トランプの日本初訪問:
「なんだこれは」
「日本のメシだと?」
「生魚?」
「ふざけるな」
「オレは生魚なんか一切食わねえ」
「生の魚だぞ。そんなもんエサだろ」
「何度言わせる気だ」
同じ文句を、何度も繰り返す。
その夜は、日本の銀行家たちとの正式な晩餐会の予定だった。
だが料理が出る前に立ち上がり、周囲を見回して言い放つ。
「もういい」
「オレは帰る」
「勝手に謝っとけ」
「オレは付き合わねえ」
そう言って会場を出ていく。
部下は残されたままだ。
翌日。
ようやく口にした“まともな食事”は、マクドナルドのハンバーガーだった。
「……ああ」
「これだ」
「やっぱりオレにはこれしかねえ」
気分が少しだけ持ち直す。
そのまま皇居の庭を歩いていると、唐突に思いつく。
「なあ、日本には皇帝がいるんだろ?」
「呼べ」
「今すぐだ」
「オレが会ってやる」
周囲が慌てて連絡を取る。
しばらくして、返答が戻ってくる。
「恐れ入りますが、当庁ではお名前を存じ上げておりません」
「ご面会をご希望の場合は、所定の書面にてご訪問の目的をお知らせください」
「日程につきましては、最短でも来年の同時期以降となります」
淡々とした、感情の一切ない事務的な回答だった。
「……何だと?」
「オレが誰だかわからないだと?」
「一年後?」
「書類?」
返事は変わらない。
「もういい」
「東京は時間の無駄だ」