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問題解決能力と自信がない総理

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。高市さんが総裁選に勝ったときに、私は高市さんを問題解決能力の低い人と評しました。(2025/10/16の記事

 高市早苗さんは鹿を蹴っ飛ばしてる外国人がいると批判して、わけのわからん和歌を詠んでましたけど、そんな平安貴族のまねごとをしたって当事者には何も伝わりません。鹿を蹴飛ばしてる外国人に対して、なぜそんなことをするのだ、やめなさいと直接対話してわかってもらわないかぎりは、何の解決にもなりません。
 働いて働いて働きまくるみたいな宣言もしてましたけど、高市さんは問題の具体的な本質を理解して解決しようとする意志も能力も低いのが欠点です。問題解決能力の低い人ががむしゃらに働いても骨折り損になるだけだし、カバーする周囲の人たちの負担ばかりが増えてしまいます。


 そもそも鹿を蹴ってる外国人がいるという事実が確認できてないのですが、その後まもなく、高市さんが午前3時に秘書や官僚を呼び出して仕事をさせたのは事実です。私の見立ては正しかったようです。
 高市さんは問題解決能力が低い人という私の評価は、3か月経ったいまでも変わりません。過去に高市さんが主導して、何らかの問題を解決した例があるか調べたのですが、とくにこれといった実績は見当たりません。
 総理に就任してからも、問題を解決しようとするどころか、問題を無視・静観してばかりです。庶民が悲鳴を上げている米価格の急騰と高止まりに対しても、おこめ券を1回だけ配るなんてまったく的外れな対処法を提示して、仕事をしたつもりになってました。米の価格が下がるまで毎月おこめ券を配り続けます、というのならまだしも、1回こっきりじゃあ何の解決にもなりません。
 国民が切実に解決を願ってる問題は放置しておきながら、誰も望んでない議員定数削減なんてことには熱心なんですよね。他にも、円安への対応も本気でやる気はなさそうだし、トランプの国際法違反に対しても何の批判もしてません。結局すべて、なすがまま。

 誤解しないでいただきたいのですが、私は高市さんが無能だと決めつけてるのではありません。政治家として凡庸すぎるといってるだけです。ありきたりな問題を過去のセオリー通りに処理する能力はあっても、未曾有の現象を分析し問題の本質を正しく見抜き、常識にとらわれず的確な手法で解決する、という有能さは持ち合わせていないのです。なので先が見えないいまの時代に、総理をつとめる資質があるのかとなると、かなり大きな疑問符をつけざるを得ないのです。
 高市さんを熱心に支持してる保守や右派の人たちは、なんでリベラルな連中は日本初の女性首相誕生を歓迎しないのだ、などと皮肉をいってましたけど、やはり彼らはリベラルを完全に誤解しています。
 リベラルな人にとって、総理が男であるか女であるかそれ以外であるかなんてことは、どうでもいいことなんです。重要なのは、総理としてふさわしい能力と人格が備わっているかどうか。それだけです。

 いま高市さんの人物像にもうひとつつけ加えるなら、「自信のない人」。
 異例ともいえる支持率の高さと矛盾するかのような、自信のない態度や行動を取るのが不思議です。自分に自信がないから、つねに不自然な作り笑顔の鉄仮面で武装してなければ不安でしかたがないのでしょう。自信がある人は無理に笑いません。人間として、仕事人としての誠実さは、笑ってなくても言動から自然と伝わるものです。

 だいたい、そんなに国民から高い支持を得ているのなら、堂々と自信を持って自分が目指す政策を粛々と進めていけばいいだけのことです。野党に反対されたって、国民の後ろ盾があれば正面から堂々と説得できるはずです。それを地道に続けることで実績を重ねるのがまさに保守政治の王道なのに、高市さんは早期の解散という奇策に走りました。
 おそらく本人も、問題解決能力や非凡な発想とは無縁の凡人であるという自覚はあるはずです。自分へのいまの高い支持率が実績を反映したものでなく、宣伝工作で作られた虚像でしかないと誰よりわかっているのもご本人でしょう。
 だから選挙で勝つという実績によって不安を払拭し、自信を取り戻したいと考えたとしても不思議ではありません。
 でも私はそこに危険なものを感じます。まあ、いくら虚像の支持率とはいえ、今回の選挙で自民が惨敗する可能性は考えにくいですよね。それなりに勝つとは思いますが、みんなが遠慮していわない、ミもフタもない事実を指摘しておきます。
 選挙で勝っても高市さんの問題解決能力が向上するわけじゃないんです。能力が向上してないのに自信だけを深めてしまうのは、悲劇です。当人にとっても、周囲にとっても。
 今後、問題がうまく解決しない場合に、誰かのせいにするトランプ流を踏襲したり、鹿でなく周囲の人たちを蹴飛ばしたり罵声を浴びせたりなんてことにならないかと危惧してます。この私の見立てが当たらなければいいのですが。

 過去の内閣支持率について、統計学者による分析があるので参考までに紹介しておきましょう。
 『数字が明かす日本人の潜在力』という本によると、内閣支持率は総理が何もしないほど高くなるのだそうです。過去の総理でトップクラスの高い支持率だったのが細川護熙さん。といわれて、そうだよね、とうなずく人はいませんよね。え、何した人だっけ? って感じでしょ。そう、結局何もしないまま短命政権で終わったことで、高い支持率という数字だけが残ったのです。いま高市さんの支持が高いのは、まだ何もしていないから、というのが統計学的な答えです。
[ 2026/01/20 20:16 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

Author:パオロ・マッツァリーノ
イタリア生まれの日本文化史研究家、戯作者。公式プロフィールにはイタリアン大学日本文化研究科卒とあるが、大学自体の存在が未確認。父は九州男児で国際スパイ(もしくは某ハンバーガーチェーンの店舗清掃員)、母はナポリの花売り娘、弟はフィレンツェ在住の家具職人のはずだが、本人はイタリア語で話しかけられるとなぜか聞こえないふりをするらしい。ジャズと立ち食いそばが好き。

パオロの著作
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