(文中敬称略)

 連載124回である。

 繰り返す。連載124回である。

 これはもう、「巨人の星」の星飛雄馬のように「俺は今、猛烈に感動している!」と言わねばならない。

 「巨人の星」(原作:梶原一騎、作画:川崎のぼる、1966~1971)なんて若い人には分からないと言うなら、「巨人の星」を本歌取りした「NG騎士ラムネ&40」の主人公・勇者ラムネスのように「俺は今、モーレツに感動している!!」と叫ぼうか。

 と、書いてから調べて気がついた。「ラムネ&40」は1990年のテレビアニメだった。すでに36年。こっちももはや古いのだ……ついこのあいだのような気分だが、そう感じるのは年を取った証拠なのだろう。

 124回という半端な回数になにを感動しているのかと思ったあなた、特に50代60代のあなた……「123回とは『マカロニほうれん荘』(鴨川つばめ)の連載回数である」と知ったら、どうであろうか。

「いったいなんなんだこのマンガは?」

 私は毎週毎週本コラムを書き続け、燃え尽きることなく、あの傑作にして名作の「マカロニほうれん荘」の連載回数に追いついたのである。

 「マカロニほうれん荘」は週刊少年チャンピオン1977年21号(5月16日号)から連載が始まった。

 今もそうだが多くの週刊雑誌は東京で印刷し、地方に運んで売っているので、地域によって発売日が異なる。

 当時高校1年生だった自分がいた神奈川県で、チャンピオンは木曜日発売だった。だから、自分が最初に「マカロニほうれん荘」に触れたのは、多分1977年5月12日木曜日のはずだ。時刻はおそらく午後4時頃。というのも、当時の自分は、毎週木曜日の学校帰りに本屋に寄ってチャンピオンを立ち読みしていた。当日の天候を調べると晴れ。全国的に五月晴れの一日だった。

 ここまで調べると、連載初回の「マカロニほうれん荘」を立ち読みした記憶が立ち上がってくるのだが、それはもちろん後からつくられた偽の記憶である。本当は、どんな状況で初めて「マカロニほうれん荘」を読んだかなんて覚えてはいない。あるいはこの日は部活に出ていて帰りが遅くなり、翌金曜日になって級友が学校に持ってきたチャンピオンを回し読みで読んだのかもしれない。古い記憶なんて、そんなものだ。

 しかし、初めて「マカロニほうれん荘」を読んだ時の印象ははっきり覚えている。「なにかこれまでとはまったく違う、とてつもなく面白いマンガが始まった」と思ったのだった。

 その直観は間違っていなかった。

 1977年21号の表紙の中央には「新連載」の文字と共に「マカロニほうれん荘」のキャラクターたちが周囲に「がきデカ」(山上たつひこ)、「ドカベン」(水島新司)、「750ライダー」(石井いさみ)などの人気作品の主人公たちを従え、並んでいる。そうじ君、トシちゃん、きんどーさん……。

 主人公の沖田そうじ君が高校に入学すると、同じクラスにどう見てもOBにしか見えない年かさの2人がいた。「きんどーさん」こと金藤日陽(きんどう・にちよう)40歳と、「トシちゃん」こと膝方歳三(ひざかた・としぞう)25歳。そうじ君はアパート「ほうれん荘(菠薐荘)」で、この「落第を重ねた」というはるかに年上、かつとっぴな行動をする2人の同級生と同居することになってしまう……。

 「マカロニほうれん荘」の基本フォーマットは、高校を舞台としたハイスクールコメディーであり、そこに「オバケのQ太郎」(藤子不二雄)で確立されたギャグマンガの形式である「日常に異形の者が入り込み、一緒に生活する」を重ね合わせたものだった。

 ギャグマンガとしては手堅い設定。にもかかわらず、「マカロニほうれん荘」は、あっさりと既存の日常ギャグマンガの表現を乗り越えていった。絵柄と描写は細かくスタイリッシュ、女の子はかわいく、背景の隅まで緻密に描き込んであった。ギャグはシュールで、背景として盛り込まれる情報はかなり高度。ギャグからストーリーに至るまで、サブカルチャーのネタを容赦なくぶち込んであった。

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