでしょう。買われた会社はとても不安になり、買われた株を買い戻そうとします。つまり保有株が増えれば増えるほど自社株買いの可能性が高まり、流動性リスクが減るということです。しかし企業に自社株買いが出来る十分な現金がなければこの戦略は通用しません。それが、私が企業の「ネットキャッシュ比率」を重視している理由です。

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文=下原一晃 イラスト=ベルンド・シーフェルデッカー

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2024.08.13 08:00

清原達郎に学ぶ「わが投資術」と「危機への対処」

清原達郎

清原達郎

どん底も絶頂も経験した投資家は、この先の日本経済をどのように見通しているのか。理論と直観を武器に闘い抜いてきた男が語る日本の美点と幸福について。


2005年に発表された「最後の長者番付」で、私は高額納税者トップとして名前が掲載されました。「タワー投資顧問運用部長・清原達郎」の2004年分の納税額は36億9238万円。3位にはユニクロの柳井正さん(10億8393万円)がおりましたね。投資会社でヘッジファンドを運用する一サラリーマンが日本一の長者として名前が上がったわけで、いろんなことが起きました。埼玉県の元モデルとかいう女性が「5000万円預けたい」といきなり私を訪ねて会社に来たこともありました。これぞ詐欺師という人にも会いましたねえ。

「伝説の投資家」などと呼ばれたり、今年出版した『わが投資術 市場は誰に微笑むか』が15万部を超えるベストセラーになったりと、まあ、こうした評価の元は20年前の「長者番付」にあるわけです。

直観とは経験値の積み重ねである

ただ、私は才能のある投資家ではありませんし、SNSをやりませんので、私を名乗るアカウントはすべて詐欺です。「他人からの情報をうのみにせず、自分で考えて判断する」という至極真っ当な行動原理に基づく投資をしているだけです。例えば私の投資方針は「割安小型株投資」ですが、その理由のひとつはIPO銘柄の財務諸表に「厚化粧」がされている可能性があるからです。

どんなに信頼性の高い情報であっても95%くらいに信じておくことが肝心です。なぜなら、時間の経過とともに新しい情報が入ってくるからです。人間は印象第一主義というか、初めに信じた情報を信じ続ける慣性が働いてしまうのですよ。事後的に修正できる余地を残しておいたほうが、判断の確度をあげることができるのです。

ただ、すべての判断が理詰めというわけでもありません。判断の因数の何割かは「直観」です。ただし、大きな判断を下すとき「どこまでが直観でどこからが理屈なのか」は正直わからないと思います。
 
コロナで株価が暴落した2020年3月、私は力いっぱいメガバンクの株を買いましたが、それが直観によるものかどうか判別できません。暴落した瞬間、私は「これは買いだ」と思いましたが、次の瞬間にはある程度の理屈は考えていましたから。アイデアが出てくる最初の瞬間が「直観」に近い概念かもしれません。ですから、あえて言葉にするとすれば、「直観とは経験値の積み重ね」にほかならないと思います。
 
投資において直観と理屈の境界線はあるようでないようなものかもしれません。思い出すのはリーマンショックで600億円の実現損失を出してしまったときのこと。ただでさえ致命的な打撃を受けていたところに、ゴールドマン・サックスから「マージンを変更したい」と。これは簡単に言えばロングポジションの100株に対して50のお金を借りられたのに、30に減らしてほしいと言われたようなものです。さらには私の運営するファンドから約半数の顧客が離れていってしまいました。ファンドのお金はどんどん少なくなり、最後には個人預金30億円を全部ファンドにぶちこみ、私の全財産がファンドに投入されました。
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取材=谷本有香 文=出野宏一 写真=野口 博

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資産運用

2025.07.25 08:30

「アンロック・ジャパン」の衝撃 これからの最良の資産運用術

イラストレーション=スプーキープーカ

イラストレーション=スプーキープーカ

2025年7月25日発売のForbes JAPAN9月号は、「次のバフェット・モデルを探せ」特集だ。一代で1,500億ドルの資産を積み上げたオマハの賢人ウォーレン・バフェット。「投資の神様」の引退表明というビッグニュースは、瞬く間に世界中に響きわたった。足元では、トランプ第二次政権の関税政策によって世界経済の不透明感が高まり、景気の先行きが読めない不安相場に。金融マーケットは大きな転換点を迎えた可能性がある。

投資家たちはこの変化にどう向き合っていくべきか。本特集の冒頭では、Forbes JAPAN創刊初期から連載を通じて金融業界の未来を指し示してきたレオス・キャピタルワークスの藤野英人と根津アジア・キャピタル・リミテッドのデービッド・スノーディ、創刊編集長で本誌ファウンダーの高野真が、業界とマーケットのこれからについて語り合った。キーワードは、「アンロック・ジャパン」だ。


高野 真(以下、高野私は本誌ファウンダーの立場ですが、フォーブス ジャパンを立ち上げる前は27年にわたり株式のリサーチや資産運用業務に従事してきました。皆さんも1990年代からこの業界に携わっていますよね。まずこの30年間の業界の歩みをどうとらえているか教えてもらえますか。

藤野英人(以下、藤野日本の資産運用業界は劇的に良くなってきたと思います。運用会社の商品は多様化してきましたし、投資家の質も上がってきています。今、日本にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)と聞いてすぐにピンとくる人が少なくとも2,000万人はいるでしょう。

デービッド・スノーディ(以下、スノーディ私が日本でヘッジファンドの活動を始めたのは2000年ごろでしたが、当時、独立系の運用会社はほとんどありませんでした。日本の運用残高上位20社のうち独立系のシェアは今も2割に満たないという調査報告がありますが、もともとがゼロだったわけですから、2割はいい進歩です。これからは、運用スタイルのダイバーシティがより重要になってきますね。多様性が広がることは、業界全体としての成長につながると思います。

藤野:今、運用会社のスタートアップを増やしていこうという動きが出ていて、官民が連携して資金供給の円滑化を図るプログラムも実施されています。新興の運用業者が増えると、投資先の層も広がっていく。上場会社だけでなく、ベンチャー企業や企業再生案件なども応援されていけば、日本の産業強化につながります。投資家のお金も一方向だけに行かなくなって、一つひとつのファンド単位ではボラティリティがありつつも、業界全体で見ると平準化される良い流れができるはずです。

スノーディ:一方、個人投資家に目を向けてみると、専業もしくはセミプロのボラティリティ(変動率)に耐性がある投資家層と、NISA(少額投資非課税制度)を利用しているようなボラティリティに回避的な層のふたつがあって、ここに近年、金融に比較的詳しい新興富裕層が入ってきている印象です。

藤野:24年に新NISAが始まったタイミングで米国株に投資するインデックスファンドが非常に好調だったがゆえに、そこに日本の個人投資家の資金がかなり集中してしまったところがありますよね。この状況は、いずれ修正がかかっていくと見ています。

一方で、海外の年金基金などの機関投資家は、インデックスファンドだと市場平均のパフォーマンスで付加価値が出せませんから、基本的にアクティブファンドに投資しています。アクティブの大半は中長期的にインデックスに成績が劣るというデータもありますが、実はプロはうまく使っているのです。このことは、個人投資家の間で標準的な理解になったほうがよいですね。

ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。現・野村アセットマネジメント、JP モルガン・アセット・マネジメント、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアをもつ。
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文=眞鍋 武 イラストレーション=ベルンド・シーフェルデッカー

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