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本格的にひとり出版して、一年経ったけどどうよ?——海猫沢めろん・江藤健太郎『ひとり出版流通攻略ガイド』(タコシェ)刊行に寄せて

 こんにちは! 江藤健太郎です。
 わたしは約9ヶ月をかけ、自分で書いた小説『すべてのことばが起こりますように』を、自分で本にして出そうと動いてきました。今まで本を出したことは一切ない。しかし何とか少しずつ進め、版元「プレコ書房」も立ち上げた。そして2025年4月、ついに初小説集『すべてのことばが起こりますように』が完成、出版しました!
 詳しくは、以下のnoteを見てください。数字が全てじゃないのだが、2025年9月、販売数500部突破しました!

 新刊が出ました! その名も『ひとり出版流通攻略ガイド』海猫沢めろんさんと僕で、書き手が自ら本を出版することについて対談しました! 版元は中野の本屋タコシェさん。1300円(税込)超オモロイ!オススメです。


本格的にひとり出版して、一年経ったけどどうよ? 
——海猫沢めろん・江藤健太郎『ひとり出版流通攻略ガイド』(タコシェ)刊行に寄せて

江藤健太郎のあらすじ
小説家であり会社員である江藤健太郎は、約五年の公募生活に見切りをつけ、二〇二五年四月、突然初小説集『すべてのことばが起こりますように』を発表した。ISBNコードを取得しひとり出版レーベル「プレコ書房」を立ち上げ藤原印刷で印刷し、未経験ながら二〇二四年夏より約九ヶ月かけ大変本格的につくった一冊だった。気合いの割に知名度0だが果たして売れるのか!? あれから半年、江藤の「今」は如何に……。

 結論から書くと、わたしは自身の初小説集『すべてのことばが起こりますように』を自らつくり出版してほんとうによかった。何がよかったか? 明らかに思いも寄らぬおもしろいことがやってくるようになったのだ! まずこの本は二二〇〇円という安くない値段ながらしかも何の賞もとっていないワケのわからない男が書いた小説本ながら四月の発売から五五〇冊以上売れた。「売れた」と書くと金儲けじみてくるがそんなことよりも数百人の人がこの本を手にしてくれたということ。中には読んで感想をどこかに書いてくれたりわたしにこっそり教えてくれた人もいたということ。沢山の小説が好きな人に会えたということ。本書に収録された五篇の小説たちがわたしの手を離れてハトの群れみたいに羽ばたいていったということ。その旅に引っ張られてわたしもまた見知らぬところに連れていかれたということ。それらがすべて回り回って「小説」であるということ。わたしは小説を読み続け書き続けるということ。働くということ。愛するということ。動くということ。涙を流すということ。待つということ。生きているということ。やがて死ぬということ。
 いわゆる純文学系の小説の新人賞に出して落ちればハイオワリとしていたときには、想像もつかなかったことがわたしに起こるようになったのだった。だが誰もが知っているようにひとり出版活動には金も時間も手間もかかるし宣伝や営業が大変だったり(わたしは自分の本の宣伝を沢山するタイプだ。腹を括ってそうするようにしている)、辛いことだってままある。だから誰もがこうして自ら本を出せばいいとは思わない。そこは各々が考えてください。といっても、考えるより先に「勘」が発動して動いてしまうのだが。そうした「わたし」をしょうがねえなあと笑いながら追っかけるのもこのわたしなのだが。
 
 そうして起きた思いも寄らないことの一つが、二〇二五年十一月の文学フリマ東京四十一で初売りとなったわたしと小説家の海猫沢めろんさんの対談冊子『ひとり出版流通攻略ガイド』の刊行である。この本に関してはわたしがつくったのではなく、中野ブロードウェイに居を構え三十年以上営業されている本屋「サブカルチャーの聖地」タコシェさんに出版していただいた。編集はライターの碇雪恵さん。装丁はデザイナーの飯村大樹さん。わたしとめろん先生との対談パートの他、ひとり出版社の方々へのインタビュー、本づくりにまつわるコラムなどが収録された盛り沢山の内容。値段もお手頃。手に取りやすい素晴らしい一冊となった。
 え!? どういうこと! なんでタコシェから本が出たんだよ!?
 まさにその通りだ。今でもわたしは夢くさいのだが、出版に至るまでに以下のような経緯があった。確かまだ本ができる前の二月頃わたしは中野ブロードウェイを訪れまんだらけの店内をうろついた挙句ある瞬間意を決して三階のタコシェに入店した。これまでも何度も来たことがあった憧れの店。散々迷った末に畠山丑雄『改元』(石原書房)を購入し、その後店主の中山さんにあのおとわたしが小説を書いていることこれからそれを本格的に本にして出そうとしていることを説明させてもらった。その頃わたしは「すべてのことばが起こりますように」の「試し読み冊子」をよく人に配っていて、まだ本すらできていないのに勇足で営業活動をしていた。レジには後に編集してくださることになる碇さんもいらっしゃった。お忙しいのにお二人はわたしの話をうんうんきいてくれた。わあわあ息巻くわたしは一本釣りされた大間のマグロだ。数ヶ月後、無事『すべてのことばが起こりますように』が出版されると中山さんより連絡がありタコシェで本書を扱っていただくこととなった。感激した。さらに中山さんより再び連絡あり、作家の海猫沢めろんさんがわたしと同時期にご自身で本をつくりISBNコードを取得しひとり出版レーベルを立ち上げ『ディスクロニアの鳩時計』という小説本を出版されたという。その本もまたタコシェで販売している。アマチュア/プロと立場は違えど書き手が自ら本を出した江藤とめろん先生の境遇は似ている。よかったらお二人で対談をしてはみませんか? その後それを冊子にしてタコシェから出すのはいかがでしょうか?
 はい、やらせてください。ありがとうございます!
 即決だった。当たり前か。そして六月、わたしは中山さん碇さんと共に、めろん先生の仕事場に集まり小説を書く・つくる・出す・流通することについて三時間たっぷりと話した。それから五ヶ月をかけて制作が進み『ひとり出版流通攻略ガイド』はできた。わたしは殆ど何もせずゲラに赤字を入れただけだ。制作していただいた御三方には頭が上がらない。「自分で出す」ではない「人が出す」を初めて経験できた。ありがとうございました! この冊子は、タコシェさんの店頭とオンラインはもちろん、江藤も販売するし、注文があれば(多分ある)全国の書店さんでもお求めできるはずだ。書き手自らが本をつくり出版することに関心がある人、ぜひチェックしてみてください。この本参考になるよとかこれくらい金かかったとか大変リアルに話してます。
 
 わたしは自分のひとり出版活動を「書く・つくる・売る」の三つに分けて考えてきた。だが前の一つと後ろの二つはどうも性質が違うようだ。
 まず「つくる・売る」について。こちらは待っているだけではダメなようだ。とにかくどんどん自ら動いていくことが大事だった。本屋への営業、人へのメール、イベントへの参加。大変なんだけど動く。一冊出したら大手出版社から原稿依頼が来たりしてワクワクみたいなスケベ心はダメなのだ。わたしにもそんなことを考えていたときがあった笑 そんな甘いわけない。自分でやっているようで実は人の顔色を窺っていては本末転倒。そんな考えはすぐに捨てた。そうして動くうちに思いも寄らぬことが降ってくる。そのときは計画になくてもそちらに舵を切る。勘で面白そうな方に動く。つまりこの「動く」は能動的にやっているようで都度都度の偶然に身を任せる受動性をその内に孕んでいる。これは『すべてのことばが起こりますように』の解説を書いてもらった科学者の郡司ペギオ幸夫氏のいう「受動的能動」というヤツだと思う。
 次に「書く」について。書こう書こうとするから空回りする。「書く」には何より待つことが大事だ。書きあぐねるとわたしは待つ。待つといっても手を動かして色々な文章を書く。あるいは机から離れて外に出る。そのうちわかってくる。「ああこいつはこういうやつなんだ!」とか「次こうなるんだ。おもれー!」とか。作者でいながらわたしはどこか他人事だ。小説を作者が書いていると思ったら大間違いだ。作者は小説を書かされているのだ。誰に? 編集者に? 神に? まさか。「Nobody」にだ。つまり「不在」に書かされている。これらの話は長くなるので今度また書く。とにかく小説は待つなのだ。しかしぼーっとしながらそれでいて絶えず触覚をビンビンにさせて待つのだ。つまりこの「待つ」はとことん受動的でありながら同時に能動性をその内に秘めている。やはりこれは郡司のいう「能動的受動」だろう。
 つまり、小説の「書く・つくる・売る」には二つの「待つ」——「受動的能動としての待つ」と「能動的受動としての待つ」があるのだ。そして本来相矛盾するはずのこれらを一人の人間が無理やり「書く・つくる・売る」と共立させることでそこにギャップ(空白域)が開き、思いも寄らない「何か」が外部からやってくるのである。お分かりでしょうか? 説明ヘタ! だいぶ飛ばして書いたから、いずれちゃんと書きます!
 
 さて、そんなわたしは来年四月刊行予定の第二小説『人間は絶えず煌めく』の制作の真っ只中にいる。解説もデザインも笑えるくらい良くなりそうだ。そして何より小説自体がおもしろい! 一作目とはまた違う、結婚したばかりの夫婦の話だ。そこにことばを話すぬいぐるみや死神みたいな男たちやその他様々の人が出てくる。怖いけど沢山刷ってお手頃の値段にするつもりだ。ご期待ください! 
 でさ、一年経ったけどどう? 
 あと二十五年はやるから覚悟しとけ!!

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