あてんしょん
・読んでからの苦情は受け付けません
・地雷だと思ったらバックしてください
・設定甘いです
・温かい目で読んでいただけると○
ふと、下腹部の鈍痛に目が覚めた。
いつもならばすぐに起きて他の3人を起こしに行くのだが、今日は布団から出たくなかった。
痛い腰をさすりながらなんとか起き上がると、くらりと視界が回り床にへたってしまった。
あちゃー今回貧血やばいぞ、と思いながらなんとか立ち上がった。幸い、今日は学校が休みなので倒れても問題ないだろう。
真っ先に下に降りてトイレに行くとやはり、ゼリー状に固まった黒々とした血がべっとりとついていた。
血を見ると元々痛かった腰とお腹がさらに痛くなるような気さえする。
ああなぜ、女性にはこんなものが存在するのだろうか。こんなものなければもっと楽に過ごせるのに…
重いため息を吐いたあと、ぺちんと頬を叩いて気合いを入れた。
「よし、今日もがんばろ。」
私と三人兄弟はいわゆる幼馴染という関係にある。
私の両親と彼らの保護者(ルフィの実のおじいちゃん)が同じプロジェクトグループで仕事をしていて、今彼らは海外へ出張に行っている。
その出張は5年から7年と長期にわたるもので、私の両親は私が高校生になったということもあり、そのプロジェクトを引き受けた。
そのときに、兄弟の面倒を見ているおじいちゃんに当たる人もプロジェクトに参加。
両親たちの話でちょうどいいから一緒に暮らせば良いという話になったのだ。
もともとルフィたちとは仲が良くて幼馴染だったし、小さい頃はよく遊んでいたので私も特に抵抗なく頷いた。
エースとサボはまあまあ家事ができるので私とその2人でローテーションで回している。そして、今日、よりにもよってこの週に当たってしまったのだった。
当たってしまったからにはしょうがないので取り敢えずこなして行くまでである。
とまあ色々振り返ってる間にスープが出来たのでパンを焼こう。あとは、ベーコンエッグとサラダでいいかな。パンはもちろん全員3枚ずつである。
私を除いてだが。
3人を起こすためにすうっと息を吸った。
「エースーー!!サボーー!!ルフィーー!!起きてーー!!!はやく起きなさーーーい!!!!」
腹式呼吸である。おじいちゃん直伝の。
ドタン!と大きな音がして、それぞれの部屋のドアが開く音がする。
「メーーシーー!!!」
と言いながら降りてくるのはもちろんルフィである。
「おはよ。ご飯もうちょっとでできるから顔洗っといで。」
「おう!わかった!」
その後に続くのは
「ルフィーうるせェー!」と言いながら降りてくるエースである。
で、最後がぽやあという効果音が相応しいであろう顔で寝癖をつけたまま降りてくるサボである。
「おはようサボ。顔洗っておいで?」
「…はよ。」
いつもと変わらない様子にクスクスと笑うと、サボに
「なんか顔色悪くねぇ?」
と言われた。鋭い、流石すぎるわ。
「ええ?そんなことないって!気のせいじゃない?」
と返した。するとサボは「そうか?ならいいけどな。」と言って洗面所に歩いていった。
上手く誤魔化せた…かな、?よかった…観察眼に優れたサボをごまかせた…安心してつい詰めていた息をはき出す。
それも束の間。
全ての内臓を引き絞られるような、押し潰されるような痛みが下腹部に響いた。
突然のことで隠すことはできず、呻いてその場にしゃがみ込んでしまった。
蹲った後に来るのは容赦ない眩暈と寒気。
は、は、と息を吐きながら痛みが収まるのを待っているとリビングの扉が開いて3人が入ってきた。
すると長男2人はギョッとしたような顔をし、ルフィはポカンとした顔で
「あれ?どうしたんだ?床に膝ついて、大丈夫か?」
「あ…うん!なんか床にゴミ落ちてて、それ拾ってただけだよ」
ひやりと汗が背中を伝うのを感じながら言うとルフィはそうなのか!と言って納得してくれたが、2人には胡乱げな目で見られてしまったが、まあ、大丈夫だろう。
「本当に体調とか、大丈夫なのか?」とエースが言うのでうん!なんともない!と繰り返すとそーか?といって歩いていった。
横から無言の圧がかかるのでちら、とサボを見ると
「顔色やっぱり悪いよな?調子悪いんだろ?」
「え、いや?」
そう言うと、訝しげに目を細めながら歩いていった。
…やっば…これバレてるやつじゃね?と思いつつもパンが焼けた音がしたので取りに行った。
3枚のパンがのったお皿を各自の前に置いて、私も席に座る。
「じゃ、いただきます!」
と言うと他の二人もボソッといただきます。と言って食べ始めた。ルフィは自分の前に置かれた瞬間に言って食べ始めている。
ただ、他の二人もボソッというだけだが、いかんせん食べる速度が速い。シュレッダーではないかと思うくらいにパンが消えてゆく。
その様子に苦笑して私もパンを食べ始める。
今日は少し気温が低いのでコーヒーをホットにした。秋は暑い日も肌寒い日もあるから調節が必要だよね。
自分のカップにコーヒーを注いで牛乳をいれ、すする。
おいしい、と思わず口角を上げると向かいにいたエースに笑われた。
「なによ?」
「お前があんまりに美味しそうにコーヒー飲むもんだからさ」と笑って、またパンを食べ始めた。
…笑顔が眩しいよ、私には。
パンと一緒に食べているとすぐなくなるよね。
「お前さあーもうちょっと食べろよお!そんなんじゃ足りなくねえかー?」とルフィにいわれた。私はパン半分がいつもの量である。
「そんなことないよ、ルフィたちが食べすぎなの!私は至って標準だから!」
「あ?そうなのか?まあなんでもいいけどよ!」
と返ってきた。
黙々と食事を進め、3杯目のコーヒーに手を伸ばそうとすると、横から手が伸びてきて最後の一杯を取られてしまった。思わずあっと声をあげるとサボが「もーらい」と笑った。
少し残念に思いながら食器の片付けともう一度コーヒーを淹れるために少し勢いよく立った。するとサアッと目の前が暗くなって、あ、と思ったときには遅かった。平衡感覚がなくなったことでふらりと体が傾き、打ち付けられる覚悟で固く目をつぶると床につく寸前でサボに抱き止められた。
「っぶね……っおい、大丈夫か?」
あーあバレちゃう。流石に言い逃れできないよねぇ…
奥の二人もがたんと大きな音を立てて立ち、こちら側へ回ってきた。
「あー大丈夫。ただの貧血だし心配しないで。ちょっと寝不足なんだよ多分、気をつけるね!」(嘘は言っていない)と言って立とうとするとエースに肩を少し強く肩を掴まれ、立つことを阻まれる。
「誤魔化せると思ってんのか?オレたちのこと舐めすぎじゃねぇ?」
と言ったエースの顔はすこし怒りが混ざった呆れのような顔をしており、一方それに頷くサボを見遣るとサボは腕を組み冷笑を浮かべていた。
「えっいや、あの、これは本当に貧血で、」
流石にばれてしまったかと弁明の言葉を口にするが、また鈍痛が下腹部に響き反射的に身体を縮めて呻いてしまう。
「おい、大丈夫か?どこが痛い?」とエースに言われたが、素直にお腹が痛いと言ったところで勘違いするのが目に見えている。
ちら、とサボの方に視線を遣るとひんやりした笑顔のまま
「どこがどんな理由で痛いのか、言ってみろ。」と言われた
おもわず
「え、?いや、だ…」
「ほお?ならこのままの体制で一日中居ようか。」
「ぁ、いや!はなす!話すから!」
どう説明しようかと黙り込んでいると
サボは大体の見当がついているのだろう、エースやルフィほど心配そうな顔ではない。
「あの、2人は生理ってわか、る?」
「そんぐらいわかるわ、バカにしてんのか?」
「そうだぞ!そのくらい知ってる!」
「そっか、それなんだよね、今日からなんだけど、」
「そうだったのか。お前は、どんな症状が出るんだ?」
「私の場合は腹痛と、寒気、貧血、腰痛、頭痛あとは、酷いと痛みで意識失う。貧血はちょっと量多くて、それで、痛くて、……」
こんなことで三人に迷惑をかけている、と思うと涙が出てきてしまい、慌てて止めようとするがポロポロと出るそれは止まらず、むしろひどくなっていった。
「…話してくれてありがとうな」とサボが少しぎこちないながらも背中を優しく撫でてくれた。
その仕草に、つい涙が止まらなくなり堪えきれない嗚咽が零れる。
「っ…、…」
こんな姿、泣いてるとこなんて、見られたくないのに、強くない私なんて見られたくないのに、そういう悔しさからも涙が溢れて来てしまう。
「みない、で……」
「おう、見てねえ。」
優しいエースの声にまた、涙が零れる。
サボの肩口に顔をうめて泣きつづけていると、段々と気持ちが落ち着いて来た。涙を拭って顔を上げゆっくりと立とうとすると、ひょいと軽々しく抱き上げられた。
「ぇ?!」とおもわず声をあげるとサボの顔がすぐ近くにあってイタズラそうに微笑んでいた。
「いいって、自分で歩ける!ねえ!降ろして!」
と言うと、横からエースに甘えとけよ、こういう時くらい。と言われてしまった。
そこまで言われるとさすがに降りようとする気も失せ、力を抜いてくた、と肩に頭を預けた。
「ん、よし、じゃあお前の部屋行くか。今日は一日寝てろ。」とサボが言う。
すると後ろからエースとルフィが
「「オレも抱っこしてえ!!」」と言った。
えぇ…と小さく声を上げた私は諦めた。
既に二人がじゃんけんを初めていたからである。
「いいって、重いし、やっぱり自分で歩くから、ね?」
は?何言ってんだこいつという目で3人に見つめられる。視線が痛い。
「えっ、あの、私が歩くという選択肢はどこへ、、」
たった階段を登って数歩歩くだけなのに、と思いそういうと、今度はあ??と3人に凄まれる。
もう何も言わない方がいいと判断した私はじゃんけんによって決められたエースに抱っこしてもらうことになってしまった。
「…落とすなよ」
少し不満げにサボがそう言った。
「おーもちろんだ。」と言いながら受け取ったのはエース。何がしたいんだ本当にもう。
「じゃ、部屋行くぞ。」
「うん。ごめん、重いでしょう?」
「はあ?これのどこが重いんだよ。もうちょっとしっかり食べてくれよ。体温も低いし。」
「軽くはないんだけどなぁ私も」
だって背はそこそこあるしね?
階段を上がり、突き当たりの私の部屋のドアを開けると、エースは私をベッドに降ろした。
「ほんと無理すんなよ?また起きて来たらベッドに突っ込むからな?」
「善処します…」
「ココア作って来たぞー」
「おう、サボ。気が利くなあお前は!」
「だろ?なあ、さっきコーヒー横取りしたのなんでかわかるか?」
「…え?なんで?」
「カフェイン。生理中に摂ると症状が酷くなるんだ。」
「はあっ?じゃあなんであんなに飲んでたんだよ!お前知ってたのか?」
「いや、初耳ですね。」
「なんでサボが知っててお前が知らねーんだよ!もっと体大事にしろって!」
「うん。今度から気をつけるね。」
「じゃあ大人しく寝てろよ?下にいるから何かあったらすぐ呼べ。いいな?」
「うん…わかった。」
寂しい、一緒にいて欲しい……でも迷惑だよね。
そう思ったのに自分の身体は素直なようで、気付けばサボの袖を掴んでいた。
「あっいや、これは、身体が勝手に…」
呆れられるだろうか。こんな年にもなって寂しいなんて。
目を瞬かせていたサボは大きなため息をはいて床に座り込んだ。
「どうしようエース、オレたちの妹がこんなにも可愛いんだけど、」
「あー全く同意見だ。どうしようもねえ。」
「え……ん?…面倒だって思わないの……?」
「寂しいんだろ?寂しいんだったらちゃんと言えよ、な?」
「や、だって面倒くさいだろうなって思ったし、」
「は?面倒なわけないだろ!馬鹿か!」
「そこまで言わなくても良くない?」
ずっと考え込んでいたサボが顔を上げた。
「あ、オレここで勉強するわ。そしたら寂しくねえよな?あと、お前はもっと甘えていい。なあ?エース。」
「当たり前だ。お前はもっと甘えていい!」
「私は結構甘えてると思うけど…」
「これで甘えてるって言うならお前甘え下手にも程があると思うけどなァ?そう思わねえ?サボ」
「エースの言う通りだよ、ルフィ見てみろよ、甘えとか何も気にしてねえだろ?だからお前も甘えていいんだよ。」
「でも、めんどくさくない?」
「面倒なわけねぇだろ?」
「…そっか!…ありがとう2人とも。」
「エースー!!サーボー!!いつになったら降りてくんだあ!?」
「あ、ルフィ忘れてた。」
「ルフィー!今日はオレたちゲーム出来ねえ!この寂しがり屋の隣で勉強するわ!!」
「や、寂しがり屋ですけどね?恥ずかしいよ?」
「けど?事実だろ?」
とサボがニヤリと笑った。
「え、いや、…はい」
「ははっ事実だろ!」
と笑うエース。
ああ、もう寂しくなんかない。だってこんなにも温かいんだもの。
お腹は痛いし、寒気もするけど、これだったら乗り越えられる。安心したのか、瞼が重くなって来た。
「眠いか?寝ていいぞ、ずっと横にいるから。な?」
「うん……ありがと…」
「明日も明後日もずっと甘えていいから。安心しておやすみ。」
「ん。おやすみなさ…ぃ」
すうっと意識が落ちて行った。
明日も明後日も甘えろなんて、嬉しい。
Comments
- ツバキOctober 17, 2022