「飲み会に呼ばれない」答えのない人付き合いの悩み、大切なことは
新年が始まり、仕事や学校など日常生活のリズムは戻ってきたでしょうか。「新年会が続いていたけれど、ようやく落ち着いてきた」という人もいるかもしれませんね。
反対に、忘年会にも新年会にも行かなかった、という人もいらっしゃるでしょう。今回のテーマは、「飲み会に呼ばれない」という悩みです。
前回に続き、20代の会社員マナミさん(架空の人物)に登場してもらいましょう。マナミさんはまた、職場での人付き合いに悩んでいます。
以前は「ちょっとした会話が続かない」ことに悩んでいましたが、工夫を重ねたことで雑談もどうにか続くようになりました。ところが最近、同僚たちが自分だけを誘わずに飲み会を開いていたことを後から知ったのです。
マナミさんは深く傷ついています。心が折れそうでした。「人を傷つけないように、不快な思いをさせないように、穏やかに振る舞ってきたつもり。会話も工夫しているし、清潔感にも気を配っている」「みんなが嫌がる雑用も率先して引き受けてきたよ。それなのに、なんで誰とも親しくなれないんだろう」。あとどんな努力をすればいいのか、わからなくなってしまいました。
マナミさんは不器用なところはあるものの、心の優しい女性です。小さい頃から、「優しい人間でありたい」と思ってきました。
しかし気づけば、それほど人気者ではなく、「すごいね」「えらいね」とは言われても、「遊ぼうよ」「ねえ、内緒の話していい?」と親しい声をかけられることはありませんでした。決して嫌われたり、仲間はずれにされたりしているわけではないのですが、親友と呼べる人がいません。その現実に、マナミさんは孤独を感じています。
誰かと親しくなるきっかけは
努力しているのに、なぜか人との距離が縮まらない……。こうした悩みを抱えている人は、少なくないでしょう。もしかしたら、私たちが小さい頃に大人から期待された「こういう子になってほしい」という要素と、成長して人と仲良くなるときの要素は、少しずれているのかもしれません。
どうでしょうか。誰かと親しくなった時のことを思い出してみてください。親しくなるきっかけは、「あの人すごいなあ、尊敬する」という気持ちよりも、「え? あなたもそうだったの? 実は私もよ」というような、ホッとした仲間意識や共感ではありませんか?
相手に対して尊敬や「いい人だな」というよい印象を抱くと、「その人と近付きたい」という動機につながることは、間違いないと思います。けれど、最終的な決め手にはならないのでしょう。
「いい人だな」より「合う人だな」、「親切にしてくれる、尽くしてくれる」より「一緒にいて心地いいな」。そんな感覚が、親しさを育む鍵になるのかもしれませんね。
何を重視して人付き合い? 選択肢は二つ
マナミさんは「職場のまじめで優しくていい人」になろうとしていましたが、今回飲み会に行った同僚たちは、もう少し不真面目でルーズな人たちでした。気楽にわいわいしたいのです。マナミさんが入ると、緊張とまでは言いませんが、「ノリが違う」「気を使う」と思われたようです。
では、マナミさんはどうしたらいいのでしょう。選択肢は二つあります。
マナミさんの心の底に、「不真面目な部分」があるなら、それをもう少し遠慮なく表現して同僚たちと親しくなるもよし。
「いや、私はもう二十数年間ずっとこのキャラで生きてきたし、そんなルーズな部分はほぼない」という場合には、もっと気の合う人と仲良くすればいいのではないでしょうか。どちらを選んでも間違いではありません。大切なのは、自分が何を重視して人付き合いをしたいかを考えることです。
人は自分では出していないつもりでも、態度や声色、表情や姿勢などの非言語的な部分に、内側のキャラクターが自然と表れています。初対面で、その人の過去のことなどなんにも知らなくても、「たぶんこういう人生を送ってきたんじゃないかな」と直感することはありませんか? そういうものなのです。
価値観を見つめ直すきっかけに
マナミさんは自覚するよりうんと、清らかな人なのでしょう。それが同僚には伝わっているのです。
マナミさんがどうしたらいいのかは、これからの人生をどのような価値を大切にして生きたいかにもよるでしょう。「いや、この『いい子キャラ』は母の言いなりで形成されたもの。私はもっと違う生き方がしたかったの!」。そんな決断もありです。「私はこの染みついた清らかなキャラでいく。わかってくれる人を探す」。これもいい決断です。
答えは一つではありません。今回の悩みが、自分は何を大切にして人付き合いをしていきたいか、価値観を見つめ直すきっかけになるとよいですね。
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〈臨床心理士・中島美鈴〉
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。