北米

2026.01.21 15:00

患者の医療データを「無許可」で収益化、悪質事業者の実態が米訴訟で明るみに

Epic SystemsのCEO、ジュディ・フォークナー(Photo by Taylor Hill/Getty Images)

Epic SystemsのCEO、ジュディ・フォークナー(Photo by Taylor Hill/Getty Images)

米国では、異なる医療機関同士で患者のデータを共有する「相互運用性(インターオペラビリティ)」が急速に普及している。これは重複検査の回避など効率化に寄与する一方、膨大なデータが民間ネットワークを行き交う複雑な構造を生んだ。その隙間を突き、患者の最もセンシティブな情報が「商品」として売買されている実態が明るみに出た。

告発したのは、全米の病院の4割以上で採用され、圧倒的シェアを誇る電子カルテ大手のEpic Systems(エピック・システムズ)だ。同社が起こした訴訟は、単なるデータ流出事件ではない。正規のデータ共有ネットワークに参加する事業者が、治療目的と偽って情報を抜き出し、弁護士やマーケターに転売していたという疑惑である。本稿では、医療DXの最前線で起きた深刻なプライバシー侵害と、その裏にあるプラットフォーマー同士の覇権争いを解説する。

全米最大の電子カルテ企業Epic Systemsが提訴した、医療データ不正取得の疑惑

米電子カルテ大手Epic Systems(エピック・システムズ)が起こした訴訟が、問題を抱えた医療データの共有の仕組みに改革を促す可能性がある。現状では、医療とは無関係の企業が、患者が知らないうちに医療記録へアクセスできる仕組みになっている。

たとえば、あなたが家族にも明かしていないデリケートな健康問題を医師にだけ打ち明けていたとする。ところが、しばらくすると弁護士から電話がかかってきて、その件について話したいと告げられるような事態が起きているという。

全米最大の電子カルテシステムを提供するエピック・システムズによれば、こうした事態はすでに現実のものになり始めたようだ。同社は1月12日、カリフォルニア州の連邦地裁で起こした訴訟で、医療機関を装う不正な業者が患者記録にアクセスし、少なくとも29万5000件の記録を不正に取得・悪用したと訴えた。

エピックは、これら業者が患者データを不適切に収益化していたと主張し、具体例として集団訴訟の原告を探す弁護士にデータを販売したことを挙げた。

被告企業が宣伝する迅速なデータ取得と、治療目的を偽る手口

創業者ジュディ・フォークナーがCEOを務めるエピックは、当該データが訴訟に用いられたことを裏付ける証拠を、まだ示せていない。ただし、被告がそれを試みたことを示す証拠を訴状で提示した。

この訴訟の被告にあたるデータ集約企業Hopprの共同創業者は、法律分野のイベントで「安価な費用で48時間以内にクライアント全員の医療記録を請求・取得できる」と述べたという。別の被告の医療記録管理会社LlamaLabも、訴状によると法律事務所向けに「医療記録を即日入手可能だ」と売り込んでいたとされる(同社のリンクトインにも、その主張が記されていた)。

Nationwide Healthcare Provider Corpと呼ばれる被告も、「電子カルテから直接記録を取得し、代理人事務所に送付するシステム」を構築していたという。エピックは、このような迅速なデータの提供が、被告が「治療目的を偽ってデータを取得していることを示す兆候だ」と主張している。

不正を助長したとされる仲介企業Health Gorillaと、被告が発表した反論声明

これら行為を可能にしていた企業とされるのが、医療機関同士の患者記録のやり取りを仲介する医療テック企業Health Gorilla(ヘルス・ゴリラ)だ。エピックは、同社がUnit 387などの顧客企業による「不正行為」を認識したうえで関与し、助長していたと訴えた。

この訴訟を受けてヘルス・ゴリラは、「当社は疑惑を否定する。断固として法定で争う」と声明で述べている。別の被告で慢性疾患管理会社RavillaMedのオーナー、アヴィナシュ・ラヴィラも「当社はエピックの主張を全面的に否定する」と述べた。ほかの被告は取材要請に応じなかった。

なお、この訴訟の共同原告としては、リード・ヘルス、トリニティ・ヘルス、UMassメモリアル・ヘルスも名を連ねている。

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翻訳=上田裕資

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2025.12.24 11:00

アークテリクスが提唱する“Design to Last” 最後まで使いきるためのデザイン

アパレル業界の大量生産・使い捨てが問題視される昨今。先駆的に用品の修理・補修に力を入れてきたアークテリクスの新店舗が体現するのは、サステナビリティを徹底する彼らの哲学だ。


「今回出店した池袋は、秩父山地へのアクセスが良好で、アウトドアの愛好家が集う土地です。だからこそ、プロダクトを販売するだけではなく、お客様のアウトドア活動をサポートするサービス体制が整った店舗にしたかった。そういったプロダクトとサービスを含めた、いわばアークテリクスのフルスペックがこのワンフロアで揃うのが、今回のストアなのです」

こう話すのは、日本で「アークテリクス」のブランドヘッドを務める高木賢だ。同ブランドは1989年、カナダ・バンクーバーにて創業。クライマーが自らつくる高品質なクライミングギアブランドとしてスタートし、バックパックやウェアなどラインナップを徐々に拡大。現在ではカナダを代表するアウトドアブランドへと成長した。そんな同ブランドが今秋オープンさせたのが、国内最大級となる「アークテリクス 池袋東武ブランドストア」だ。その目覚ましい躍進の原動力である、世界中のアウトドアファンが信頼を寄せる高機能なプロダクトは、どのように生まれるのだろうか。

優れたプロダクトを生み出す 使いたいモノをつくるという哲学

店内に設けられた「ReBIRD™ サービスセンター」では、プルタブやドローコードの交換といったクイックリペアに加え、ロックミシンによる補修なども可能な限りその場で行う(※予約優先)。
店内に設けられた「ReBIRD™ サービスセンター」では、プルタブやドローコードの交換といったクイックリペアに加え、ロックミシンによる補修なども可能な限りその場で行う(※予約優先)。

「アークテリクスの本社にはデザインセンターがあり、アクティビティ別にデザイナーがいます。彼らは担当するアクティビティを自ら実践、サンプルをテストし、改善することで製品を完成させます。創業時より自社工場を所有しており、現在も本社近くにARC’One(アークワン)という自社工場を構えています。こうした充実の体制こそ、妥協なき製品開発の背景なのです」

欧米のアウトドアブランドには、プロダクトデザインを専門業者に外注するブランドも少なくない。だが、アークテリクスは創業以来、自社内でのデザインを貫く。それは“自分たちで使いたいモノをつくる”という、創業の礎となった哲学に基づいているのだ。見た目だけの装飾性や流行とは一線を画す、そうした確固たる信念こそが、信頼に足るプロダクトを生むのである。さらにアークテリクスにはもうひとつ、製品開発の指針となる哲学があると、高木は言う。

「アークテリクスは常に長く使えるプロダクトづくりを目指しており、その哲学を表すのが“Design to Last”という言葉です。例えばレインウェア用の素材は、現在は多くの種類があります。そのなかでもゴアテックスを採用するのは、耐久性に最も優れた防水・透湿性の素材だからです。そうした素材選びに限らず、使用する部材を1種類にし、シンプルなデザインにするなど、現在ではデザインの段階からリペアをしやすいように工夫されています。それもプロダクトを末長く使っていただくためなのです」

こうしたプロダクトを長く使うという哲学は、新店に設けられた「ReBIRD™ サービスセンター」に集約されている。同センターでは破損したウェアやギアのリペア受付をはじめ、アフターケアといったプロダクトの寿命を最大化するための総合的なプログラムを案内。設置された洗濯・乾燥機により、ウォッシュサービスや正しい洗濯方法のレクチャーも受けられる。それもまたプロダクトの寿命を延ばすためだという。

洗濯・乾燥機を設置し、プロダクトを預かって洗濯するサービス「テックウォッシュ」も受け付ける。また製品ごとに日ごろのメンテナンス方法もレクチャーしてくれる。
洗濯・乾燥機を設置し、プロダクトを預かって洗濯するサービス「テックウォッシュ」も受け付ける。また製品ごとに日ごろのメンテナンス方法もレクチャーしてくれる。

「“機能性が損なわれるため、ゴアテックス アパレルは洗わないほうがいい”といった話を耳にしますが、それは誤解です。実際には、洗わないと汚れや油分で繊維が寝てしまい、逆に撥水性が落ちてしまうのです。そればかりか、生地の構造自体に劣化が起こり、機能回復の基準に満たなくなることで、修理をお受けできないケースがあります。だからこそ、洗濯を含めた正しいアフターケアが重要なのです」

最後まで使いきることがサステナビリティへとつながる

プロダクトの販売だけでなく、日ごろのアフターケア、さらには破損後のリペアに至るまで一貫してサポートする。そんな手厚い体制が同店には整えられているのだ。それはまさに“Design to Last”=最後まで使いきるために他ならないのである。

「我々はウェア類も含め、すべてのプロダクトをアウトドアで使用する“ギア”ととらえています。ギアである以上は正しく機能することが重要で、日ごろのメンテナンスが大切です。新店のReBIRD™ サービスセンターでも、何より機能の回復を重視しています。正しいメンテナンスをしながら、プロダクトを長く使ってもらうこと。それがアークテリクスのサステナビリティに対する考え方でもあるのです」

同店ではサービスセンターに加えコミュニティスペースも設けられており、アークテリクスが主催するアウトドア関連のイベントやツアーなどの情報も今後発信していくという。高機能なプロダクトとともにアウトドアへの第一歩が踏み出せる同店より、新たな冒険へと出かけてみてほしい。

大きなモニターが設置されたコミュニティスペース。ショップスタッフやカスタマー同士の交流の場として、またはアンバサダーによる各種のレクチャーや、コミュニティボードによるイベント情報の発信など、多彩な用途に活用される。ブックライブラリーも設けられており、アウトドアに関する書籍を自由に閲覧できるなど、訪れた人々が自由にくつろげ、会話が生まれるスペースだ。
大きなモニターが設置されたコミュニティスペース。ショップスタッフやカスタマー同士の交流の場として、またはアンバサダーによる各種のレクチャーや、コミュニティボードによるイベント情報の発信など、多彩な用途に活用される。ブックライブラリーも設けられており、アウトドアに関する書籍を自由に閲覧できるなど、訪れた人々が自由にくつろげ、会話が生まれるスペースだ。
売り場面積528.8㎡という広々としたフロアに、メンズ&ウィメンズのアウトドアウェアをはじめ、フットウェアやバックパック、ファッションに特化したアーバンライン「ヴェイランス」まで、フルラインナップが揃う。「アークテリクス 池袋東武ブランドストア」住所:東京都豊島区西池袋1-1-25 東武百貨店 池袋本店 1F 11番地 営業時間:10:00〜20:00(百貨店営業時間に準ずる)
売り場面積528.8㎡という広々としたフロアに、メンズ&ウィメンズのアウトドアウェアをはじめ、フットウェアやバックパック、ファッションに特化したアーバンライン「ヴェイランス」まで、フルラインナップが揃う。「アークテリクス 池袋東武ブランドストア」住所:東京都豊島区西池袋1-1-25 東武百貨店 池袋本店 1F 11番地 営業時間:10:00〜20:00(百貨店営業時間に準ずる)

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