第62回【詳報】山上被告に無期懲役判決 意思決定に生い立ち影響「いえず」

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 安倍晋三元首相銃撃事件で殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)に21日、奈良地裁は求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました。法廷内外の様子をタイムラインで詳報します。

記事のポイント

・裁判員の感想
・判決受け昭恵さんがコメント
・鈴木エイトさんの話
・判決理由と山上被告の様子は
・旧統一教会の信者は

16:20被害者が安倍元首相 裁判員「切り離して考えた」

 裁判員3人と補充裁判員2人の計5人が判決後、記者会見に参加し、公判を終えての感想を語った。

 40代の男性会社員は事件の被害者が元首相であることについて、「大きい事件だなと思ったが、そこを考えると判断を間違えてしまいそうな気がしたので、切り離して考えるようにした」という。

 山上被告については「非常に頭の良い人物。宗教2世として不遇な人生を送っていた。そういう境遇でなければ、持ち前の頭の良さで大成されていたのかなと思う」と残念がった。

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安倍晋三元首相銃撃事件裁判の判決公判を終え、会見する裁判員ら=2026年1月21日午後4時39分、奈良市、大山貴世撮影

16:15判決後の被告の様子「いつもと変わらず」

 山上被告の弁護人2人は記者会見で、判決後に接見した際の山上被告の様子を明かした。「特にいつもと変わった様子はなかった」という。

 藤本卓司弁護士は「判決は統一教会が家庭に及ぼした影響について、遠因であることは認めたが、直接結びつくものではないという検察側の主張を認めた」とし、「当然、控訴を検討していかなければならないと思う」と語った。

 公判では、山上被告の母親や妹のほか、宗教学者や霊感商法対策に取り組む弁護士などを証人として呼んだ。

 藤本弁護士は「被告の、未成年から続く不幸を明らかにせずして、犯行動機を明らかにはできない」と話し、比較的長い時間をかけて証人尋問に取り組んだと説明した。

 事件をきっかけに注目された宗教2世問題。藤本弁護士は「宗教2世が置かれている状況を明らかにするために、専門家の証言を聞かなければならなかった」と話した。

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判決後会見する藤本卓司弁護士(左)と松本恒平弁護士=2026年1月21日午後4時5分、奈良市、伊藤進之介撮影

16:00「政府としてコメント、差し控える」

 木原稔官房長官は会見で判決への受け止めを問われ、「個別事件における裁判所の判断について、政府としてコメントすることは差し控える」と答えた。

 一方、安倍氏銃撃事件が選挙の遊説中に起きたことについては、「選挙は民主主義の根幹であり、暴力に屈することがあってはならず、遊説が暴力により妨げられることのないようにすることが必要だ」と述べた。

 また、警察官が警護をしている最中に要人が殺害された事件であることを踏まえ、「警護における警察庁の関与を強化し、全国警察の警護体制の拡充や質の向上、警護対象者と聴衆の安全を確保するための取り組みを進めてきた」とし、27日に公示される衆院選でも「安全を確保するための取り組みを進めていくことが重要だ」と語った。

16:00弁護側「主張が認められず遺憾」

 山上被告の弁護人は会見を開き、「弁護人の主張が認められなかったのは遺憾である。控訴するかどうかについては被告人と協議のうえ判断する」とコメントした。

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判決に臨む山上徹也被告の弁護人=2026年1月21日、奈良地裁、代表撮影

15:35次席検事「主張が認められた」

 判決言い渡し後、奈良地検の大前裕之次席検事は判決について「事実認定および量刑いずれについても、検察官の主張が認められたものと考えています」とコメントした。

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山上徹也被告の判決に臨む検察官=2026年1月21日、奈良地裁、代表撮影

15:10昭恵さんがコメント

 山上被告に無期懲役の有罪判決が出たことを受け、安倍氏の妻、昭恵さんが代理人の弁護士を通じてコメントを出した。主な内容は以下の通り。

 「本日の奈良地方裁判所の判決により、突然の夫の死からの長かった日々に、一つの区切りがついたと感じています。

 警察・検察の捜査関係のみなさまには、膨大な証拠を収集・整理し、事実関係を明らかにしていただき感謝申し上げます。裁判所と警察のみなさまには円滑な裁判のための大変な警備をしていただいたことに感謝申し上げます。裁判官・裁判員のみなさまには公平かつ公正な裁判をしていただき感謝申し上げます。特に、仕事や家事を抱えながら15日間を超える日々を、この裁判のために費やしていただいた裁判員のみなさまには、深く感謝申し上げます。

 みなさま、ありがとうございました。

 被告人は、自分のしたことをきちんと正面から見つめ、私のかけがえのない家族である夫の命を奪い去った罪を償っていただきたいと思います。私は、これからも、前を向いて夫の遺志を紡ぎ、日々を大切に生きて参ります」

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2019年4月26日、安倍晋三首相(右)と妻の昭恵氏(肩書は当時)=ワシントンのホワイトハウス、岩下毅撮影

15:00鈴木エイトさん「重すぎる判決だ」

 裁判の傍聴を続けてきたジャーナリストの鈴木エイトさんが閉廷後に取材に応じ、「重すぎる判決だ」と述べた。

 鈴木さんは「宗教2世と呼ばれる社会問題の被害者が、人生の居場所を奪われた背景のなかで起こした事件だ」とした上で、奈良地裁の判断について、「そうして社会から居場所を奪われた人に、戻ってくる余地を与えないような判決だった。彼一人に背負わせていいのか」と語った。

 鈴木さんはこの1週間に2度、山上被告に接見したといい、「僕に対して『色々大変だと思いますけど頑張ってください』と気遣うような声をかけてくれた。本当に心優しい人物だと感じた」と述べた。

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山上徹也被告に無期懲役の判決が言い渡された後、取材に応じるジャーナリストの鈴木エイトさん=2026年1月21日午後2時58分、奈良市、大山貴世撮影

 接見のなかで山上被告は「統一教会のことは、自分は譲れない」という趣旨の話をし、公判の最終意見陳述の際に何も述べなかったことについては、「考えがまとまらなくて断念した」などと話していたという。

 鈴木さんは山上被告について、「彼のような存在を生み出さないための存在になってほしかったが、そういう機会すら奪われてしまう判決内容だった」と述べ、「ちゃんと罪を償った上で、自身の経験や、なぜ自分が怒ったのかということを、後世に伝えるような存在になってほしい」と語った。

14:45説諭はなく閉廷

 山上被告への判決言い渡しは午後2時45分ごろに終わり、閉廷した。裁判官からの説諭はなく、16回に及んだ一審の公判は幕を下ろした。

 判決に不服がある場合、翌日から2週間、控訴することができる。

【動画】山上徹也被告を乗せた車両が奈良地裁を後にした=伊藤進之介撮影

14:30旧統一教会側「コメントはありません」

 朝日新聞は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側に、山上徹也被告(45)に対する無期懲役判決について見解を尋ねた。教団側は「コメントはありません」と回答した。

14:30不遇な生い立ちでも「大きくくむべき事情はない」

 田中裁判長は、旧統一教会に入信した被告の母親が、被告に及ぼした影響についても言及した。

 判決は、母親が教団に数千万円の献金をしたことで家族が経済的に困窮したことや、2015年に被告の兄が自殺して強い衝撃を受けたことから、山上被告が旧統一教会に対して怒りを抱くようになったと指摘。来日した教団幹部を襲撃しようと試みるなかで銃の製造を始め、教団に影響力のある人物として安倍氏の襲撃に思い至った、とした。

 その上で、不遇な生い立ちはあっても犯行の経緯には「飛躍がある」と指摘し、「(犯行は)被告の決断に他ならない。意思決定に生い立ちが影響したとはいえない」「悪質性や危険性は同種事例のなかで最も重く、大きくくむべき事情はない」と述べた。

14:10判決「公共の安全を脅かし、極めて危険で悪質」

 田中裁判長は判決のなかで、安倍氏銃撃の犯行態様などについて言及した。

 事件当時、付近に約300人の聴衆がおり、演台の周辺にも関係者や警護の警察官がいたことを挙げ、「(銃弾が)他の人に当たる可能性も十分にあった」「公共の安全を脅かし、極めて危険で悪質。現場に大きな混乱をもたらし、居合わせた人に恐怖を感じさせたことも軽視できない」と指摘した。

 また安倍氏の妻の昭恵さんについて、「夫を突然うしなっており、大きな喪失感も理解できる」と述べた。

13:45発射罪認める

 田中裁判長による、判決文の読み上げが続き、検察側が起訴した事実について、地裁はいずれも認定した。

 検察側と弁護側の間で争点となっていた、手製銃での銃撃が銃刀法の発射罪にあたるかについて、判決は手製銃が「砲」にあたるとして、発射罪の成立を認定。手製銃の殺傷能力についても認めた。

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13:30判決言い渡し じっと下を向いたまま

 判決公判が開廷し、田中伸一裁判長は求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

 山上被告は、これまでの公判と同じ黒い長袖シャツとベージュの長ズボン姿で入廷。5分余り開廷を待った。

 開廷後、田中裁判長から証言台のいすに座るよう促されると、ゆったりとした足取りで前へ出て、一礼し、着席。裁判長から「山上徹也さんですね」と名前を確認されると、「はい」と小さな声で答えた。

 裁判長が罪名を読み上げた後、「次の主文を言い渡します」と述べ、無期懲役を言い渡した。被告はじっと下の方を向いたまま聞いていたが、主文の言い渡しを終えると裁判官らに一礼。弁護側の席にゆっくりと戻り、判決理由を聞いた。

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足を組んでうつむきながら、裁判長の判決の言い渡しを聞く山上徹也被告=2026年1月21日、奈良地裁、絵・岩崎絵里

12:45山上被告、地裁に

 山上被告を乗せた車両が午後0時45分ごろ、奈良地裁に到着した。判決の言い渡しは午後1時半から始まる予定。

【動画】山上徹也被告を乗せた車両が奈良地裁に到着した=午後0時45分ごろ、伊藤進之介撮影

12:30傍聴券当たり「判決理由が聞きたい」

 奈良市の無職男性(67)は、山上被告の公判の傍聴券を当てたのが今回で3回目。被告の母親や妹の証人尋問を傍聴したという。どのような量刑が言い渡されるかが気になっているといい、「判断や判決の理由が聞きたい」と話し、地裁へ向かった。

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山上徹也被告の判決公判の傍聴券抽選結果を確認する人たち=2026年1月21日、奈良市、徳永猛城撮影

11:10傍聴希望者 初公判に次ぐ多さ

 奈良地裁は、傍聴券交付のための抽選券を配布した午前9時半までの1時間に、685人の希望者が並んだと明らかにした。全16回の公判で、初公判の727人に次ぐ多さとなった。

9:30判決「この目で見たい」

 宗教社会学が専門の中西尋子・大阪公立大人文学学際研究センター研究員(61)は兵庫県西宮市から傍聴に駆けつけ、抽選に並んだ。

 「検察側は裁判で(山上被告への)宗教の影響を考慮しない主張をしていたが、この事件は旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の影響抜きには起こり得なかったと考えている。裁判所には、弁護側の主張したような懲役20年以下の判決を言い渡し、服役を終えた後の残りの人生を歩めるようにしてほしい。ぜひ判決の瞬間をこの目で見たい」

【動画】山上徹也被告の判決公判の傍聴券のための抽選券交付が始まった=午前8時半ごろ、奈良市の奈良公園、伊藤進之介撮影

 これまでに傍聴券を2回当て、山上被告の被告人質問を傍聴したという奈良市の無職佐藤秀司さん(74)は「ここまで絶望が漂っている人を初めて見た。本人がやったことは当然よくないが、そこまで追い込まれて絶望的な状況だったことが量刑にどこまで加味されるのかを知りたい」と話した。

9:00防寒対策しっかり

 かつて家族が旧統一教会の物品を購入したことがあったという大阪府豊中市の女性(66)は「今日も駄目かもしれないけれど防寒対策をして来た」と話した。傍聴券の列に並ぶのは4回目だが、まだ傍聴できたことはない。「本人の話を直接聞きたい。判決を近くで見守りたい」

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リストバンド型の傍聴整理券を手首に着ける人々=2026年1月21日午前8時44分、奈良市の奈良公園春日野園地、大山貴世撮影

8:40「教団はどうして、高額献金をさせ続けたのか」

 傍聴券を求めて並んだ奈良県内に住む70代の旧統一教会の男性信者は「問題の根っこが多額の献金にあったことは間違いない。事件はただのテロではない」と指摘。「教団はどうして、平和な家庭を壊すような高額献金をさせ続けたのか。安倍元首相に対する加害者は被告で、被告に対する加害者は母親。母親に対する加害者は教団と受け止めている」と話した。

8:30傍聴の抽選券交付始まる

 奈良地裁近くの奈良公園では、午前8時30分から傍聴券のための抽選券交付が始まった。

 傍聴券を求める列に加わった奈良市内の女性(44)は、山上被告と同時期に同じ高校に通っていたという。

 「被告の生い立ちや家族の状況は気の毒で、大変な人生を送ってきたのだと思う」とおもんぱかる一方、「殺人は別の話かなと思う。生い立ちがどこまで量刑に考慮されるのか注目したい」と話した。

量刑を左右するポイントは

 検察側は「戦後史に前例をみない重大事件」だとして無期懲役を求刑し、弁護側は「重くても懲役20年」と訴えている。

 量刑を左右する大きなポイントになりそうなのが、犯行の危険性と、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をしてきたという被告の生い立ちだ。

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 昨年12月の論告で検察側は、数百人の聴衆がいた選挙の演説中に手製銃を撃ったことの危険性を強調した。

 不遇な生い立ちは「否定しない」としつつ、教団と直接関係のない安倍氏を狙った動機に「酌量の余地はない」と批判。被害者が1人だった過去の銃撃事件の量刑を踏まえても、「無期懲役より軽い刑とする余地はない」と主張した。

 一方で弁護側は、被告は「宗教が関わった虐待の被害者だ」とし、1億円超の献金や教団を憎んだ兄の自殺といった「過酷な生い立ち」を十分に考慮するよう求めた。

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銃撃後、取り押さえられた山上徹也被告=2022年7月8日、奈良市、上田真美撮影

 安倍氏を狙ったのは、教団の友好団体に支援のメッセージ動画を送ったことに絶望したためだと説明し、「悲惨な経験は犯行と一直線に結びついている」と反論。「実情に見合った刑罰」を科すべきで、「宗教被害に苦しんだ経験を生かし、社会に貢献する機会を与えてほしい」と訴えた。

 裁判員裁判は昨年10月に始まり、山上被告の母や妹、警察官ら12人の証人尋問と5回に及ぶ被告人質問をへて結審していた。

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判決前の山上被告の様子は

 判決が21日に迫るなか、山上徹也被告(45)の弁護人が取材に応じ、無期懲役を求刑された後の被告の様子などについて答えた。

 山上被告は、年末年始も大阪拘置所で新聞を読んだり、読書したりと、これまで通り淡々と過ごしていたという。接見した弁護人は「判決がどうなるかを気にする様子はなく、不安な感情を見せなかった」と説明した。

 裁判で検察側は無期懲役を求刑し、弁護側は「重くても懲役20年」と反論した。山上被告からは「裁判で話すべきことは話した。判決について控訴するかは結果次第で、弁護団と相談して決めたい」という趣旨のことを伝えられたという。

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2022年の安倍晋三元首相銃撃事件で起訴された山上徹也被告の裁判は、26年1月21日に無期懲役の判決が言い渡されました。関連ニュースをまとめてお伝えします。[もっと見る]

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