Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「天下り」って最高のシステムじゃね?

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僕は食品会社の営業部長だ。長いこと現職にあるため、同業他社の営業部門の責任者とのコネもあり、たびたび情報交換をしている。普段は同行他社、コンペなどで争うときに競合他社になるのだ。そんな関係性のなかで、昨年末、同業他社の責任者Aから連絡があった。とある法人の給食調理業務のコンペに参加してほしいという依頼だった。年末。コンペ。参加。お願い。嫌な予感しかない。Aの会社はその法人の福祉施設の給食業者を受託している、つまり現業者である。コンペに参加する業者が集まらないので協力してほしい、参加してほしい、コンペが不調になると困る、という話であった。参加する業者を既知の業者にしたいという思惑を感じた。

当該施設のコンペは定期的に行われていた。過去に参加したこともあった。定期的なコンペにしては時期が早すぎるので、何か裏があるのでは?と質問するとAは「やばいことになっている」と白状した。法人の総務部門の責任者に、市役所を退職した人間が新たに就いた。天下りマンは、総務部門の責任者としてやる気まんまんで、施設運営にメスを入れ、その流れでAの会社が目をつけられたというのだ。Aの会社は昨今の食材と人件費の高騰に対応するための値上げを繰り返し求めていて、それが天下りマンの目に止まり「それなら給食業者を見直そう」という話になったらしい。コンペは、12月に開始、1月中旬に結果判明、4月からスタートというスケジュール。昨今の給食業界の人手不足状況下では現場スタッフを確保するにはギリギリの日程。参加したくない。だが、Aには以前協力してもらった借りがあり、事あるごとに「そろそろ貸しを返してくれませんか」と駅の裏側にある怪しい貸金業者の取り立て担当者のようにネチネチ言われている。そろそろ縁を切りたい。

天下りマンには、現在の地位に就き、実績を残して、市からの天下りルートを確立するという意図があるらしい。僕はコンペに参加することに決めた。落札するつもりはない。Aに借りを返してさらに貸しを作るためである。天下りマンがどういう人間か見てみたかった。コンペにエントリーして資料をもらって驚いた。Aから聞いていた現在の契約条件より厳しい条件だったからだ。業務委託費も食材単価設定も現在の社会情勢や市場に見合っていなかった。天下りマンのコストカットに対する並々ならぬ意気込みと天下りルート設立の熱意だけが伝わってきた。施設利用者や施設の運営状況について何も知らない、知ろうともしていないのも伝わってきた。

当社は、天下りマンの意図に反する見積を提示した。で、コンペ成立。結果、当社は失注、Aの会社の継続。ただし、新契約によって、委託金額と食材単価は低く抑えられた。経費負担区分も厳しいものになった。提供される食事の質は下げざるをえない。そのうえで食材を納品している業者に対しても値下げを要請することになる。委託費(人件費)を下げることで給食サービス全般が低下するので、利用者の満足度も下がる(利用者から徴収する利用料は変わらないため)。そのため施設の評価は低下する。コストカットと引き換えにそんな明るい未来が見えた。

Aの会社は撤退を検討したが、現場スタッフを社員として雇用していて、代わりの行き場を用意できないこと等々から契約継続の判断をしたとのこと。給食業は労働力集約型だ。現場で労働力を抱えているがために融通が効かないときがある。つまり「契約解除はかまわないけど、現場の人間はどうなってもいいの?」という状況で難しい判断を迫られるのだ。きっつー。今回のコンペで得をするものは、甘下りマン、それから甘下りマンに続いて天下りマン2号、天下りマンV3を将来襲名することになる市役所職員だけである。実際に給食に関わる人は誰も得しない。

未知の業界に天下ってきた人間が、速攻かつ簡単にできることはコストカットしかないのだ。事情がわかっていないからコストカットも無慈悲で容赦がない。無謀なコストカットを実施して周りに苦労も不幸を押し付け、本人は実績を上げたと胸を張っているのだからたまったものではない。市の職員として定年まで働かせてもらったのだから、定年退職後くらいは無償で町のゴミ拾いをやるくらいの気概を見せてもらいたいものだ。つか、綺麗ごとを言うつもりはないし、天下りにもわずかなメリットがあることもわかっているけれど、定年後も市民を食いものにしているという自覚をもって、せめて堂々と天下るな、日陰でこそこそやれ、と言いたい。もっとも、法人としては地方自治体とパイプをもつことによっていろいろ良いことがあるのでしょうね。まあ、そんなものは施設に関わる利用者や職員、施設を負担する市民にとっては何も関係ないのだ。

この件について、会社上層部に報告したところ「天下りは給食業界がわかってない」「数字しか見ていない」と非難していた。会社上層部も金融機関からの天下りで、給食業をまったくわかっていなくて、数字しか見ていなくて、アホな新規事業をはじめて大失敗をしたけれど、記憶喪失ですかね?ご自分たちが天下りしてきた問題は盛大に棚上げしているけど、そろそろ重量オーバーで棚が崩れそうなのだよ…。とはいえ、天下りは無責任でオッケーかつ安定しているうえ周囲からちやほやされて気持ちよさそうなので最高だ。生まれ変わったら天下れる身分になりたい。僕が天下りに対して敵意を隠さないのは義憤からなのか嫉妬からなのか、どちらからなのかは皆様の想像におまかせしたい。(所要時間29分)