a0960_008707_m
   

今年は、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、会談する機会がいくつかある。11月に中間選挙を控えるトランプ氏が、貿易合意で成果をあげる見返りに、習氏に台湾問題で妥協するのではないかという懸念が一部に出ているという。実態はどうか。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月21日付)は、「トランプ氏は台湾で譲歩せず ケネス・ワインスタイン氏 米ハドソン研究所 日本部長」と題する記事を掲載した。

 

トランプ氏が、中国へ妥協するという見方は誤りで、彼はいかなる大きな譲歩もしないだろう。トランプ氏は、台湾の現状維持を望んでいる。台湾への武器売却を承認し、米台交流を強化する法律にも署名した。台湾が奪われれば、習氏に勝利を与えることになり、米国の威信が失墜すると彼はよく分かっている。

 

(1)「中国経済は弱々しく、不動産部門は不振に陥ったままだ。習氏は部下の多くを粛清している。これは強力な指導者の姿とはいえず、見かけより弱い立場にあるのではないかとすら推察する。中国と緊密な関係にあるベネズエラへの米国の攻撃でも、中国は大きな打撃を受けた。マドゥロ政権に提供していた借款は返済されることはなくなり、中国製の防空システムは役に立たないことがわかった。ベネズエラにとっての主要な貿易相手であり、中国との関係も良好なキューバやイランへの圧力も増すことになる。中国にしてみれば、ベネズエラは重要な資産からお荷物になったといえる」

 

米国のベネズエラ急襲は、諸々の意味で中国の弱さを露呈した。防空網の弱さや、ベネズエラへの貸付が焦げ付きになる懸念も強まった。キューバやイランとの関係も弱くなりかねない。

 

(2)「私たちは、中国を強気にさせてはならない。米国はレアアース(希土類)で中国への依存を減らす取り組みも含め、日本、韓国、フィリピンとの協力を深めつつある。できればインドネシアとも同じような関係を築きたい。(高市早苗首相の台湾有事発言を機に)中国は日本に多大な圧力をかけている。中国の立場からすると、公明党の連立離脱で日本政府に影響を及ぼすルートがなくなった。どう対処するかは、日本の国益に基づいて判断すべきではあるが、中国の挑発をエスカレートさせないよう細心の注意を払わなければならない」

 

米国は、レアアースで中国の攻撃的姿勢に対抗しなければならない。日本、韓国、フィリピンとの協力を深めている。日本は直接、中国のレアアース攻撃を受けているが、協力関係強化で乗切るほかない。

 

(3)「米国と北朝鮮が、日本にとって不利な合意をするという見方についても心配は無用だ。現時点で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が、米朝首脳会談に意欲を示しているようにはみえない。北朝鮮を取り巻く環境は、第1次政権の時から激変した。バイデン前政権下で北朝鮮はロシアと関係を深めた。ウクライナ戦争でロシアへ兵器を供給する見返りに、技術や石油、外貨を得ている。「米大統領との合意」という名声以外に、米国が彼らに何を提供できるのか思いあたらない」

 

北朝鮮が、米国との首脳会談を急ごうという理由がないので、米朝接近は見込み薄である。

 

(4)「北朝鮮が、非核化に関心がないのは、破談に終わった(2019年2月開催の)2回目の米朝首脳会談をみれば明らかだ。いまのところ、彼らが米朝合意に動く理由が見当たらない。中国や北朝鮮の動きを踏まえれば、日本は防衛費を増やさざるを得ない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国と同じ国内総生産(GDP)比5%の水準をめざすことが必要だ。インフラやサイバーといった防衛関連費も含めれば、(NATOと同じ期限である2035年に)達成するのが不可能とは思わない」

 

中朝の攻撃的姿勢からみると、日本は防衛費をGDPの5%水準が必要になろう。2035年ごろが目標達成時期としている。

 

(5)「問題は、35年ごろの安保環境がどうなっているかだ。5%はあくまで目安に過ぎない。ますます攻撃的になっている中国やロシア、核を持つ北朝鮮に囲まれた日本がどのような地政学的な状況にあるのか。そこから必要な数字が決まってくる。日本は安全保障関連3文書の改定にあたり、あらゆることを徹底的に考え抜く必要がある。核抑止の議論はその一つだ。核保有について日本で健全な議論が起こりつつあるのは歓迎する。しかし、拙速に結論を出そうとするのは誤りだ。多大な議論と国民的な合意が欠かせない」

 

2035年ころには、アジア版NATOも結成されている。その頃の中国経済の潜在成長率は、OECD(経済協力開発機構)予測によれば、2030年代に2%台から1%台へ低下する悲惨な状況に追い込まれている。近隣国を軍事挑発する力は相当、低下していると見られるが。