《世界5大長寿地域『ブルーゾーン』に住む人々に共通する食生活》「肉をあまり食べず、食物繊維をたっぷり摂取」「ベースにあるのは長年受け継がれてきたごく日常的な食事」
「ブルーゾーン」と呼ばれる世界5大長寿地域を知っているだろうか。そこに住む人たちの生活習慣を調べると、多くの共通点があるという。ブルーゾーンの人たちが実践しているのは、驚くほどシンプルな暮らしだ。その秘密を探ってみた。【前後編の前編】 【写真】さまざまなメリットがある地中海料理のイメージ写真
「いつまでも若く、健康でありたい」──これは、時代を問わず人類にとって不変のテーマだ。しかし、年齢を重ねるごとに体力の衰えや認知機能の低下など、老いへの不安が現実味を帯びてくる。 そんな中、2023年にNetflixで配信されたドキュメンタリーをきっかけに注目されているのが、世界各地に点在する健康長寿地域「ブルーゾーン」だ。イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島、そしてギリシャのイカリア島という5つのエリアが広く知られている。 この地域の特徴は単に長寿であるだけではなく、認知症やがんの発症率も低いという。昨年5月、サルデーニャ島へ調査に行った京都府立医科大学大学院医学研究科教授の内藤裕二さんが説明する。 「ブルーゾーンという言葉が生まれたのは、イタリアで長寿者の疫学研究をしているジャンニ・ぺス教授が、世界地図を広げ、健康な長寿者が集まる地域に青い丸印をつけたのが始まりです。長寿地域の人々は、決して特別な健康法を実践しているわけではありません。しかし彼らの暮らしを調べると、いくつもの共通点があることがわかっています」 では、実際にブルーゾーンで暮らす人たちは、どのような生活を送っているのだろうか。専門家の解説とともに、長寿につながるヒントを解き明かす。
何か特別な食材を食べているわけではない
長寿を語るうえで何より重要なのは食事だ。 「ブルーゾーンの人たちに共通するのは、肉をあまり食べないことです。基本的に、穀物や野菜中心のプラントベース(植物由来)の食事で、食物繊維をたっぷり摂っています。これらの食材は認知症や発がんリスクを下げるとされています。 よく“長生きするには、肉を食べてたんぱく質を摂りなさい”といわれますが、“肉は体に悪い”というのが世界の常識になりつつある。動物性たんぱく質は内臓の老化を早め、大腸がんのリスクが高まると指摘されます。 なかでも牛や豚などの赤身肉や加工肉は避けるべきです。長寿で知られる沖縄の大宜味村(おおぎみそん)では、煮豚を少し食べる程度で、牛はもちろん鶏肉もほとんど口にしません」(内藤さん・以下同) 健康長寿に理想的な食事バランスは、炭水化物65%、脂質20%、たんぱく質15%。また、全体の95%を植物性、残り5%を動物性にするのが目安だという。植物由来の食事というと野菜だけ食べればいいと思うかもしれないが、それだけではたんぱく質が不足する。 「海外のブルーゾーンでは全粒穀物や豆類、ナッツ類からたんぱく質を摂っています。ナッツ類はビタミンやミネラルも豊富で、究極の長寿食といえます。日本人なら魚で補うのも手ですが、豆腐や納豆などの大豆製品を食べて肉の量を減らすといいでしょう。 卵も1日2個程度ならコレステロール値を気にする必要はなく、良質なたんぱく源としておすすめです」 国際医療福祉大学病院教授の一石英一郎さんも、長寿者がトマトをはじめとする緑黄色野菜を日常的に摂取している点に注目する。 「緑黄色野菜にはポリフェノールなどの抗酸化物質や食物繊維が豊富に含まれており、血糖値の上昇や体の酸化を抑え、心血管疾患のリスクを下げる効果が期待できます。近年、植物由来の抗酸化成分が健康増進に極めて重要な役割を果たすという認識は、医学界でも定説となりつつあります。毎日コツコツと野菜を摂り続けるかどうかが、将来の健康状態に大きな差をもたらすのでしょう」 特筆すべきは、ブルーゾーンの人たちが、何か特別な食材を食べているわけではないということだ。内藤さんが指摘する。 「ベースにあるのは、その土地で長年受け継がれてきたごく日常的な食事です。例えば、牧羊が盛んなサルデーニャ島ではチーズやヨーグルトなど羊の乳製品をよく食べますが、彼らの腸にはそれらを分解する特有の細菌がすみ着いており、健康に寄与していると考えられます。 私たちが行っている『長寿のまち』で知られる京都府京丹後市の調査では、元気な長寿者は牛乳をよく飲んでいます。ほかの研究を見ても、日本人を対象にした調査では、牛乳や乳製品は認知症予防になることがわかっています」
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