日本政府は昨年12月下旬、南米5カ国でつくる「メルコスール(南米南部共同市場)」と「戦略的パートナーシップ枠組み」を創設すると発表した。貿易や投資面での連携強化を目指す中、新たな枠組みが日本に及ぼす影響はいかに。
メルコスールの正式加盟国はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビア(2023年12月加盟決定、国内手続き中)だ。ベネズエラは現在、民主主義の原則などの違反で加盟資格停止中となっている。
加盟国内の人口は3億人超、総GDP(域内総生産)は3兆ドル規模(24年時点)だ。しばしばメルコスールは、南米のEUといわれるが、EUの規模は人口4・5億人、総GDPは18兆ドル。ちなみに、他地域の経済連携としてUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)や環太平洋諸国のTPPがあるが、人口はそれぞれ5億人、6億人、総GDPはそれぞれ30兆ドル、15兆ドルとなっている。
メルコスール諸国は最近中国との貿易が増えている。
00年にはメルコスール貿易のわずか2%だった中国のシェアが、23年には24%にまで拡大し、EUを大きく上回っている。メルコスールから中国への輸出は大豆や鉄鉱石が多い。
もともとメルコスールはEUとの取引が多く、EUとの統合も視野に入っていたが、農産物に依存するフランスなどの反対で話が進まなかった。その間隙を中国がついてきて、メルコスール諸国とのFTA(自由貿易協定)の話も出ている。
トランプ政権の米国は、NAFTA(北米自由貿易協定)をUSMCAに書き換え、TPPから離脱するなど、経済面の自由貿易圏メルコスールにはさほど関心がない。
しかし、安全保障面では、「ドンロー主義」と自分の名前をとって命名し、西半球での覇権主義を隠さない。南米は従来、米国の「裏庭」ともいわれてきたので、経済とはいえ安全保障を理由としたらトランプ政権の影響を受けやすい。
このため、メルコスールはEUとのFTA交渉を妥結させ、今回日本との関係強化で日・メルコスール戦略的パートナーシップ枠組みの立ち上げに乗り出したのだろう。
一方、日本はTPP代表だ。そこで、日本はEUとも連携をとりつつ、メルコスールとも連携を強化したい。メルコスールはEUとのFTAを結び、韓国とも話を進めているので、日本もメルコスール市場での競争が不利とならないように、EPA(経済連携協定)交渉の早期開始を求める声が大きい。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)