ソニーでもトヨタでもない…テレビ・新聞が報じない「ものづくり大国・日本」復活の切り札となる「次の主役」
■「知のインフラ」として再定義する 最終章:この変革を進めるために ここまで論じてきた試作を担うものづくり中小企業の衰退は、単なる一分野の問題ではない。日本の製造業が、これからも自ら学び、進化し続けられるかどうかという、産業の根幹に関わる問題である。だからこそ、この課題は市場原理に委ねて自然に解決することを期待してよい性質のものではない。明確な意志と役割分担をもって、社会全体で取り組む必要がある。 まず国に求められるのは、試作・基盤加工という領域を、補助金の対象としてではなく、日本の産業競争力を支える「知のインフラ」として位置づけ直すことである。設備更新や単発の支援策だけでは、構造的な問題は解消しない。人材育成、データの蓄積と共有、フィジカルAIの実装を前提とした中長期的な基盤設計が不可欠である。試作は研究開発の末端ではなく、日本の技術主権を支える中核的機能であるという認識が、政策の出発点にならなければならない。 ■守るだけでは失われる「暗黙知」を残す 大企業にも、より踏み込んだ姿勢が求められる。これまで合理性の名の下に外部化してきた試作・基盤加工を、単なる発注先としてではなく、共に学び、共に進化するパートナーとして捉え直す必要がある。それは慈善や社会貢献ではなく、自社の開発力と競争力を守るための戦略的投資である。試作の現場で生まれる知見を、自社の設計や量産にどう接続するのか。その責任を、これからはより自覚的に引き受けるべき段階に来ている。 ものづくり中小企業自身にも、重要な役割がある。現場に蓄積されてきた暗黙知は、守るだけでは失われていく。フィジカルAIを活用し、加工条件や判断の背景をデータとして残し、次世代へ引き継ぐ努力が不可欠になる。試作・基盤加工を「代替可能な作業」から「知を生み出す工程」へと引き上げることができるかどうかが、中小企業の将来を左右する。