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「テレビ番組は放送枠を埋めるためにある」漫画原作改変問題に思う(8)

■ドラマを作るのは視聴率を取るため
 日本でテレビドラマを作るのは「視聴率を取るため」。
 この一択だ。
 ぜひテレビドラマ化したい漫画があるから、できるだけ忠実に実写化したい――そう考えて作られているのではないのである。
 そのカラクリを書いていきたい。

■放送枠を埋めなければならない
 まず放送枠というものがある。
 月曜の夜9時からとか、金曜の夜10時からとか。
 そしてその放送枠には、何らかの番組を作って入れ込まなければければならない。
 空けておくことは許されない。
「今シーズンだけは、この放送枠は番組無しで」
というのは許されない。
 とにかく何か番組作ってその枠を埋めなければならないのである。

■まず俳優ありき。作品が決まる前に出演俳優は決まっている
 売れている俳優を「じゃ、来週から出演お願いします」といきなり要請することなどできない。
 なので、何年も前から俳優のスケジュールをおさえておく必要がある。
「このシーズンの、この曜日の、この時間帯にドラマを作りますから、出てください」
というように。
 どんなドラマが作られるかまだ分からない内から、出演俳優だけは決まっているのである。

■視聴率を取れるドラマを作らなければならない
 さて、では、どんなドラマを作るか。
 もちろん視聴率の取れるドラマを作らなければならない。
 それで、いちばん手っ取り早いのが「ある程度売れている漫画を持ってくる」というやつだ。
「この漫画、そこそこ評判いいらしいですよ」
「なに? よし、じゃ、その漫画を原作ということにしてドラマ作るぞ!」
 こんな感じで、1つの漫画作品に白羽の矢が立つのである。
 そして、漫画原作者の許諾を得る前からもう準備を始める。
 漫画家の説得は出版社が後からどうにか行ってくれるからだ。
 「セクシー田中さん」でも、主演の木南晴夏氏は、作者の芦原妃名子さんの許諾が得られる前からもうベリーダンスの練習に入っていたという。

■テレビマンたちには漫画は視聴率を稼ぐための材料の1つにすぎない
 これでお解りだろう。
 テレビマンたちは、誰も「その漫画が大好きで、ぜひその漫画を実写化したいから」漫画を原作に持ってくるのではない。
 放送枠を埋めるために、主演俳優を活躍させるために、視聴率を稼ぐために、ある程度売れている漫画を、何でもいいから原作に持ってくるのである。
 ある程度売れている漫画なら知名度も高いので、まず、その漫画ファンからの視聴を見込める。
 テレビ局がゼロから作ってゼロから宣伝しなければならないオリジナルドラマに比べると、はるかに有利なスタートを切れるのである。
 だから漫画を原作に持ってくる。
 早い話、ある程度知名度のある漫画なら何でもいいのである。
 その漫画作品や漫画家に対するリスペクトも何もあったものではない。

■漫画の題名さえゲットすれば後は自由自在に改変し放題
 漫画の題名さえ使わせてもらえることになれば、あとはやり放題だ。
 おさえている出演俳優たちのイメージや性別に合わせて、漫画のキャラクターはどんどん改変される。
 名前や性格、年齢変更は序の口。
 性別すら変えられる。
 俳優をキャラに寄せるのではない。
 キャラを俳優に寄せるのだ。
 また、テレビ向けではないとなれば、漫画作品の中にあったエロ、グロ、その他放送向けでないとされる描写は軒並みカットされる。
 さらに、一般受けする3つの要素「恋愛」「敵対」「謎解き」を付け加える。
 1シーズンの放送は10話前後だ。
 その10話前後に収まるように、内容も改変。
 カット、ストーリーの変更、オリジナル要素の追加が行われる。
 以上を全部やらなければならないので、脚本家もプロデューサーも原作者にあれこれ言われるのはたまらない。
「漫画の題名だけ使わせろ」
「後は黙ってろ」
となる。

■テレビ局の完全オリジナルドラマをヒットさせるのは難しい
 テレビ局がゼロから全くオリジナルのドラマを作ってもヒットさせるのは極めて難しい。
 実は漫画だってそうだ。
 漫画雑誌には、たくさんの漫画が連載開始されては打ち切られ消えていく。
 ただ、テレビドラマでそれをやるわけにはいかない。
 テレビドラマはものすごい数の人間が動く。
 制作費用もものすごい額がかかる。
 それが、大コケしたら大損失だ。

■ある程度の人気がある漫画の題名を使うことはテレビマンたちの安心材料
 ところが、現在、ある程度の人気がある漫画はどうだろう。
 今、人気がある漫画というのは、打ち切りを切り抜け、ファンからの人気を獲得し、一定期間継続しているという実績がある作品なのである。
 安心なのである。
 そもそも、ゼロから宣伝しなければならないテレビ局オリジナルドラマに比べて、既に世の中に知られている分、宣伝するのも楽なのである。
 だから、テレビマンたちは、漫画原作を持ってくる。
 漫画作品にリスペクトがあるからではない。
 放送枠を埋めるため、俳優たちを使うため、大コケしないために、今日もさまざまな漫画作品を、ドラマ原作にできやしないかと物色し続けているのだ。

■「連載を切る」と言われかねない漫画家の立場は弱い
 テレビ局は手頃な漫画を見つけると出版社にドラマ化を打診する。
 出版社は漫画家にそれをもっていく。
 漫画家によっては、ドラマ化を嫌がる人もいる。
 理由はさまざまだ。
 まだ未完結であること。
 漫画原作が原型をとどめないまでに改変されてテレビドラマ化された例をたくさん見てきたこと。
 そもそも実写化自体したくない人。
 そうすると出版社は漫画家に圧力をかける。
 最大の圧力は「連載を切る」だ。
 「連載を切る」と言われてしまったら漫画家は弱い。
 生活がかかっているのだ。

■以上の理由を考えれば漫画原作通りのテレビドラマが作られる方が奇跡
 漫画は漫画、ドラマはドラマと、完全に別物として割り切れる漫画家もいる。
「原作は好きなように変えていただいて結構です」
 こう言われると、テレビ関係者はありがたい。
 好き放題やる。
 だが、そんな好き放題やったテレビドラマはたいてい不評だ。
 誰より何よりその原作漫画のファンから大不評を喰らう。
 好き放題やって誰得なのか全く意味不明である。
「できるだけ原作通りにやってください」
 そういう漫画家もいる。
 そういう漫画家は出版社やテレビ局にとっては面倒な存在だ。
 だから、適当にごまかそうとする。
「先生のおっしゃることは、テレビ局側にはちゃんと伝えていますよ」
 そのように漫画家には言う。
 だが、出版社やテレビ局は、
「テレビドラマと漫画では表現手法が違うから」
「出演俳優のイメージに合わないから」
「エロ、グロ、その他はカットしないといけないから」
「恋、敵、謎を入れないといけないから」
などの理由で、ドラマをどんどん漫画原作と違うものにしてしまう。
 原作はそうじゃないのに、恋愛ヤッホーになったり、ライバルが登場したり、推理物に変化したりする。

■漫画家が必死に戦って、何とか原作に近い形に戻した「セクシー田中さん」
 漫画家がかなり、テレビ局側に干渉し、必死に漫画原作に近い物に戻そうと戦っていたのが、今回の「セクシー田中さん」事件だ。
 日本テレビも小学館も
「最終的には原作者の意向に沿ったドラマを作った」
という声明を出しているが、これは、原作者の芦原妃名子氏が必死に戦ったからであって、芦原氏が動かなければ改変されまくったテレビドラマ「セクシー田中さん」が放映されていたことだろう。
 あの声明は、テレビ局も出版社も、
「自分たちのほうから積極的に漫画原作通りのドラマを作ろうとしていたし、最終的にはそうなりましたよ」
とまるで威張って言っているように私には聞こえるのだが、芦原妃名子氏がさんざん動きに動いていたから、原作に近いテレビドラマになっていたのである。

■漫画原作者が守られる制度の整備が急務
 何か大きな事件が起きないと物事は変わらないという悲しい現実がある。
 今回の悲劇は、
「テレビ局の放送枠を埋めなければならない」
という、一方的なテレビ局側の都合により起きてしまった。
 漫画原作、漫画家が守られるシステムの構築が一刻も早く必要である。

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「テレビ番組は放送枠を埋めるためにある」漫画原作改変問題に思う(8)|「役職定年校長の第二の教員人生」written by 来譜 瀬感度(らいふ せかんど)
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