同じような憂き目に遭っている人に、再起のチャンスを与える存在になりたいと話す

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 芸能界の注目を一身に集めていた2.5次元俳優は、ある日を境に、激しいバッシングの渦中へと突き落とされた。誹謗中傷、挫折、そして「死」を意識した日々。それでも彼が、再び人前に立つことを選んだ理由とは?
◆事実上、芸能界から追放された前山を直撃

前山剛久、改め真叶(まなと)です、今日はよろしくお願いします」

 ショーケースに並ぶシャンパンが煌びやかな、東京・六本木のメンズラウンジ。舞台を中心に若い女性ファンを集め、端正なルックスと甘い声で人気を博していた“2.5次元の王子様”は、今、メンズラウンジのキャストとして再スタートしている。
 
 彼の名が、好意と期待ではなく、嫌悪と怒りを伴って語られるようになったのは2021年冬のことだった。交際していた女優・神田沙也加さん(享年35)との関係が、悲劇的な結末とともに報じられ、やがて二人の間で交わされたとされる音声が週刊誌に掲載された。
 
 切り取られた言葉は瞬く間に拡散し、SNSを中心に激しいバッシングが巻き起こる。公式に「引退」を宣言したわけではないが、前山は事実上、芸能界から追放されたといっていい状況だ。

◆夜職未経験の34歳。20代の先輩に叱られながらトイレ掃除

 報道から5年、34歳となった前山。俳優では中堅の年齢だが、この世界では完全な新人だ。

「本当に右も左もわからない状態です。『アンダー』と呼ばれる立場で、売り上げのないホストはトイレ掃除やグラス拭き、テーブルマナーを叩き込まれる。20代の先輩に注意されながら、毎日やっています」

 全個室で落ち着いた雰囲気のメンズラウンジ。俳優という仕事とスポットライトの当たる角度は、まるで違う。

「俳優のときは“話す側”でしたけど、ここでは完全に“聞く側”です。取材で自分のことを話すことには慣れているんですけど、相手の話を引き出せないと何も始まらない。正直、難しさもありますね」

 キャストになって1か月弱。真叶になった彼を最初に指名したのは、俳優時代からのファンだった。

「ここは最低でも2万円かかる。それって、簡単な金額じゃないじゃないですか。俳優のときは写真集を数冊買ってもらい、握手したりして応援してもらう世界とは重みが違う。本当に嬉しかったですね」

◆留学、エステ経営、スーパーでのバイトを経て、「やはり人前に出たい」

 彼はなぜ、メンズラウンジのキャストになったのか。実は芸能事務所を退所後、前山は韓国に留学し、現地での芸能活動を模索していたが、現実は厳しかった。

「日本の芸能界はアイドルと俳優に差はないけど、向こうは俳優が一番格上。賞の授与式でも、楽屋が与えられているのは俳優だけ。身長も180㎝はなければならない。外国人で、30代で、173㎝の僕がそこに入っていくのは非常に難しいと言われて断念しました」

 帰国後、俳優として舞台の復帰も決まったが、周囲の判断でそれも霧消した。

「『前山が出ると、他のキャストに危険が及ぶ』って言われて。すごくショックでしたけど、反論できなかった。でも、食べていかなきゃならなかったので、スーパーでアルバイトをしました。店長さんは僕のことを知っていたので、品出しなどのバックヤードを任せようとしたんですけど、……やっぱり人前に出たいんですよね。だからレジ打ちをさせてほしいとお願いしました」

 そうした裏方仕事をしてみて、人前に立つほうが向いていると再確認したという。

「エステの経営にも挑戦しました。自分の名前を出さず、接客もスタッフに任せて。でも上手く行かなくて……やっぱり自分を隠しても仕方ないと思いました。そう考えると、自分らしく生きられるのは夜の仕事しかなかった。そう言うと負けたみたいですけど。妹や、友人が夜の世界にいたこともあって、彼らに勧められたのも後押しになりました。ファンの方もお客様として来てくれて。お酒を飲めないのに注文してくれたりして、日々、支えられているなと感じています」