アジア

2026.01.25 09:00

日本国債の「メルトダウン」はトランプ政権への警鐘

スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で話すスコット・ベッセント米財務長官。2026年1月20日撮影(Harun Ozalp/Anadolu via Getty Images)

スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で話すスコット・ベッセント米財務長官。2026年1月20日撮影(Harun Ozalp/Anadolu via Getty Images)

日本国債を空売りする取引はかねて「ウィドウメーカー(未亡人製造機)」と呼ばれてきた。過去15年、多くの投資家がそれに挑んできたが、成功した者はいたとしてもごく少数だった。

しかしこの1週間は、日本国債の下落に賭ける投資家が長年待ち焦がれてきた瞬間だったのかもしれない。19日以降、多くの年限の日本国債の利回りが1999年以来の高水準に急騰し、40年債では初めて4%台に達した

理由は、高市早苗首相が財政の蛇口を開き、円安をさらに進めるような計画を打ち出したことだ。さらに高市が衆議院の解散と2月8日の総選挙実施を発表したことで、市場は一段と動揺した。トレーダーたちは、すでに国内総生産(GDP)比で260%という持続不可能な水準にある日本の公的債務をさらに増やすことについて、高市が国民から信任を得ようとしていることを知っている。

これは嫌というほど見慣れた行動だ。1990年代半ば以降、日本の歴代政権は野放図に債務を積み上げ、各首相は日本銀行に利下げを促した。1999年、日本は主要7カ国(G7)で初めて政策金利をゼロまで引き下げた。2年後、日銀は世界に先駆けて量的緩和を導入した。

日本の金利はいまも0.75%にとどまっている。

この1週間にあった東京債券市場の劇的な動きを受けて、投資家たちはアジア2位の経済大国が財政のコントロールを失いつつあるのではないかと案じている。他方で、日本の混乱がたちまち米国債市場に波及したことは示唆的だった。この連動性をドナルド・トランプ米政権の財務省はどのくらい深刻に受け止めているのだろうか。

米ヘッジファンド大手シタデルのケン・グリフィン最高経営責任者(CEO)は、日本国債につられて米国債も売られたことはホワイトハウスがおそらく考えている以上に深刻だと懸念しており、米国の政治家たちへの「明確な警告」だと指摘している。グリフィンはブルームバーグ・テレビジョンのインタビューでこう語った。「債券自警団が動き出し、応分の代価を引き出す可能性があります。日本で起こったことは下院と上院への非常に重要なメッセージです。財政を健全化しなければならない、というものです」

次ページ > 著名投資家のレイ・ダリオもドル資産の先行きを危惧

翻訳・編集=江戸伸禎

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国内

2026.01.21 10:00

「日本の国債危機」を世界の投資家が警戒、40年債利回りが初の4%超え

Rodrigo Reyes Marin/Pool/Anadolu via Getty Images

Rodrigo Reyes Marin/Pool/Anadolu via Getty Images

長期的な安定性に対する疑念が数週間にわたり蓄積していた7兆6000億ドル(約1200兆円)規模の日本国債市場は、米国時間1月20日、予想外の大規模な売りに見舞われた。日本のインフレが債券利回りを押し下げかねないとの懸念が強まっている。

数十年続いた「ほぼゼロインフレ」の時代を経て、日本はいま、顕著なインフレ圧力に直面している。表面利率の低い長期国債は魅力を失い、投資家は割安での売却を迫られ、その結果として国債利回りが上昇(価格は下落)している。

長期金利の指標となる国債利回りが上昇すると、借り入れコストは高くなる。住宅ローン金利や企業向け融資の金利、さらには株式や不動産の評価に用いられる割引率が押し上げられ、市場に対する信認の低下を示すシグナルとなる。

この日、30年物および40年物の日本国債の利回りは25ベーシスポイントを超えて上昇し、ドナルド・トランプ大統領の「解放の日(リベレーション・デー)」関税が世界市場を揺るがした2025年以来、最大の上昇幅を記録した。

日本の40年物国債利回りは、2007年の導入以来、初めて4%を上回った。

これに先立つ20日早朝には、20年物国債の入札で十分な需要が集まらず、信認不足を露呈する警告サインとなった。

今回の日本市場の混乱は、日本銀行とその金利統制能力への信頼によって支えられてきた、数十年におよぶ安定感が急激に揺らいでいることを示している。

政府系データ集約機関のトレーディング・エコノミクスによると、日本の年間インフレ率は現在約3%であり、日本銀行が掲げる目標の2%を長年にわたり一貫して上回ってきた。背景には、輸入コストとエネルギー価格の上昇があり、円安によって輸入品価格が押し上げられていることに加え、食品や公共料金の値上がりも影響している。

日本の国債市場の混乱は、米国を含む多額の債務を抱える他国にとっての警告でもある。日本国債の利回り上昇は、投資家が米国債の購入を敬遠する要因にもなり、米国の金利を押し上げる可能性があるからだ。アナリストは、日本国債の売りが足元で米国債利回りの上昇につながっていると指摘しており、主要な債務市場の1つに生じたストレスが世界的な借り入れコストを押し上げ得ることを示している。

世界的なマクロ経済データベースであるCEICによると、2025年後半時点の日本の政府債務(対GDP比)は約203%である。これに対し、世界銀行による米国の同指標は118.1%となっている。

片山さつき財務相は、20日に開催されたダボス会議の場で、ブルームバーグに対し、「市場の皆さんには落ち着いてほしい」と語った。

日本の国債利回りは、高市早苗首相が11月に約21兆3000億円の経済対策を発表して以降、上昇を続けている。19日、高市首相は食品にかかる8%の消費税を2年間停止する計画を改めて表明し、「大きな政策転換」と位置付ける施策について国民の信任を得るため、2月8日に選挙を実施すべく衆議院を解散すると述べた。

利回りが上昇する中、高市首相は支出拡大と減税の計画が日本の財政を損なわないと、有権者と金融市場の双方を安心させようとしている。19日には、2025年に200%を超え、世界でも有数の債務大国となった日本の政府債務残高(対GDP比)を引き下げると公約した。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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北米

2026.01.24 12:00

世界的な「資本戦争」が起こる可能性、ヘッジファンド界の巨人レイ・ダリオが警鐘

Amal Alhasan/Getty Images for Fortune Media

Amal Alhasan/Getty Images for Fortune Media

ドナルド・トランプ大統領によって引き起こされた新たな貿易摩擦を受け、債券利回りが上昇している。ある伝説的な投資家は、次なるリスクは「資本戦争(Capital War)」、すなわち資金そのものが武器化される事態だと語る。

米国時間1月20日、債券市場は反発した。

この日、10年物米国債の利回りは前日比0.06%高い4.29%に上昇し、今よりも短期金利が75ベーシスポイント高かった2025年9月以来の高水準となった。これは異例のことだ。すなわち、米連邦準備制度理事会(FRB)が逆方向に動いているにもかかわらず、世界の投資家が長期の米国政府債を売却し、より高い利回りを要求していることを意味する。

こうした動きは、トランプが関税の脅しを再び持ち出したことを受けたものだ。2025年のノーベル平和賞を受賞できなかったことにいまだ不満を抱くトランプは17日、米国によるグリーンランドの購入を支持しない限り、8つの北大西洋条約機構(NATO)加盟国からの輸入品に対し、2月1日から10%の関税を課し、6月1日までに25%へ引き上げると述べた。その後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がトランプにより新設された「平和評議会」への参加を拒否したことを受け、フランス産のワインとシャンパンに200%の関税を課すと脅した。トランプ自身が生み出した不確実性に投資家が動揺し、米国債を保有するためにより高い利回りを求めた形だ。

こうした状況の中、伝説的投資家のレイ・ダリオは、世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議の場で、以前からの警告を発した。推定資産154億ドル(約2兆4300億円)とされるダリオは、運用資産が900億ドル(約14兆2300億円)を超える世界最大級かつ最も成功したヘッジファンドの1つ、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者である。

「貿易赤字や貿易戦争の裏側には、資本と資本戦争がある」とダリオはダボスからCNBCに語った。「対立を考えるなら、資本戦争の可能性を無視することはできない。言い換えれば、米国債を買おうとする意欲が以前と同じではなくなるかもしれないということだ」

次ページ > ダリオは、以前から資本戦争について語ってきた

翻訳=江津拓哉

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マーケット

2026.01.23 12:00

日本市場の混乱でウォーレン・バフェットが「思わぬ勝者」となった理由

Daniel Zuchnik/WireImage

Daniel Zuchnik/WireImage

バークシャー・ハサウェイは、日本の商社株に大きな持ち分を築いてきた。これらの株式は、日本国債の売りとインフレ圧力の高まりを背景に、足元で非常に強い動きを見せている。

日本は現在、経済的なハリケーンにさらされている。日本国債は歴史的な売りに見舞われ、円は急落している。高市早苗首相による財政刺激策や減税案を巡り、投資家が動揺しているためだ。米国記事執筆現在、40年物日本国債の利回りは直近10日間で4%を超え、超長期の日本国債としては過去30年間見られなかった水準に達した。日本の政策当局にとって、危機が醸成されつつある状況である。

しかし、バークシャー・ハサウェイにとって、この混乱はむしろ追い風となっている。ネブラスカ州オマハに本拠を置く同社は、日本の5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、丸紅、住友商事)、いわゆる「総合商社」に大きな株式持ち分を保有している。長年のデフレを経て、日本銀行がインフレ抑制のために利上げを進める中、これらを含む日本企業の株価は急騰している。過去3カ月で丸紅は30%超上昇し、住友商事は40%超の上昇となった。直近1週間の変動の中でも、5銘柄すべてが3%から11%の上昇を記録している。日経平均株価は直近5営業日で約3%下落したものの、過去6カ月では33%上昇しており、S&P500種株価指数が記録した8%のリターンを大きく上回っている。

バークシャーは2019年7月、5社すべてに対して各5%の持ち分を取得するため、合計65億ドル(約1兆270億円)を投じて初めて投資を行った。2023年から2025年にかけて、さらに73億ドル(1兆1530億円)を追加投資し、持ち分を拡大した。総額138億ドル(2兆1800億円)に上るこの現金での投資は、現在では約380億ドル(約6兆40億円)の価値となっており、240億ドル(約3兆7920億円)の含み益を生んでいる。

総合商社は配当面でも優良な存在だ。バークシャーは2025年の株主への手紙で、2025年には日本への投資から8億1200万ドル(約1280億円)の配当収入を得る見込みだと述べている。この配当利回りは、投資資金を調達するために発行した円建て債務の利息コスト(2025年は1億3500万ドル、約213億円)を十分に上回る。これらの投資は、バフェットの巧みな投資手法を象徴している。すなわち、年率1%未満のコストで円建ての資金を借り入れ、一方で商社は年率約4%の配当を支払っていたのである。

次ページ > バフェットの純資産は約23兆円に到達

翻訳=江津拓哉

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