維新の会代表、吉村洋文・大阪府知事の出直し選挙は「抗議の白票」に注目
昨年10月、自民党と連立政権を組んで与党入りした日本維新の会の吉村洋文・代表(前大阪府知事)が、選挙を悪用した政策のごり押しに突き進んでいる。2月8日投開票の衆議院選挙に合わせた大阪府知事と大阪市長の出直し選挙だ。1月22日に告示された府知事選挙で吉村前知事は「副首都にふさわしい大阪を目指し、もう一度、大阪都構想に挑戦させて下さいと訴える選挙だ」と説明するが、巨額の税金を投じて出直し選挙をする必然性はなく、主要政党は候補を擁立していない。
連合大阪は組合員に対し異例の「白票の呼び掛け」を行う方針で、吉村前知事の自己都合選挙は抗議の白票がいくら積み上がるかが最も注目される選挙になりそうだ。
大阪市長選の告示は1月25日で、現段階では選挙になるのか横山英幸市長(日本維新の会副代表)が無投票当選するかは分かっていない。
首長らの暴走に抗議の意思を示す白票
大阪府知事選は1月22日に告示され、吉村前知事のほか2人が立候補した。1月15日に吉村知事(当時)と横山市長が記者会見し、「大阪が副首都になるために大阪都構想に3度目の挑戦を訴える」と2人とも辞職して出直し選挙をすると発表した。その翌日、連合大阪は「府民生活を置き去りにした大義なき出直し『ダブル選挙』について」とする澤谷誓之・事務局長の談話を発表。「住民投票で2度否決された政策を、選挙(衆院選)のタイミングを利用して再び押し通そうをする姿勢は民主主義の根幹を揺るがす。府政・市政を私物化する行為にほかならない」としたうえで、「批判の意思を示す行動として組合員に白票の投函を呼び掛けることについて検討する」としている。
公明党大阪府本部の石川博崇代表(参院議員)は1月19日、大阪府知事選や大阪市長選に公明党候補を擁立しないことを正式に表明。この日、開催した新春年賀会で、石川代表は「大阪府民としては白票を投じざるを得ない大義のない選挙だ」と述べ、白票に言及した。
共産党の支援者向けの後援会ニュースは、衆院選の共産党候補予定者を紹介し、大阪府市首長出直しダブル選挙については「維新による大義のない出直し選挙はやるべきではありません。投票用紙には何も書かずに白紙のままで投票箱にいれてください」と記載している。
大阪市を廃止し、特別区に分割する大阪都構想を巡っては、2014年3月、維新の会の創設メンバー、橋下徹・大阪市長(当時)が出直し市長選を実施した。大阪府議、大阪市議、府市両首長で作る「特別区設置協議会」で、維新の会以外の会派の議員らが大阪市廃止に反対し、大阪市を幾つの特別区に分割するのかなど大阪都構想の設計図である「特別区設置協定書」がまとめられなかった。そこで橋下市長は出直し選で民意を問うという奇策に打って出た。
この時も主要政党は候補を立てず、選挙戦は橋下市長と泡沫候補3人だけ。投票率はわずか23.59%で、首長の自己都合選挙を世間は支持しないことが浮き彫りになった。また、橋下市長の獲得した約37万票の次に多いのは約6万7000票の無効票で、そのうち約4万5000票は白票。低投票率の上に「次点は白票」と話題になった。
投票率アップのために衆院選に抱き着き
今回の府市首長ダブル選挙は、この轍を踏まないための仕掛けがされた。地方自治法145条では、首長が任期中に退職する時は、知事は退職日の30日前、市長村長は20日前までに議会に申し出なくはならない。議会が同意した場合のみ、これより早く退職することができる。吉村知事と横山市長は1月16日、それぞれ府議会、市議会に辞職を申し出たが、「いつ辞職するのか」は辞表に記載がなく、退職希望日が不明なので府市両議会は招集されなかった。投開票日が「2月8日」になったのは、府市の選挙管理委員会が取りざたされていた衆院選の日程に合わせて決めただけだ。
吉村知事は1月22日の告示日に立候補することで、公職選挙法90条の規定で自動失職。横山市長も1月25日に同様の扱いとなる。選挙があるから辞職するのか、辞職するから選挙あるのか、ニワトリとタマゴの関係。衆院選と合わせて出直し選挙の投票率を上げようと、公選法90条を悪用した脱法的やり方だ。
府知事選は吉村知事の辞職の申し出から5日後に告示された。野々上愛・大阪府議(民主ネット大阪)は「知事の辞職の申し出から告示まで中3日営業日しかない。大阪府政に志のある人がいても、常識的に考えて立候補できない。吉村知事は選挙を『民主的プロセス』と言うが、自分にしかできない選挙は民主的とは言わない。選挙管理委員会の責任も大きい。経費の節約のために投開票日を衆院選に合わせるのかもしれないが、民主的な選挙について選挙管理委員会はきちんと検討したのか、府議会で追及する必要がある」と話す。
巨額な経費のかかる選挙を私物化
知事選には約23億3000万円、市長選には約4億7000万円の経費がかかる。出直し選挙は任期が伸びないので、来年4月にはまた府知事選と市長選が行われる。吉村前知事の街頭演説会では「税金を無駄使いするな」と怒号が飛び、「28億円」のプラカードが幾つも掲げられている。
出直し選で「民意を問う」は建前に過ぎず、来年4月の府市首長ダブル選、統一地方選に合わせて大阪都構想の住民投票を実施しようとの意図が明らかだ。政令指定都市の大阪市を廃止して特別区に「格下げ」する大阪都構想は市民生活への影響が大きく、2015年と2020年の住民投票で大阪市民は「NO」を重ねた。来年こそ選挙の勢いで住民投票を「賛成多数」に持ち込もうとしており、今回の出直し首長ダブル選は、そのスケジュールの始まりと言える。