小中一貫9年制義務教育で高校改革 : スウェーデンの学校制度に学ぶ
東京都品川区教育委員会では、平成14年度から小中一貫校の新設を検討している。
平成15年2月5日付けの朝日新聞によれば、現行の6・3制では子どもの発達段階には合わないことに着目し、開設準備中の小中一貫9年間を4・3・2制にするとのことである。品川区の小中一貫教育は平成18年度から実施される。
筆者はかねてから小中一貫教育を、中高一貫教育との関連で次のように考えている。
既に平成11年4月から始められた中高一貫教育については、いまだにいろいろな問題点があるといわれている。国が教育制度を変革するにしては、中高一貫の是非があまり論議されず、導入の際の方法論に陥ったとされた。また、制度疲労を起こしているから改革をしなければならないという見解があったが、学校制度を変えることについて十分に検証されていない。中高一貫教育はどのような対策をとっても、エリート教育化する可能性がある。中高一貫教育では、いま問題になっている高校選抜が小学校に下りてくる。普通の小学生が学校を選択することはできないから、当然保護者の意志が入り、恵まれた家庭の子が中高一貫校には入り、大多数の子は地元の学校に通う階層差がはっきりしてくる。よく考えてみればわかるように、義務教育の中学校と非義務教育の高校が直接繋がると制度的に複雑になり、今後の学校教育の改革と発展を阻害する恐れがある。
問題点の多い中高一貫教育を明らかにするには、現在しきりに論議されているゆとりの多少や高校入試をどうするかなどの観点ではなく、先ず市民社会における二十一世紀の高校の在り方を確めることが大切である。つまり、国民必須の教育は小・中一貫九年制義務教育で終了させ、これからの高校は生徒と社会のニーズを視野に入れ、教育課程は生徒の能力と適性に合ったいっそう多様な社会生活志向型の内容が望ましい。一般に学習は必要から意欲的になるものである。この社会生活志向型の高校によって、生徒は学習に意欲を起こし、興味・関心のあることに、じっくりと取り組む高校生活を実現することができる。また、欧米の総合制高校のように、リカレント教育などにより、この高校は成人教育をバックアップすることも可能である。
教育活動の質も向上しているので、小学校と中学校を能率的、有機的に結びつければ、国民教育として必要な教科・科目の学習は中学校までで十分である。品川区のように、区切り方と教育課程を改善することにより、小学校と中学校を発展的に結合し、小中一貫九年制義務教育として国民教育を終了させることが考えられる。
一方、こうすることで高校では教育課程にゆとりが生じ、高等教育の準備や社会生活志向の内容を豊富にして、教育課程を現実の生活に即応した多様なものにすることができる。つまり現行の学校制度に『小中一貫九年制義務教育』を導入することにより、高校を時代の変化に柔軟に対応できる多様な教育課程の『新しい高校』に改革しようというものである。以上のように、わが国の学校教育の現状では、中高一貫教育よりも、小中一貫九年制義務教育を導入して、高校を改革する方が現実的であると思う。
なお、上記と同様な小中一貫教育と高校教育は既にスウェーデンで実施されている。
スウェーデンでは1946年に社会民主労働党によって教育改革が始まり、9年制義務教育が1962年に法制化された。その後、改革が進み1995年には、7歳から16歳(親の希望すれば6歳から)までの9年間を5・4制にして、5年次と9年次のところで学力評価を行っている。9年制義務教育の上には国が定めた17種類のプログラム(建築、電気工学、芸術、手工業、製造業、食品、メディア、社会科学、自然科学、その他)からなる社会生活志向型の3年制後期中等学校(総合制高校)があり、9年制義務教育学校の卒業生の98%が入学している。
かなり以前になるが、ストックホルムとその近郊に滞在して総合制高校を調査したことがある。校舎、施設、設備共に欧米の他の高校に比較して、はるかに優れているという印象を受けた。なお、スウェーデンの学校教育の詳細については、拙著(高校教育改革の決め手:学事出版)を参照されたい。
また、スウェーデンの学校教育の概要は下記のホームページからも入手できる。
Swedish National Agency for Educationのホームページ www.skolverket.se
ストックホルムにあるSwedish Instituteのホームページ www.si.se