重音テトとは何なのか?
簡単に言うと、生まれた経緯が特殊な合成音声ソフト(広く言うとボーカロイド)です。
映像内の右側、初音ミクと肩を並べてステージに登場し大歓声を浴びる重音テト。
この存在がどうやって生まれたかを記します。
1.生まれた経緯
2008年3月30日、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のニュー速VIPにスレッドが立てられました。
ここでいう>>10とは、10番目に書き込まれた内容に決定するという意味です。
このルールを守らずやり直したりするのは基本認められません。クソスレ立てんなバカという書き込みだけ残して人々は去っていくでしょう。
このように、どんどん設定が決まっていきます。
ところで、ここはインターネットのスラム街こと2ちゃんねる。
顔も名前も知らない暇人の立てたスレッドで真面目に書き込む必要なんてどこにもありません。
こうして、架空のボーカロイドの設定が出揃いました。
テトペッテンソンってなに?重音テトじゃないの?という疑問について答えます。
スレが進むうちに、この企画の現実味も増してきました。
そうすると「テトペッテンソンって名前はさすがに嘘っぽくね?」という意見がポツポツ出てきます。
さっき「決定した内容をひっくり返すのはダメ!」なんて言いましたが、そのルールもノリと民意で変わる、良くも悪くも勢いが全てなのがインターネットなのです。
というわけで『テトペッテンソン』から『重音テト』に改名となります。
それっぽくなりましたね。
残る問題はボーカロイドとして重要なポイントである『声』です。
大山のぶ代といえば、1979年~2005年までの26年間ドラえもんの声を演じていたベテラン声優。
ダンガンロンパのモノクマとして知っている人もいるかもしれません。
初音ミクも声優:藤田咲の声を使用していますが、ドラえもんやモノクマとは明らかに方向性が違います。
ニコニコ動画の連中にもさすがに怪しまれそうです。こちらもテコ入れしなければ。
『大山のぶ代』から『小山乃舞世』となり、こちらも問題解消。
準備を進めていきましょう。
どこからともなく現れた絵描きやデザイナーの協力により、それっぽいサイトも出来上がります。
2008年4月1日のエイプリルフール当日、ついに計画が実行されます。
ニコニコ動画に突然投稿された新しいボーカロイドの歌声お披露目。
記念すべき一曲目は初音ミクの『みくみくにしてあげる♪』の替え歌、『テトテトにしてあげる♪』です。
まだボーカロイドになっていないのにどうやってこの曲を用意したのか?
この動画では、人間が実際に歌った声を加工してボーカロイドっぽくしています。
初音ミクの仲間だと嘘をつくため、結果的に初音ミクと逆のアプローチをすることになったのは因果を感じますね。
歌っているのは偶然このスレを見ていた中学生。
休み期間の暇つぶしで参加したこの祭りがきっかけとなり、その後『小山乃舞世』として現在まで重音テトに関わり続けることとなります。
投稿後、動画に書かれたネタバレコメントを必死で対策したり、当時人気のブログも架空のボーカロイドを作るというネタ被りがあったり、ちょっとグダグダになりはじめたり。
紆余曲折がありながらも色々な人にこの嘘が届き始めます。
結果、騙された人々もそのクオリティの高さと団結力を称賛し、エイプリルフールになんか面白いことやってらwwwと『重音テト祭り』は確かな盛り上がりをみせて終了したのでした。
エイプリルフールから数日後、祭りを駆け抜けたスレ住民たちの中で、ここまで作り上げた『重音テト』をこのまま捨てるのはもったいなくね?という空気が流れます。
その結果、愛着を持った人々はスレに残って小山乃舞世の声を改めて録音。UTAUというソフトで実際に歌うことができるようにしました。
重音テトが声を手に入れて、『ボーカロイド』になった瞬間です。
人々は作品を作り、嘘を本当に変えていったのでした。
2009年には関係者でオフィシャルサークル『ツインドリル』が結成され、広報や権利の管理を務めます。
歌った楽曲が人気になったことやツインドリルの活動の甲斐あって重音テトはその存在感をより高めていきます。
そして、あのエイプリルフールから15年後、株式会社AHSより重音テトSVが発売。
新規録音した小山乃舞世の声を使用し、AIを用いて自然な歌声と感情表現が可能に、さらに5カ国語(!)で歌えるようになりました。
重音テトSVはそのクオリティと知名度から、多くのボカロPに使われることとなります。
歌った楽曲には大ヒットも生まれ、かつて1つのスレから始まった重音テトは文字通り初音ミクの隣で大歓声に包まれながらその歌声を披露する存在になったのでした。
以上、重音テトが生まれた経緯でした。
ここから先は自分語りです。
なぜ自分が重音テトに歌わせるか。という話を少しします。
2.なぜ重音テトに歌わせるのか?
ヒップホップには『いかにハードな過去を持っているか』という特殊な加点ポイントがあります。
刑務所に入った経験のあるラッパーの言葉は『リアル』なため素晴らしい。という価値観が良くも悪くも存在しているのです。
ジョアン・ミロの絵画には『誰でも描けそう』な作品が多くあります。
しかし、これがジョアン・ミロの作品であること、当時の歴史的背景を含めて価値が認められたことから市場に出ればとんでもない値段が付きます。
じゃあ重音テトは?
重音テトが持つ過去や背景はこれまで述べた通りです。
多くの社員を抱える企業の素晴らしいクリエイター達が生み出した初音ミクに対し、悪ふざけのルーレットで生まれたエイプリルフールの遊び道具である重音テト。
当時そんな意図はなかったとしても、結果的にボーカロイドという文化に対して反骨心とDIY精神のカウンターパンチをお見舞いしたこの存在は、まさしく『唯一無二』です。
重音テトSVが発表されて歌声を聞いた時、あまりに人間すぎてビックリした記憶があります。
それと同時に、重音テトの存在は知っていたのにいつの間にかすっかり忘れていたことにも気付きました。
始まりから15年以上が経過した今、かつてスレに参加したり騙されたりした人たちは今何をしているのでしょうか。
ニコニコ動画のユーザー数は減っていき、面白い議論や顔真っ赤にしてレスバできる場所は2ちゃんねる以外にもいっぱいあります。
悪ノリや暇つぶしで始まり、その存在すらも忘れられていくことについて重音テトならなんて言うんだろう。と考えたら歌詞が思い浮かび始めました。
歩んできた歴史が全てではありませんが、少なくとも重音テトじゃないと書けない楽曲というものは確かに存在します。
これが重音テトに歌わせたいと思った理由です。
終わり。


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