日韓共同取材
「TM特別報告書」
自民党に巣食った統一教会
日韓共同取材
「TM特別報告書」
自民党に巣食った統一教会


民意なき解散
2026年1月23日、高市早苗首相が衆議院を解散します。1月27日公示、2月8日投開票の日程で総選挙が行われます。
今回の解散総選挙を、国民の多くは望んでいません。物価対策をはじめ、困窮する暮らしを支える政策の実現、新年度に間に合うよう予算を成立させることの方が重要です。
それでも高市首相が解散を強行したのは、自民党の膿が噴き出ないよう、不都合な事実に蓋をするためです。
膿の中でも致命的なのが、統一教会と自民党との長年にわたる共依存です。
統一教会は2015年に「世界平和統一家庭連合」と名称変更し、マスコミ各社は「旧統一教会」と呼んでいますが、教団がはらむ問題の本質には連続性があるので、Tansaは「統一教会」と表記します。
韓国・ソウルにある統一教会本部=ニュースタパ提供
韓国・ソウルにある統一教会本部=ニュースタパ提供
統一教会の教義は、植民地支配により罪を犯した「エバ国家」の日本が、「アダム国家」の韓国に贖罪せねばならないというものです。日本の信者から集めた多額の献金や、霊感商法での利益が韓国に送られ続けてきました。日本による加害の歴史に目を向けることを「自虐史観」などと言う自民党の政治家にとっては、受け入れ難いはずです。
それでも自民党が統一教会を受け入れたのは、教団側が自民党の選挙運動を支援したことと、スパイ防止法など自民党が推進する政策でタッグを組んだからです。
安倍家と統一教会
2022年7月に安倍晋三元首相が殺害された後、統一教会と自民党との関係が一気にクローズアップされました。山上徹也被告の母親が、家族を犠牲にして計1億円超の献金をした信者だったからです。山上被告は、安倍氏が教団の大会にビデオメッセージを送っていたことを知り、絶望したといいます。
自民党は急いで、統一教会と自民党国会議員との関係を調査しました。安倍氏が殺害された2カ月後の2022年9月には、所属議員と統一教会との関わりについて調査した結果を公表しました。
ところが、自民党の調査は議員からの自己申告に頼っており、極めて不十分でした。379人中、半数近い179人が統一教会との接点を認めたものの、具体的にどのような関係性があったのかは明らかになりませんでした。名前を公表した議員も、「関与の度合いが強い」121人だけです。
結局、自民党は統一教会との関係について、「党としての組織的な関係はない」との見解を示しました。
しかし、自民党の調査では安倍氏と統一教会との関係について調べていません。
岸信介氏=首相官邸ホームページから
岸信介氏=首相官邸ホームページから
韓国で始まった統一教会は、岸信介氏との関係を足がかりに日本で活動を始め、孫の安倍氏の代に至るまで関係を維持しました。岸氏も安倍氏も、総理総裁を務めましたから、統一教会と自民党との組織的関係を検証するために調査は必須です。
安倍氏との関係を調べようとしないのは、「党としての組織的な関係はない」という見解を守り抜きたいからだと考えられます。
山上被告には2026年1月21日、奈良地裁(田中伸一裁判長)が無期懲役の判決を出しました。判決は、自民党と統一教会との関係には触れませんでした。
しかし自民党は、統一教会による被害者の存在を長年にわたって知りながら、十分な対策を取らず放置しました。それどころか教団と癒着してきました。安倍氏はその党の総裁を、最も長く務めた人物です。奈良地裁の田中裁判長らは、政権与党である自民党に配慮して、自民党と統一教会との関係にあえて踏み込まなかったと疑わざるを得ません。
「TM特別報告書」とは
自民党がおざなりの調査で逃げ切ろうとしていたところへ、新たな展開が韓国でありました。
2025年9月23日、韓国の特別検察官が教団トップのハン・ハクチャ総裁を逮捕したのです。日本では、高市氏や小泉進次郎氏ら5人が立候補して自民党の総裁選が行われていた最中のことでした。
特別検察官のもとへ出頭する統一教会のハン・ハクチャ総裁=ニュースタパ提供
特別検察官のもとへ出頭する統一教会のハン・ハクチャ総裁=ニュースタパ提供
ハン総裁には、教団幹部のユン・ヨンホ氏と共謀し、ユン・ソンニョル前大統領の妻に高級バッグやネックレス、側近に1000万円を贈った容疑がかけられています。検察は教団の事業に便宜を図ってもらう目的があったとみています。
捜査の過程で検察が押収したのが、「真のお母様特別報告書」です。「真のお母様」を英語で「True Mother」と訳し、頭文字をとって「TM特別報告書」と呼ばれています。
TM特別報告書は、教団幹部のユン・ヨンホ氏が作成しました。韓国国内や日本をはじめ世界各国の支部から上がってきた報告を、ユン氏がハン総裁に報告するために作成したものです。
検察の狙いは、TM特別報告書により、教団内の指示命令系統を明らかにすることです。ユン氏の報告を受けて、ハン総裁が教団運営の方針を決めていたとみています。
韓国での裁判では、TM特別報告書が法廷内でスクリーンに投映されるなど、この報告書が重要な証拠となっています。
教団会長「安倍氏とは運命共同体」
TM特別報告書は、韓国のメディアが続々と入手してその内容を報じています。日本でも、報告書を入手して報じるメディアが出てきました。
Tansaは、韓国のニュースタパを通じてTM特別報告書を入手しました。韓国語で3212ページあります。ニュースタパは非営利独立の探査報道組織で、Tansaの創刊当初からのパートナーです。統一教会が日韓両国の政界に、いかに浸透していったか。共同取材で明らかにしていくことになりました。
TM特別報告書をつぶさにみていくと、統一教会が長年にわたって自民党に巣食っていたことがよく分かります。
自民党が調査しなかった安倍氏との繋がりについても、様々なことが書かれています。
2019年7月2日は、午前11時20分から約20分間、当時首相だった安倍氏、萩生田光一・自民党幹事長代行の両名に、教団側から統一教会の徳野英治会長ら5人が面会しました。
この時の報告では、統一教会がアメリカの有力政治家たちと関係があることを誇示したところ、安倍氏が前のめりになった様子が書かれています。
最近のハン・ハクチャ総裁の世界的な活動を少し紹介しますと(安倍氏に)言い、今年2月に韓国で開催されたワールドサミットの写真、真のお母様がスピーチする様子と、その後ろに40名あまりの国家元帥がスピーチしている写真(中略)アメリカのニュート・ギングリッチ元下院議長とディック・チェイニー元副大統領がスピーチしている写真(中略)そして、クリストファー・ヒルがスピーチしている写真などを見せました
そのような写真を見ているなかで、安倍首相は「ギングリッチとチェイニーも来たんですか。すばらしいですね。クリストファー・ヒルもあなたがたの国際会議に参加していますか」とアメリカのVIPたちの参加について、最も敏感に反応していました。やはりアメリカの日本に対する影響力は絶対的であることを今一度痛感いたしました
この日の面談について徳野会長は、安倍氏のことを「運命共同体」のように感じたといいます。
またTM特別報告書では、統一教会に安倍家への「誰にも予測できない天の秘密のルート」があったとも明かしています。
高市氏についても、安倍氏が「高市早苗でなければこれからの日本を引っ張っていくことはできない」と熱烈に支持していた政治家として、TM特別報告書に何度も登場します。
選挙ではどのように自民党を支援するか、自民党の国会議員たちをどう「教育」するか、政府の教団解散を求める動きや、マスコミにどう対応するかーー。その他にもTM特別報告書には多岐にわたる内容が書かれています。
選挙中に詳報します
自民党が政権与党として相応しい政党なのか。TM特別報告書には、検証するべき内容が詰まっています。
しかし高市首相は、統一教会との関係に蓋をしたまま、国民の審判を仰ごうとしています。
Tansaは1月27日公示、2月8日投開票の選挙期間中、TM特別報告書について、韓国ニュースタパとの共同取材の成果を詳報します。
投票の判断材料としていただけることを願っています。
2026年1月22日
Tokyo Investigative Newsroom Tansa
シリーズ「TM文書」の記事一覧
※1月27日以降、順次更新していきます。
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