旧統一教会への恨み、なぜ安倍氏へ… 標的変更の評価争点 元首相銃撃裁判21日判決
令和4年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人などの罪に問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の判決公判が21日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれる。最大の焦点は量刑。旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に傾倒した母親による多額献金と一家の困窮など、教団に翻弄された被告の不遇な生い立ちと、事件との結びつきをどう評価するかが量刑判断のポイントだ。検察側は無期懲役を求刑、弁護側は「最も重くても懲役20年」と訴える。 【ひと目でわかる】安倍晋三氏銃撃事件の量刑判断の主な争点 事件の最大の謎は、被告が抱いていた教団への恨みが、最終的になぜ安倍氏に向けられたのかという点。安倍氏と教団の結びつきを示す根拠の一つとされるのが、3年9月、安倍氏が教団の友好団体に寄せたビデオメッセージだ。教団トップの韓鶴子(ハンハクチャ)総裁に「敬意を表します」という発言が含まれていた。 ■弁護側「国家が後ろ盾を与えたような衝撃」 弁護側証人として出廷した教団被害の救済に携わる弁護士は、このメッセージについて「国家が教団を承認し、後ろ盾を与えたような衝撃がある」と証言。後日行われた被告人質問では、被告も同様の感想を述べ、安倍氏に対し「嫌悪感、敵意が徐々に強まった」と説明した。 被告の家庭生活は母親の入信を機に、中学生ごろから一変。信仰に反対する祖父と母親の衝突が絶えないようになり、高額献金で困窮状態に陥った。30代のころには教団を憎んでいた兄が自殺。それからの被告は旧統一教会に打撃を与えることが「人生の意味」と考え、教団幹部の襲撃を計画するようになった。 弁護側は「教団を知る者は、安倍氏がほかの政治家に比べて、教団との関係が深いと認識していた」と主張。教団への恨みと安倍氏に対する銃撃は一直線に結びついており、不遇な生い立ちを量刑上考慮すれば、有期刑が相当だとする。 ■安倍氏は「教団幹部の代替」と検察側 一方の検察側は、被告自身が公判で「(安倍氏は)本筋ではない」と発言するなど、安倍氏に殺害されるほどの落ち度があるとは考えていなかった、と疑問を呈する。 事件前月に仕事を辞めて経済的な破綻が迫り、教団幹部の来日が見込めない中、襲撃計画が実行できなくなることを恐れ、事件5日前に急遽(きゅうきょ)「代替」として安倍氏に標的を変更したと指摘。この過程における生い立ちの影響は「極めて限定的」で、量刑上重視すべきではないと強調する。