山田家長女は兄と弟に甘やかされる 前編
やってしまいました。二郎ちゃん女の子ネタ。
しかも生理ネタ。
あてんしょん!!!
・じろちゃん女体化(先天性・一人称『俺』)
・吐き気(嘔吐表現なし!)
・体調不良
・生理
苦手な方はUターンねがいます!!!!
【二郎ちゃん♀がめちゃくちゃ重い生理痛に襲われちゃうお話】です。前編と後編に別れます!
2021.07.23追記
申し訳ありません、中編が出来ました。こちらの作品、中編(novel/15659576)に続きます( ˊᵕˋ ;)
──────────
おはブクロ〜!!!
初めましての方もそうでない方もこんにちは!
拙作に興味を持ってくださった皆様方!!!
本当に!!!ありがとうございます!!!
誤字脱字等ありましたら申し訳ありません、温かい目で読んでやって頂けますと嬉しい限りです(*´꒳`*)
さて、今回のお話は!!
生理痛で撃沈してるじろちゃんを、一兄とさぶちゃんで気遣って、甘やかして欲しいなって。
相変わらず私の書くじろちゃんは女の子でも我慢したがりさんなので、やっぱり無理しちゃうんですよね。
そんで兄弟に
「もう本当、こいつ、馬鹿だな」
と愛されるわけです。(?)作者の性癖です。
ところでさぶちゃんが一兄に話しかけるときって、敬語とタメ口混ざってるけど何が正解なの?気分なの?難しいわ!私の気分で喋らせちゃうぞ!!!!
正直女の子、ってだけで二郎ちゃんの口調も柔らかくしちゃうから台詞の修正修正修正…えーい!!!好きにしてやんぜ!!!何故なら私は二次創作者!!!私が書く文章が全て!!!(前回もこんなことキャプションに書いたな)
一応!愛されじろちゃん♀なので
いちじろ♀ さぶじろ♀つけてます。
こんなん違う!!!という方いらっしゃいましたらすみません。
寛大な心で読んで頂けますと幸いでございます。
- 675
- 769
- 13,870
それは、月に一度訪れる。
山田家の長女、山田二郎は腹部の鈍痛で目が覚めると同時、激しい頭痛と吐き気に襲われた。
「う、っ」
上半身を起こせば酷くなる痛みと、みぞおちから迫り上がる不快感。
そして何より決定的な感覚──下半身が、どろっとしたもので濡れている。
……最悪だ。
山田3兄妹の真ん中に生まれた山田家長女、山田二郎。2つ上の兄は優しく、可愛いがられて育った。3つ下の弟とはよく喧嘩をするが、本当は優しい少年で兄姉想いであることを知っている。
兄弟に挟まれて育ち、守られてばかりではいられないと自身を鍛え上げ、そこらの男程度であれば、丸腰でも倒すことさえ可能な二郎。流石に力では敵わないので、技で倒す方法を身につけた。
故に、兄弟に引け目を感じる事はあれど、【女】という性を持って生まれたことを恨んだことはない。
化粧や服で着飾るのは楽しいし、女であるからといって遠慮なんてしない。喧嘩もラップも全力で挑むのみだ。むしろ相手が舐めてかかってくるため、油断してくれるなんてラッキー!くらいに思っている。
だが、そんな二郎がただひとつ抗えないもの。唯一、自身が女性であることを疎むとするなら。
毎月くるこの現象だけは、どうにもならない。
──所謂、生理である。
恐る恐る布団を捲ると案の定、シーツには赤いシミが着いていた。
今すぐ身体を起こして始末をしなければならない。血液は放っておけばおくだけ落ちにくくなるのだ。何より、早く下着を取り替えなければ更なる大惨事になる。
普段から全く痛みがない訳ではなく薬を飲むこともあるが、こんなにも痛みが重く、吐き気が酷いのは初めてだ。正直、今すぐにでも横になりたい。だが、後のことを思えば今動くしかないのである。
重い体に鞭を打って立ち上がると、身体の奥から血液がどろっと溢れ出る感覚がした。
──早くしないと。
そう思いつつも体は言う事を聞いてくれない。のろのろとシーツを剥がす。
よかった、シーツの下までは染みていなかった。
ほっと一安心も束の間、未だ続く鈍く重い痛みに顔を歪める。シーツに染みるほどならば、腰の方まで汚れているかもしれない。一度シャワーを浴びたほうが早い、と判断した二郎は、替えの服と、剥がしたシーツを丸めて抱き、重い身体を引きずって風呂場に向かった。
──────────
「三郎、飯できたから二郎起こしてきてくれるか?」
「分かりました!」
山田家次男、三郎は3つ上の姉を起こすべく部屋に向かった。
あんなゴリラ女でも、一応女性なのでノックをする。
「二郎、起きてるかー?」
返事はない。まだ寝ているのだろうか。
血気盛ん、喧嘩上等がスタンスのゴリラのような姉だが、実は低血圧らしい。二郎は朝に弱く、起きていてもぼーっとしていてベッドに潜っていることが多い。
そのため、三郎はほぼ毎朝二郎を起こしに行っていると言っても過言ではない。
しかし、普段は声をかければ『んー』とか『おー』とか適当な返事が返ってきて、のそのそとベッドから起き上がってくる二郎。
今日は休日のため学校に遅刻する心配はないのだが、萬屋の仕事はほぼ年中無休。休日も普段通り起きて、依頼があれば萬屋の仕事を手伝うのが常だ。
何より、折角作ってくれた一兄の朝食を無駄にするわけにはいかない。
「二郎、入るぞ」
扉を開けると、ベッドの上で二郎が丸まって──いなかった。
羽毛布団だけがベッドの足元の方で丸まり、シーツが剥がされたマットレスが目に入った。
その光景を見て頭に【?】を浮かべて廊下で立ち尽くしていると
「あ…三郎、おはよう」
背後から二郎の声がした。
「二郎、起きてたのか。起きてたならさっさ…と、」
言いながら声の方を振り返れば自身の目線から少し低い位置に、肩にタオルをかけた二郎が立っていた。
その顔を見て、今や意識せずとも口を突いて出る小言を飲み込んだ。──二郎の顔色が、悪すぎる。
二郎は元々肌が白い方だが、三郎の目に映る彼女の顔色は蒼白。一目見てわかる程、血の気の欠片もない。
そして剥がされたシーツ。昨晩とは違う寝巻きの姉。
「三郎?」
はっとして答える。
「あ、ああ。おはよう、珍しいこともあるんだな。二郎が起きてるなんて」
「うん、ちょっと布団汚しちゃって。シャワー浴びて、洗濯機回してた」
──大体察しはついた。
毎月二郎に訪れる、女性限定のそれ。ときどき、寝ている間にきてしまい布団まで血液が漏れてしまうことがある、と以前にも朝から洗濯機を回していた二郎が言っていた。
ひとまず扉から退き、二郎に部屋へ入るよう促す。三郎は自分より少し低いその華奢な背中を追い、後ろ手で扉を閉め
「顔色…すごい悪いけど、休んだ方がいいんじゃないの?」
「ちょっと貧血気味なだけだよ。大丈夫、ありがと」
「…そ」
タオルを畳みながら答える二郎。
毎月大変なんだな、と男の三郎はその辛さも面倒さも分からないながら、二郎を見ていて思う。それより─
「ねぇ、その格好なんとかしなよ。いくら最近暑くなってきたとはいえ、いま冷やしちゃまずいだろ」
女性は身体を冷やしてはいけない、特に生理中は。いつだったか二郎が生理痛で撃沈していた際に一郎と二人で慌てて、どうにかできないものかとネットで検索して得た知識だ。それなのに。
二郎はショートパンツにタンクトップという何ともラフな格好をしている。
「適当にその辺の服引っ掴んで持っていったから…。上から何か着るよ」
そう言ってクローゼットを漁り始める二郎。
以前から思っていたがいくら兄弟とはいえ、年頃の娘が年頃の兄と弟がいる家で、肌を曝け出すのはいかがなものか。
三郎は、最近一郎がそのことを二郎に伝えるべきか頭を悩ませているのを知っている。
女性にしては背の高い二郎から伸びる脚は程よく筋肉がつき、すらっと長い。細い腰に、締まったくびれ。華奢な背中に長い首。
そして──何食ったらそうなるんだ、と言いたくなるほどたわわに実った果実が二つ。
タチが悪いのは、二郎が自身のスタイルの良すぎる豊満ボディに無自覚なことだ。
ほら、今も谷間見えてるし。
ふと視界に入れてしまったことに若干の罪悪感を感じつつため息を吐いた。そのうちに、上からパーカーを着たらしい二郎を見て当初の用事を忘れていたことに気がついた。
つーか上だけじゃなくて脚も仕舞えよ。
喉元まで出かかった言葉を堪え
「一兄が、朝ごはんできたって」
そう言うと、二郎の下がり眉がより一層下がった気がした。が、すぐに元の表情に戻り
「そっか、それで起こしにきてくれたんだな。あー…、」
何かを言い淀む二郎。
その顔は、変わらず蒼白い。二郎は貧血ぎみ、と言っていたが、【ぎみ】どころかがっつり貧血なのではないか。もしくは生理痛、と言うらしい痛みが酷いのかもしれない。吐き気などで食欲がなくなることもあるとネットに書いてあったのを思い出す。
二郎の生理に伴う体調不良には波がある。普段と同じように元気にしていることもあれば、動けなくなるほどではないものの、頭や腰、腹の痛みがあるようで薬を飲んで凌いでいるところを度々見かける。
今回は後者のような気がする。それでも二郎が、一郎が作った飯を残したり食べなかったことはないので、普段のそれよりも酷いのかもしれない。
だが、この低脳のことだ。例え三郎の予想通り、食欲がなくなるほど体調が悪いのだとしても兄弟に心配をかけないよう葛藤しているのだろう。
だから、ど直球に聞いてみた。
「ないのかよ、食欲」
すると二郎は少し驚いて、眉を下げ
「…うん」
やっぱり。
「とりあえず一兄に言っとくよ。シーツ洗濯してるんだろ。僕のベッドで良ければ貸すから寝てれば」
そう言って二郎の部屋を出て行こうとすると
「ごめん、ありがとう。でも待って、とりあえず俺も下行く」
「…大丈夫かよ」
「うん、動けない程じゃないし。折角作ってくれたのに悪いから、兄ちゃんに自分で言う」
体調が悪いのなら大人しく寝ていればいいのに。一郎もそんなことで怒る男ではないことを二郎も分かっているはずなのに、変なところで律儀な姉だ。
こうして、二郎と三郎は二人でリビングに向かった。
──────────
冷たい汗が二郎の背筋を伝う。体の底から冷え切ったような感覚。
階段を一歩、踏みしめるたびに脂汗が噴き出し、下腹部が渦巻く。
なんとか、階段を降りきってリビングにたどり着いた。三郎が扉を開け、その後ろに続く。
「一兄、二郎呼んできましたよ」
「おう、さんきゅな三郎。おはよう、二郎」
そう言うと、一郎はすぐにキッチンに向き直って朝食の盛り付けを再開した。
その背に、
「お、おはよう兄ちゃん。あの、朝ごはん、なんだけど…」
さて、どう伝えようか。
今日は依頼入ってたっけ。入っていたとしても、この体調では手伝える気がしない。少しでも、役に立ちたいのに。謝らなきゃ。ごはんも、折角作ってくれたのに。食べたいけど、食べたくない。
「二郎?」
言い淀む二郎を不思議に思った一郎が振り返り、二郎の顔を見るや否や表情を変えた。
「…ってお前、顔色悪りぃな」
三郎も見兼ねたらしい。
「おい二郎、やっぱり部屋に戻って──」
が、その言葉は二郎に届かない。
どう言葉にしたらいいのだろう。兄ちゃんに心配をかけないように、できるだけ笑顔で。伝えたくない。でも、言わなきゃ。でも──
やっぱり、三郎に頼めば良かったかもしれない。
お腹痛い。頭も痛い。言わなきゃ。思考がぐるぐる回って気持ち悪い。あれ、元から気持ち悪かったんだっけ。──あ、
「っ、う」
二郎は込み上げる吐き気を抑えるように口元に手を当て、リビングを飛び出そうとして、その場に崩れ落ちた。
「「二郎!!」」
すぐに一郎と三郎が駆け寄る。
「三郎、袋!」
「はい!!」
三郎が持ってきた袋を目の前に広げ、
「二郎、吐けそうならここに吐いていいから」
「っ、っうぇ、え」
吐き気が襲ってくるのに、出てくるのはえずきだけ。
目の前が暗い。身体に力が入らない。頬を伝うのは涙か、脂汗か、どちらもか。
痛い、気持ち悪い、痛い、寒い、痛い、しんどい、痛い…
そのまま腹を抱えて丸まった。
背をさする兄ちゃんの手が温かい。
「二郎、吐けそうか?」
ふるふる、と本当に少しだけ、動いたかも分からない程度に首を振る。
「立てるか?」
また、首を振る。
「どっか痛いのか」
「…おなかと、あたま」
「あぁ、生理か」
「…ん」
あぁ、自分で言わなきゃいけなかったのに。兄ちゃんに気を遣わせてしまった。
「薬は?」
「あれ、なにかたべないと、いがあれる…」
「あー、鎮痛剤だもんな、そっか。でも、飲んだ方がまだしんどくないだろ。スープくらいならいけるか?」
また、小さく首を振る。
「…だよなぁ。よし!三郎、二郎ベッドに運ぶから、手伝ってくれるか?」
「はい!……あ」
「どうした?」
「二郎、寝てる間になってたらしくて。シャワー浴びて洗濯機回してたみたいで、今…」
二郎のベッドはシーツがかかっていない。
「僕の部屋に運びましょう。一兄は依頼がありますし、僕は依頼のお手伝いを部屋のPCでやるので、二郎の様子も見ていられます」
「そうだな、頼む。ありがとな」
「いえ。このくらい、なんてことないです」
「ごめ、さぶろ…」
「謝んな、ばかじろー」
謝らないと、気が済まない。謝っても、気が済まない。ごめんな、情けない姉ちゃんで。弟にまで迷惑かける姉ちゃんで。…兄ちゃんだったら、こんなことにはならなかったのにな。
情緒まで不安定になっている。生理のせいだ。それが分かっていても二郎のネガティブな思考は止まらない。
身体は使い物にならないし、心まで不安定。
自分が情けなさすぎて、涙が溢れた。
フローリングに、ぽたぽたと大粒の涙が落ちる。
「うわ、じ、二郎!?何泣いてんだよ!!そんなにしんどいのかよ!?」
三郎はたじろぎつつ、自分の服が濡れるのも構わず次々と溢れる二郎の涙を袖で優しく拭う。
「泣くほどしんどいなら無理するなよ…」
ごめん。ごめんな、三郎。違うんだ、俺が、俺が…はは、どっかのリーマンみてぇ…
そんなことを思いつつも涙は止まらない。
三郎に続くように一郎も、
「二郎、辛いよな。分かってやれなくてごめんな」
違うよ兄ちゃん。分からなくて当然だ。俺が、女じゃなかったら、
「ひとまずそのままだと身体冷えるから。ベッド行こう。な?」
返事をしたいが、貧血、激痛、吐き気とすでに限界を迎え、思考も回らない二郎の身体は、その持ち主の意思を汲み取ってはくれない。
ごめん、兄ちゃん。面倒かけて、心配かけて。
ごめん、三郎。お前の言う通り、ベッド借りて寝といたらよかったな。
二人とも、迷惑かけて、ごめん……
二郎はそこで、意識を手放した。
──────────
「「二郎!!」」
プツン、と糸が切れかのように二郎が床に沈みこんだ。二郎が床に額をぶつける前になんとか三郎が抱き止めたが、彼女はピクリとも動かない。
「二郎?…二郎!」
二郎は頬に涙の跡を残したまま目を開かず、浅い呼吸を繰り返している。
「寝てる…?」
「…気絶だな。三郎、二郎受け止めてくれてありがとな。…気絶するくらいだ、相当辛かったんだろ」
一郎は、二郎の蒼白い額を苦しげに見つめると深くため息を吐いて
「二郎寝かせたいし、ベッド、借りるな」
「は、はい!もちろん…」
ぐったりしてしまった二郎の背と膝の裏に手を差し込み、一郎はその華奢な身体を抱き上げた。所謂お姫様抱っこである。
「脚まで冷え切ってんな。三郎、ジャージとか持ってねぇか?」
両の手が塞がった一郎に代わり、三郎が廊下への扉を開けると背から声がかかった。
「二郎も持ってたと思うんだが、流石に妹のクローゼットを漁るのはな…」
確かに。三郎もいくら普段洗濯物を一緒にしているとは言え、姉のクローゼットを漁るのは気が引ける。
「それにこいつの、細身のスウェットだろ。締め付けない方が絶対いいよな。俺のじゃデカすぎるし、三郎のやつだったら二郎も履けるだろ」
二郎はラインが出るパンツを好んで履くため、スウェットも細身の、ぴっちりしたものしか持っていないのだ。
かと言って筋骨隆々、一郎のスウェットでは幅がありすぎて腰も腿もずり落ちるのが目に見えている。
その点、二郎と三郎では身長差も体格差もあるが三郎も細身であるし、自分のものよりはマシだろう、と一郎は考えた。
「スウェットパンツがあります。二郎のやつ、下に降りる前タンクトップとショートパンツしか着てなかったんですよ。冷やすから何か着ろって言ったら上しか着ないし。…もう少し自覚して欲しいよ」
二郎の意識がないのをいいことに愚痴を溢す…というよりも。重い空気を少しでも変えようとちゃかして言うと、一郎は苦い顔をして笑った。
「…お前も大変だな」
「…一兄ほどじゃないですけど」
「ははっ、違ぇねえ」
一郎のことが大好きな二郎は、勝手に風呂上がりに一郎のシャツ1枚で出てきたりする。
最近オーバーサイズなるファッションが流行っているらしく、三郎の服を勝手に借りて後に怒られることもしばしば。
だが、寝巻きにするのは一郎のシャツやパーカーだけなのだ。本人曰く、一郎のサイズは1枚で着るのに丁度いいらしい。
側から見れば、彼シャツのような状態。幅広の首元から覗く細い肩、裾から伸びる細くて長い脚。
これが、ヲタクである一郎にクリティカルヒットする。いかんせん、可愛い。もう一度言う。可愛い。
好いてくれているのも、自身の服を着てくれるのも嬉しいのだが、二郎は妹。故に、辞めて欲しいし辞めて欲しくないのである。
そんな一郎の葛藤もつゆ知らず腕の中でぐったりしている妹に意識を戻せば、三郎の部屋に着いた。
部屋は、前もって三郎が高めの温度設定で冷房が効くようエアコンをスマホで起動させていたため、暑くも寒くもない温度になっていた。流石、気の利く弟である。
一郎は、ベッドに二郎をそっと寝かせる。
「一兄これ…どうしましょう」
三郎の腕にはジャージ、もといスウェットパンツ。
今二郎が履いているショートパンツの上から履かせるにしても、十分な大きさではあるが…少々罪悪感と抵抗がある。
「「二郎が起きてからにすっか(しましょうか)…」」
ひとまず、冷えている脚と、腹も温められるように、と布団の他にブランケットをかけておくことにした。
一郎は、二郎がしばらく目を覚まさなかったときの事を考慮し、厚手のバスタオルを折り畳んで二郎の腰の下あたりに敷いた。
起きずにまた布団を、しかも弟の布団を汚したら、ああ見えて変なところで繊細な妹(一郎は無自覚だが二郎に失礼である)は罪悪感で再起不能になるかもしれない。
一方で三郎は二郎のスマホを取りに行き、ベッドで眠る二郎の側に置いた。
部屋に誰もいない間に二郎が起きて、何かあった場合にすぐに連絡できるようにしておく。
こいつ、昨日スマホ使ってて寝落ちしたな。
寝落ちてケーブルをつなげるのを忘れたのだろう、電池残量23%の二郎のスマホを充電しながら三郎がそう思ったところで、ぎゅう、と腹が鳴った。
「はは、朝メシまだだったもんな。二郎も寝かせたし、とりあえずメシ食うか」
「は、はい!」
一郎と三郎は盛り付け途中のまま置かれていた朝食の準備を再開し、ダイニングテーブルに並べた。
二郎の分はラップをして、冷蔵庫に入れておく。
食卓につき
「「いただきます」」
と食事を始めるが、二人とも考えているのは長女のこと。
「あんなに酷い状態の二郎は、初めてですね…」
「だな。先月は大丈夫そうだったんだけどなぁ…。二郎のやつ、迷惑かけるってすぐ無理するからな」
「本当に。全然迷惑じゃないのに…」
「むしろ普段から頼って欲しいくらいなんだけどな」
二郎は、兄弟に迷惑をかけることを極端に嫌う。一郎と三郎が迷惑だと思っていなかったとしても、兄弟の手を煩わせることを【迷惑】だと思い込んでいる。
そのため大抵のことは一人でこなしてしまうのだ。依頼や家事でも活躍し、二郎の存在によって助かっていることは多々ある。
ふと思った。
───二郎から兄弟を頼ってきたことはあっただろうか。
何にしても、こちらから申し出れば断られることは殆どないが、その提案を受け入れる二郎は困り眉をさらに下げて『ごめん、ありがとう』と言う。
だが、一郎と三郎はそれほど深く考えていなかった。また迷惑をかけると思ってるんだろうな、そんなことないのに。と、軽く考えていた。
脳裏に、大粒の涙を溢しながら意識を失った二郎の姿が浮かぶ。
『泣くほどしんどいなら無理するなよ…』
『二郎、辛いよな。分かってやれなくてごめんな』
痛みで泣いているのだと思ったが、普段から喧嘩で怪我をしたりと(兄弟してはなんとも言えない気持ちになるが)痛みにはある程度強いはずの二郎だ。
そんな二郎が、痛みが辛くてあんなにも大粒の涙を溢すだろうか。何か別の理由があるとしたら──
『ごめん、ありがとう』
いつも謝罪の言葉が先に来る。その意味とは。
はっとした表情で、一郎と三郎の視線が交差する。
流石兄弟、と言うべきか思考は同じだったらしい。
兄弟に頼ることが、迷惑をかけることが、どれだけ二郎の心に突き刺さるかなんて、考えたこともなかった。
「一兄…」
「ああ、三郎…」
気がついた瞬間、一郎と三郎は今まで二郎の存在に、強さに甘えてきたことを悔やんだ。
喧嘩もラップもする血の気の多い山田家長女だが、まだ17歳の女の子なのだ。
───今更、何かあってから気がつくなんて。
頼ることは迷惑にならないのだと、二郎に理解して貰うしかない。そんなことで泣く必要はないのだと、むしろもっと頼るべきだと、気がついて貰うしかない。
その為には何をするべきか───
「「甘やかそう、嫌になるくらい」」
中編につづく