高市早苗首相は23日、通常国会冒頭で衆院を解散、2月8日に投開票となる。与野党の選挙公約に共通するのは食料品を中心とする消費税減税の連呼である。そこで財政危機が来ると喧伝(けんでん)するのがオールドメディアだ。
エンゲル係数上昇は国家の危機
15年前から消費税増税が日本経済低迷の元凶だと断じ、2年余り前には食料品税率をゼロにすべきとの論陣を産経新聞紙上などで張ってきた拙論に対しては、読者の方々から「あなたの主張されていた通りになりましたね」と声をかけられるが、複雑な気分だ。というのは、減税最終決定までの間にオールドメディア経由でさまざまな雑音が入り、投機筋につけ込まれ国債、外国為替市場が混乱してしまうのではないか、と恐れているからだ。
拙論が2023年秋に食料品課税ゼロを提起したとき、自民党の若手議員グループを中心に賛同する動きが広がりかけたが、このときは自民の二階俊博幹事長(当時)が減税推進議員たちを集め、「消費税増税を実施するためにどのくらい苦労したか覚えているのか」と一喝し、押さえ付けた。要するに、消費税は社会保障財源であり、減税すれば、元に戻すことが困難になる。それでもよいのか、という論法である。
物価高で一般家計の可処分所得が大幅に下がり、食料費が家計消費に占める割合(エンゲル係数)が急上昇、低所得国並みの水準近くまでになる。同係数が示すのは、とりわけ若い世代や子育て世代の生活の直撃で、少子化を助長する。まさに国家の危機なのに、目先の財源しか考えない。
四の五の言わずに、2年間などの期限付きで実行すればよいのではとも、某若手有力議員に説いたが、「田村さん、小売店のレジのソフトの変更などの準備に1年かかります」とまるで戦闘意欲喪失。あとで某大手スーパーの幹部に聞いたら、「そんなバカな、一晩で態勢が整いますよ」という具合だった。
そして今回は、食料品消費税率ゼロへの思いを封印していた高市首相(自民総裁)が先頭に立ち、「飲食料品の2年間消費税ゼロの検討加速」を衆院選公約に盛り込み、自民と連立を組む日本維新の会も歩調を合わせた。
立憲民主党と公明党のにわか新党「中道改革連合」も苦し紛れに「食料品消費税ゼロ」と明記、国民民主党は賃金上昇率が物価を安定して上回るまで消費税全体を5%に引き下げると宣言。まさに、衆院選は食料品を軸にした消費税減税一色に染まる。
日本国債売りは「空騒ぎ」
これをみて金融市場では日本国債売りが沸き起こり、長期金利が急上昇し、その余波が米国債市場にまで及んだ。消費税増税や緊縮財政を支持してきた経済紙などは政界以上に、増税思考に染まってきた。これらメディアは海外の投資ファンドが仕掛ける日本国債投機をみて、「それみたことか」とばかり、インフレの高進や財政のバラマキ懸念を盛んに論じる。
だが実のところ、それは市場の空騒ぎに過ぎない。たとえば、食料品消費税ゼロでも、国・地方の消費税収減は5兆円程度で済み、ここ数年の税収増で十分すぎるほど吸収できる。それに、日銀が市場売却を始めたばかりの上場投資信託(ETF)の保有残高は25年9月末時点で時価83・2兆円、簿価37・1兆円との差額は46・1兆円もある。日銀の売却益の国庫納付金でも賄える。
それに何よりも、高市政権の掲げる「責任ある積極財政」は「健全財政」を柱に据えている。新年度政府予算案では社会保障、防衛など政策支出を税収の範囲内にとどめる基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化を28年ぶりに達成することになっている。内閣府22日発表の試算では、国・地方合わせたPBは赤字になるが、赤字縮小や政府債務残高の国内総生産(GDP)比率の低下傾向は続く。高市政権は予算を複数年度で編成し、財政健全化と成長のための投資を両立させる狙いである。それらを無視し、相も変わらず国債費や地方交付税の増加で膨らんだ歳出規模だけを取り上げて、イソップ寓話(ぐうわ)のオオカミ少年のごとく騒ぎ立て、投機勢力を呼び込むオールドメディアのお粗末さが総選挙を前にして際立っている。