反政府デモが起きたイラン。トランプ米大統領はイラン国民に「抗議を続け、(公的)機関を掌握せよ」と呼び掛けた。イラン指導部への圧力を強める狙い。ベネズエラを制圧したばかりの米国の動きはどうか。
イランとベネズエラには類似点がある。ともに民主主義がない独裁専制国家だ(以下の統計数字はいずれも2024年)。エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)の167カ国・地域の「民主主義指数」(10点満点)によれば、イラン1・96(154位)、ベネズエラ2・25(142位)とともに最低ランクだ。
産油国という共通点もある。日産石油生産量(ランキング)はイラン462万バレル(6位)、ベネズエラ90万バレル(21位)となっている。ただし、貧しい国だ。IMF(国際通貨基金)の195カ国・地域の1人当たりGDPによれば、イランは4810ドル(123位)、ベネズエラが4510ドル(126位)である。
経済もともに深刻化している。IMFの消費者物価上昇率(インフレ率)によれば、イランは32・5%(11位)、ベネズエラは50・0%(7位)。ただし、この数字は公式統計であるためにかなり過小に報告されている。失業率はIMFのデータでイランが7・55%(26位)。ベネズエラは2018年が36%とされて以降の数字がない。
イランもベネズエラも石油資源があり、経済的にはかなり有利であるが、マクロ経済運営や石油資源の有効活用、国際的な経済制裁などにより貧しい国になっている。
イランの暴動の背景には、国民の困窮がある。これはベネズエラにも言えることで、米国による政権転覆がベネズエラ国民にとっては歓迎されているゆえんだ。
イランにも同様な事情がある。さらに国民のデモに対し軍が発砲し千人を超える死者が出ているらしい。典型的な独裁専制国家である。
ここまでくると、米国の介入が国際法に照らしてどうかとの議論はむなしい。国際法より民衆の生命・財産の保護が上位規範であっても不思議でない。
しかし、実際に米国が行うかは別問題だ。米国は「裏庭」であるベネズエラについて、かなりの情報把握ができている。そのため、短時間で大統領夫妻拘束という離れ業ができた。しかし、イランではそういかない。イスラエルの協力が不可欠だが、消極的と言われる。イスラエルのネタニヤフ大統領としては、イランを生かさぬように殺さぬようにということだろう。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)