「GR86は“現代のシルビア”になれるのか?」ドリフト全盛時代を生きた達人、その答え
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切れ角アップと足まわりの最小限の手入れだけで、競技ドリフトを本気で戦える。そんな懐の深さを持つのがGR86だ。S14シルビアから86、そしてGR86へと乗り継いできた林和樹さんのマシンは、JDCで結果を残しつつ街乗りもこなす好例。その“箱の良さ”を紐解いていく。 【画像】「GR86は“現代のシルビア”になれるのか?」ドリフト全盛時代を生きた達人、その答え
シルビアから86、そしてGR86へ
切れ角アップナックル投入だけで競技ドリフトを戦えるポテンシャル! 林和樹さんといえば、国内最高峰のドリフト競技「D1GP」の下位カテゴリーであるD1ライツ、そして前身となるD1ストリートリーガルにおいて、長年S14シルビアで参戦し続けてきた実力者だ。チャンピオン争いにも名を連ねてきた、その腕前は折り紙付きである。 そんな林さんが初めて86に触れたのは、ドルーピーからD1グランプリシリーズに参戦していた頃。コスワース製ピストンで2.5L化した本気仕様の86を約3年間ドライブし、筑波戦では4位入賞という結果も残している。 この経験をきっかけに、プライベートでも86を購入しドリフトを楽しんでいたが、ドルーピーを離れ、D1GPからも一区切りを迎えたタイミングで、再びシルビアへと回帰する。 しかし現実はシビアだった。 「ターボでパワーもあって楽しいんですけど、やっぱりシルビアはお金が掛かるなって」。 そう語る林さんが、再び選んだのがZN6型86。車高調入りの車両を約100万円で購入したのが、今から3年前のことだ。 ZN6でドリフトを続ける中、86/BRZでリヤタイヤ215サイズに制限されたワンメイクシリーズ、JDC(ジャパンドリフトチャンピオンズ)にも参戦。昨年まではZN6で戦っていたが、後輩がZN8を購入したことをきっかけに試乗した瞬間、考えが変わったという。 「乗った瞬間に“あ、これ欲しい”って思いました。排気量400ccの差はやっぱり大きい。ZN8のほうがパワーもあるし、勝てるクルマだなって」。 そうして現在はZN8型GR86へとスイッチ。2025年シーズンのJDCでは、第1戦YZで2位、第2戦備北で優勝と、早くも結果を残している。 注目すべきは、その仕様だ。足まわりは、まさかのエアサス。切れ角アップナックルにワッシャー、各種アーム類を組み合わせたライトチューンながら、競技でしっかり勝てる戦闘力を備えている。 「街乗りできて、ドリフトでも十分遊べる。GR86ってそういうクルマなんですよ。シルビアで街乗りも……となると、まず“キレイにするところ”から始めないといけないですから(笑) 今どっちに乗る?って聞かれたら、間違いなくGR86ですね」。 エアサスはボルドワールドのアルティマイグジスト。「Kプロデュース ドリフトバージョン」として、ドリフト向けに最適化されたセットアップが施されている。スプリングレート換算でフロント約10kg/mm、リヤ約8kg/mm相当。サーキット走行時の車高で最適化されており、街乗りで車高を上げるとやや張り感が出るという。 ステアリング周りには、カザマオートの30mm延長ロワアーム、ハイアングルスタビライザー、タイロッド、タイロッドエンド、ステアリングリジットカラーを投入。切れ角アップはワッシャーに加え、自作ナックルを組み合わせて対応する。さらに、逆関節対策とアッカーマン最適化を狙い、ステアリングラックの前出し加工も施されている。 リヤ側にはカザマオートのメンバーリジットカラーとZSS製ロワアームを装着。「パワーがない分、トラクションを掛け過ぎてもダメ」という考えから、キャンバー調整を重視。走行時のアライメントはフロント6.5度、リヤ2度にセットされる。LSDは手持ちのカーツ製ツアラーV用を流用する。 ホイールはボルクレーシングTE37V エイムゲインスペック。フロント9.5J−14、リヤ11J−7の18インチという攻めたサイズだ。街乗りではフロントにナンカンNS-2R(225/35R18)、リヤにヴァリノ ペルギア08D(255/35R18)を装着。JDC参戦時は、リヤにドリフトスター86ヒーロー(215/45R17)を履く。 FA24エンジンはマフラー交換のみのライトチューンながら、ECU-TEKを用いて島根県のウエストオートで現車合わせを実施。最高出力の上積みは約5ps程度だが、「アクセルレスポンスが別物」と、その効果は大きい。 マフラーは用途に応じて3種類を使い分ける。置きイベントでは、125φブルーショット左右出しテールのエイムゲイン製。サーキットでは直管仕様、もしくはタイコ付きシングルテールで音量を調整する。 派手な外観とは対照的に、室内は驚くほどシンプル。追加メーターはピボットの水温計のみ。リヤシートを撤去し、そのスペースにエアサス用のタンクとコンプレッサーを収めている。 外装は、ドリフト仕様としては珍しいエイムゲインGT-Sワイドフェンダーバージョンをフル装着。ボンネットやルーフスポイラーなども含めたフルキットだ。ボディカラーは、林さんのパーソナルカラーでもあり、製作を担当した「Kプロデュース」推しでもあるオリジナルブルー。ガラスにはIRグロウゴーストフォルムを施工済みだ。 「GR86は“箱”が本当に良い。純正トルセンも効くし、切れ角アップして足を入れるだけでそこそこ走れる。壊れないし、コスパもいい。しかもエアコン付き(笑)。シルビアだと、エアコンすら付いてないこともありますからね」 一方で、「コストを掛けるなら絶対にECU」と林さんは断言する。「レスポンスがめちゃくちゃ良くなります。パワーは大きく変わらなくても、扱いやすさがまるで違う」。 現在はGPスポーツのナックルやステアリングラックのギヤ増しもテスト中。周囲にも影響を与えながら、林和樹のGR86は、今もなお進化の途中にある。 TEXT&PHOTO:山本大介(Daisuke YAMAMOTO)
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