中道改革連合の「財源論」はまた埋蔵金の二の舞いか:斉藤代表と岡本政調会長の説明が完全に矛盾
はじめに
本稿は、新党「中道改革連合」の政策的問題点を分析する第三弾である。第一弾では、この新党構想が「創価学会の出口戦略」である可能性を指摘した。第二弾では、野田代表の発言から浮かび上がる「二枚舌」の問題と、新党の構造的欠陥を論じた。
今回取り上げるのは、より根本的な問題——財源論の破綻である。
2026年1月16日放送のBSフジ「プライムニュース」において、斉藤鉄夫代表は新党の目玉政策である消費税減税の財源について説明した。しかし、その内容は公明党の岡本三成政調会長がこれまで説明してきた内容と完全に矛盾している。党の代表と政策責任者の説明が噛み合わないという事態は、この新党の政策がいかに杜撰であるかを如実に示している。
斉藤代表の発言——プライムニュースでの説明
1月16日のプライムニュースで、斉藤代表は財源について次のように述べた。15:30辺りからの発言である。
あのーまさに生活者ファーストということで、物価高にどう対応していくか、あのー私達は消費税の食料品軽減税率を引き下げていきたいと思っています。公約に、今公約の最後の詰めをやっていますがそこに入ってくると思います。
そこで大事なのは財源を示すことです。その財源を私達はあーあの政府系ファンド。今200兆円を超える資産を国が持っている。それをいわば運用することによって財源がでてくる。例えば200兆の内ま5%の運用益とすれば10兆。その10兆のうちの半分を例えば新しい政策に使う。それを例えばそれが消費税の軽減税率を低くすることであったり、例えばですね社会保険料を引き下げることであったり。ま、そういう形でま、えー所謂財政に責任を持った形で新しい政策、生活者を生活を支えていく政策。まこういうイメージです。
なお、番組内で長野キャスターが「ゼロですか」と確認しようとした際、斉藤代表はこれに直接答えなかった。その後、水内キャスターが改めて確認した際に、野田代表が引き取る形で「食品に対する軽減税率を引き下げることには合意しているが、ゼロ税率にするかどうかは現在協議中」と説明している。
岡本政調会長の説明——「2〜3年かかる」「2%程度」
斉藤代表の説明と、公明党でジャパンファンド構想を主導してきた岡本三成政調会長の説明を比較してみよう。
岡本氏は2025年12月の選挙ドットコムのインタビュー、および公明党の公式コンテンツで、ジャパンファンドについて詳細に説明している。
運用資産について、岡本氏は次のように述べている。
日本にいろんな運用が不十分な、もったいなく寝ているお金があるっていう風に申し上げましたが、ぐっと全部集めると多分600兆円から700兆円ぐらいはあるんですね。
運用利回りについては、こう説明している。
500兆円ぐらいのファンドにすると、全部必要なところに払い出した後に、過去25年間ぐらいの分析だと最低でも2%ぐらいはエクストラとして回る。つまり使えるお金が残るっていうのが今の試算なんですね。
そして、最も重要な時間軸について、岡本氏は明確にこう述べた。
実際に始めるには、私の中ではまあ2〜3年はかかるんですね。
矛盾点の整理——同じ党内でなぜここまで違うのか
斉藤代表と岡本政調会長の説明を並べると、矛盾は一目瞭然である。
運用資産額は2.5〜3倍の開きがあり、運用利回りも2.5倍違う。同じ党の代表と政策責任者が、同じ政策について全く異なる数字を語っているのである。
5%運用という「夢物語」
斉藤代表が述べた「5%の運用益」という数字は、現実的だろうか。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2001年度の自主運用開始以降、約24年間で累積収益約180兆円を上げている。これは年平均に換算すると約3.5%程度である。GPIFは世界最大級の機関投資家であり、そのスケールメリットと専門性をもってしても、長期平均で3.5%なのだ。
岡本政調会長自身、「GPIFをほぼコピーする形でいい」「ローリスク・ミドルリターンを狙う」と述べており、5%などという数字は一度も口にしていない。
5%という利回りを安定的に達成しようとすれば、相応のリスクを取る必要がある。それは岡本氏が繰り返し強調してきた「リスクを最小化する中で、安定的な安心できるようなリターン」という方針と真っ向から矛盾する。
最大の問題——ファンドはまだ存在しない
しかし、利回りの数字以上に深刻な問題がある。そもそもジャパンファンドは存在しないのだ。
岡本氏自身が「実際に始めるには2〜3年かかる」と明言している。2026年1月14日付の公明新聞の記事でも、党の検討委員会が「今年の早い時期に党として原案を発表する方針」「超党派の議員連盟の発足もめざす」と報じられている。つまり、原案すらまだ発表されていない段階なのである。
今回の衆院選は1月27日公示、2月8日投開票が有力視されている。仮に中道改革連合が政権を取ったとしても、ジャパンファンドが立ち上がり、運用が軌道に乗り、財源として使えるようになるのは、岡本氏の説明に従えば早くても2028年か2029年である。
では、その間の財源はどうするのか。赤字国債を発行するのか。それならば、斉藤代表が言う「財政に責任を持った形で」という主張は完全に虚偽となる。
「埋蔵金」の再来か、それ以下か
2009年の民主党政権は「埋蔵金」を財源として様々な政策を約束し、政権交代を果たした。しかし、実際には期待されたほどの埋蔵金は存在せず、マニフェストの多くは実現できなかった。「財源の裏付けのない空手形」として、今も批判の対象となっている。
今回のジャパンファンド財源論は、その「埋蔵金」よりもさらに問題がある。
埋蔵金は「存在する」と主張されていた(実際には期待ほどなかったが)。一方、ジャパンファンドは「これから作る」ものであり、しかも党の政策責任者自身が「2〜3年かかる」と認めている。存在しないものを財源として提示し、「財政に責任を持っている」と主張するのは、有権者に対する欺瞞ではないだろうか。
「生活者ファースト」の既視感
斉藤代表と野田代表が繰り返す「生活者ファースト」というスローガンにも、既視感がある。
2009年の民主党のスローガンは「国民の生活が第一」だった。そして小沢一郎氏が2012年に民主党を離党して立ち上げた政党の名前は、まさに「国民の生活が第一」である。その政党がどうなったかは、多くの有権者が記憶しているだろう。
言葉を変えても、中身が伴わなければ同じ結果になる。財源論の杜撰さは、この新党が「生活者ファースト」を本気で実現しようとしているのか、それとも単なる選挙向けのスローガンに過ぎないのか、疑問を抱かせるに十分である。
結論——財源なき公約は国民への背信
中道改革連合は「高市政権との違い」として「財政への責任」を強調している。しかし、その財源論の実態は以下の通りである。
第一に、党の代表と政策責任者の説明が完全に矛盾している。運用資産額も利回りも、全く異なる数字が語られている。
第二に、斉藤代表が述べた「5%運用」は非現実的である。GPIFの長期平均が3.5%程度であることを考えれば、5%は願望に過ぎない。
第三に、そもそもジャパンファンドは存在せず、岡本氏の説明では実現まで2〜3年かかる。今回の選挙の公約の財源としては使えない。
第四に、ファンド実現までの財源をどうするかについて、何の説明もない。
「財政に責任を持った形で」と言いながら、存在しないファンドの非現実的な運用益を財源として提示する。これを「責任ある財源論」と呼ぶことはできない。
有権者は、耳当たりの良いスローガンではなく、その裏付けを厳しく問う必要がある。2009年の「埋蔵金」と同じ轍を踏まないためにも。


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