[社説]消費税減税ポピュリズムに未来は託せぬ
高市早苗首相が19日の記者会見で食料品を2年間、消費税の対象から外す考えを表明した。2月8日投開票の衆院選は与野党そろって消費税減税を公約する構図が固まった。日本の財政を「行き過ぎた緊縮」と呼び、恒久的な歳出削減や財源を伴わない無責任な減税ポピュリズムに未来は託せない。
自民党が国政選挙で消費税減税を公約するのは初めてだ。昨年7月の参院選で公約化を見送ったのは政権与党として最低限の矜恃(きょうじ)ではなかったのか。
減税すべきでないのは消費税が国と地方の負担する年金、医療、介護、子ども・子育て支援など社会保障の安定財源だからだ。税収はほぼ個人消費に比例し、企業業績に連動する法人税に比べ景気変動の影響を受けにくい。全世代で社会保障を支える意義もある。
消費税収は所得税や法人税を上回る基幹税の中核だ。もし8%の軽減税率をゼロにすれば地方分も合わせ税収は年5兆円ほど減る。
消費税は大平正芳内閣の一般消費税、中曽根康弘内閣の売上税の相次ぐ挫折を経て、竹下登内閣の1989年に実現した。安倍晋三元首相が2度の延期と引き上げで達成した財源を手放すのが高市首相の「私自身の悲願」なのか。
約50人の経済学者を対象に昨年5月に実施した「エコノミクスパネル」でも消費税減税は「不適切」との回答が85%にのぼる。首相は日本維新の会との連立合意書に基づいて「2年間限定」というが、一度下げた税率を本当に元に戻せるかは疑わしい。立憲民主党と公明党がつくった新党、中道改革連合が公約する「恒久的にゼロ」も安定財源の確保は不透明だ。
消費税には所得が低いほど税負担を重く感じる逆進性があるが、与野党の消費税減税案は富裕層にまで恩恵が及び非効率だ。低所得層に絞った給付付き税額控除の実現を急ぐのが筋ではないのか。
財政悪化への懸念から市場では円安と長期金利上昇が加速している。供給制約下の需要追加、円安による輸入価格上昇の両面から物価高対策としても疑問が多い。「即効性が乏しい」という首相の過去の発言とも矛盾する。
日本経済はインフレで名目国内総生産(GDP)の伸びに比べ金利の引き上げが遅れる「財政のボーナス期」にあるが、選挙のたびに財政規律が緩むようでは困る。与野党は衆院選で財政健全化の目標と道筋も明示すべきだ。