サラダをパリッとおいしくさせる 料理を科学する
生活上手
サラダと一口に言っても、生野菜を使ったフレッシュなものから温野菜、肉や魚などを合わせたボリュームたっぷりのものまで様々。ここでは生野菜のサラダを中心に考えてみよう。
生野菜を味わう料理でカギとなるのが「浸透圧」だ。味が染み込む力だと誤解されることが多いが、水分が出たり入ったりする力のことだ。
植物はたくさんの細胞が集まってできている。細胞の大部分は水でできていて、細胞膜という膜で包まれている。そしてその細胞一つ一つの周りを細胞壁という硬い壁が囲んでいる。小さな水風船(細胞)が、箱(細胞壁)の中にぴっちりと収められ、その箱同士が接着されて積み上げられ、植物の体になる。
水分が細胞膜を行き来
細胞壁は様々な成分が行き来できる。一方、細胞膜は水分を通すが、塩や砂糖などの分子は通さない「半透性」という性質がある。膜の両側で塩や砂糖など溶けているものの濃度に差があると、薄い方から濃い方へ水分が移動しようとする力が働く。これが「浸透圧」だ。
この力により、膜の両側の濃度が均一になるよう水分が移動する。野菜の細胞内の浸透圧は約0.85%の塩水と釣り合う。それよりも薄い塩水や真水につけると、細胞の外から中へと水分が入り込む。細胞が膨らみ、細胞壁を内側から押すため野菜はシャキッとハリのある状態になる。かむとパリッと歯切れが良い。
逆に0.85%より濃い塩水につけると、細胞の中から外へと水分が出ていく。細胞がしおれてハリがなくなるので、しんなりやわらかくなる。
このことを念頭に野菜に水分を入れたり出したりすると、好みの食感に仕上げることができる。
レタスは5分ほど冷水に浸す
例えばレタスや水菜などの葉野菜を組み合わせたグリーンサラダを作る場合、みずみずしくパリッとした食感にしたい。洗った野菜を5分ほど冷水に浸し、細胞内にしっかりと水分を入れてから切る、ちぎるなどの調理をしてみよう。食感がよくなるはずだ。野菜の表面に水分が残っていると水っぽくなるので、キッチンタオルで拭き取るか、回転させて水を切るサラダスピナーを使うとよい。
キャベツや大根などの千切りは断面が多く、その分水分が蒸発しやすい。切った後で水にさらし、しっかりと水分を含ませる。
ドレッシングをかけるタイミングも重要だ。ドレッシングには塩分や様々な成分が溶けており、浸透圧が高い。水に浸してシャキッとさせた野菜もドレッシングをかけてしばらく置くと、水分が出てしんなりしてしまう。
ただドレッシングに含まれる油には、野菜の細胞と塩分とが接触するのをある程度防ぎ、水分が出るのを遅らせる効果もある。ノンオイルドレッシングは油を使ったものより野菜がしおれるのが早い。
ドレッシングには酢やレモン汁など酸性の調味料が含まれていることが多い。野菜の緑色色素クロロフィルは酸に弱い。緑色の野菜を酸性の調味料にしばらく浸すと、クロロフィルが黄褐色のフェオフィチンに変化し、色が悪くなってしまう。ドレッシングは食べる直前にかけたい。
コールスローやキャロットラペ、塩を振って水分出す
野菜から水分を引き出し、あえてしんなりとさせて食べることもある。コールスローサラダやキャロットラペが代表的だ。切った野菜に塩を振って置いておくと、野菜の表面についた水分に塩が溶けて濃い塩水ができ、野菜の中から外へと水分が出ていく。
野菜の約9割の成分は水分なので、水分を引き出すとカサが減り、たくさんの量を食べることができる。また細胞と細胞壁の間に隙間ができるため、ここに調味料などが入り込む余地ができ、味がなじみやすい。
塩もみをする際は塩の量が多いほど水が出やすくなるが、塩辛くなるので野菜の量の1〜2%を目安にするとよい。塩を振ると最初の5分で一気に水分が出て、15分ほどすると落ち着いてくる。手早く仕上げたいときは5分、しっかり水分を出したいときは15分置いておこう。
温野菜もドレッシングは直前に
秋から冬にかけては、ゴボウやサツマイモ、カブなどの根菜が旬を迎える。ゆでたり蒸したり、場合によっては焼いたりして、温野菜のサラダがおいしい季節がやってくる。
加熱済みの野菜では、細胞膜は半透性を失っているので浸透圧について考える必要はない。塩などの調味料をかけても水分は染み出してこない。
加熱した野菜は、塩分も糖分も細胞膜をこえて中に染み込んでいく。したがって、ドレッシングをかけて時間が経つと、塩分や糖分だけが中に染み込んで表面に油が残り、ドレッシングの味がバラバラになってしまう。マヨネーズのように酢と油を乳化させたタイプのドレッシングは、分離しにくいので温野菜によく合う。
マヨネーズをかける場合は野菜がある程度冷めてからかけるようにしよう。マヨネーズは熱に弱く、熱々の食材にかけるとすぐに分離してしまう。
(科学する料理研究家 平松 サリー)