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HD-2D版『ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ』で情緒をメチャクチャにされた話

HD-2D版『ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ』、とても素晴らしいリメイクでした。何べんでも言いますが、この作品は「リメイクの教科書」にしてもいいくらい、最高に出来のいい作品だったと思います。

あまりにも素晴らしい作品だったので、全体的な作品への感想をお正月休みを使って想いのままに書きなぐったらうっかり合計25,000文字くらいの怪文書を作成してしまいました。お前はいつもそうだ。お正月の3日間くらいは全てこのnoteを書くのに費やしています。バカです。

でもね、まだ書き足りないんです。ワイが一番この作品で心をメチャクチャにされてしまったのは…

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この、人魚の女王に関するエピソードです。

いや、原作からいるキャラちゃうんかい!って話ですよね。言ってしまえば完全新規エピソードなわけで、取ってつけの要素にいちいち情緒揺さぶられるなと思っちゃう原作至上主義な方もいるでしょう。
既に全クリ済みの人でも「えっ、そんなにヤバいエピソードだった…?割とRPGではありきたりな話じゃなかった…?モーくんのほうがヤバくない…?」と思う人もいるでしょう。

分かる。分かりますとも。多分ワイが異常なだけです。
あと一応いっておくとモーくんエピソードもちゃんとお気に入りです。モーくんメッチャ可愛いし、パーティーとのやり取りの積み重ねが最期のシーンでより深い悲しみを呼ぶわけだし。色々天才だと思ってます。
あとロンダルキア王子エピソードも好き。エンディングのあのシーンは切ないけど、一種の安堵感も混じるようなおセンチな感情になりますよね。サマル王女絶対ワンワン泣いたと思う。色々天才だと思ってます。
そんな感じで、リメイクⅡには心に刺さるエピソードがたくさんありました。

でも、それでもなおワイが人魚の女王エピソードを推すのは、ちゃんと理由があるんですよ。今回のnoteでは、それをひたすら語らせていただきます。ネタバレはありますが、物語の根幹に関わる話はあまりせず、ひたすら人魚の女王に関する事だけを書くトチ狂ったnoteになりますのでご容赦ください。

<注意>
私のプレイしたⅡの主人公キャラは以下の名前となっています。
・ローレシア王子=フェイ
・サマルトリア王子=バルト
・ムーンブルク王女=エリィ
・サマルトリア王女=マルー
文章中はこのキャラの名前を使います。ご了承くださいませ。

・人魚の女王とのファーストコンタクト

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まず、人魚の女王とのファーストコンタクトからおさらいしておきましょうか。彼女との出会いは、人魚の町が襲撃を受けたのを助けにいくところから始まります。

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人魚たちは、自身の町から避難して人魚の聖域に逃げ込んでいるようでした。そして、ハーゴン軍直属の幹部クラスであるミリエラに追い詰められていた人魚たちの中心に、この人魚の女王がいました。

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追い詰められていても威厳たっぷりに、勇者パーティーの強さを見抜けないミリエラを蔑むような発言をしていたのが印象的でした。追い詰められても弱さを見せない女長って、いいよね…。

ついでにいうと、ファーストコンタクトだった勇者一行の能力をすぐに見抜くことができる洞察力(スカウター的な戦闘力分析?)も優れているという点でなかなかの実力者である事が伺えます。

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女王には結界をつくるという、防御的な能力もある模様。おそらくこの力を使い、ミリエラの攻撃をしのいでいたのでしょう。

ミリエラはマヒャドを使う事ができるはずなのに、そのレベルの魔法を無効化する結界…いや、強いな?地獄の鎧ですらヒャド系の軽減は4分の1なのに…ラスダンに存在する呪いの武具を上回る防御性能は半端じゃないです。

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無事に人魚たちが町に戻ってきた後、改めての謁見のため玉座のある部屋に向かおうとすると、顔見知りとなっていた人魚のミリア・エレインに呼び止められる。エレインの言っている「女王さまはずっと人間なんかウソつきだから、近づくな、信じるなって言ってたのにね。」というセリフがなかなか印象的です。

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その会話中に聖域から戻ってくる人魚の女王。

エレインの発言内容を否定せず、かつ撤回しなければならないと言いながらパーティー一行に聖域が無事であったことの感謝の意を伝えてきます。
直前にエレインが言っていた「近づくな、信じるな」という発言に反して、随分と物腰が柔らかい印象です。初見で勇者の血筋である事を見抜いていたことから、普通の人間とは分けて考えての態度である可能性も、もしかしたらあるのかもしれませんが。

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許しをもらわずにミリアが勝手に持ち出した妖精のラッパについても、ミリア含め不問にするどころか大局的な結果を鑑みて重ねて感謝の意を告げる女王。完全に賢王のソレである。ミリアに対しても何も𠮟責をしないあたり、行った事実よりも行った内容を鑑みる理性の高さをうかがわせます。

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海で行動するための必需品であるマーメイドハープを持っているであろうパーティー一行に、申し出をする女王。マーメイドハープになにか細工をしようとしている様子。

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ここに来る前にミリア・エレインに渡していた、人魚の耳飾りをマーメイドハープに取り付けます。どうやら人魚の耳飾りは二人の人魚から女王へと献上されていたようです。マーメイドハープの装飾品を人魚の町へ戻したのもパーティー一行だった事に「運命とは数奇なものだな……。」と発言しているのが非常に印象的です。

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今後も海の世界の平和を守るため、力を貸してほしいと話す人魚の女王。パーティー一行は人魚の町を後にし、冒険を続けます。

物語上のファーストコンタクトはこんな感じの内容でした。一見、当たり障りのない普通のRPGのイベントなんですけど、ワイからすればこの一通りの流れの中にも「盛りすぎでは?」と思わせられるポイントがいくつも存在しています。詳しくは後ほど。


・ルビスの祠へ向かうために…

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物語は進み、5つの紋章と重要アイテムを手に入れたパーティー一行は、夢の妖精からとうとうルビスの眠る祠についてレクチャーを受けます。

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そこに行くにはマーメイドハープの「真のちから」を引き出さなければならないそう。

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なぜ「真のちから」を封じていたか。それは、ルビスの守りを強固にする…ようは簡単に立ち入らせないようにするための多重セキュリティにする事を狙いとしたようでした。確かに、マーメイドハープ単品で簡単に入り込めるようになるとそれが敵の手に渡ってしまうだけで即ルビスへの侵攻を許してしまう事にもつながるわけですから、納得はできます。

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そして、その「真のちから」を取り戻すことが出来るのは人魚の女王だけとの事。それでは早速向かってみましょう。

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女王に謁見すると、流石に察しのいい女王、「いつかこの日が来ると思っていた」と話します。しかし、その口ぶりは重く、少々の沈黙の後にいきなり「謝らなければならない」と話を始めます。

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マーメイドハープは、ミリア・エレインに渡していた人魚の耳飾りと同じものをはめ込めば本来のちからを取り戻すとの事。なるほど、その二つのうち一つを何も知らずに見つけて渡していたとあれば、確かに「数奇な運命」という言い方は合っていたのかもしれません。

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しかし、なんともう一つの真珠は手元にはないと話す女王。何か理由があると感じたのか、これまた聡いエリィが「もう一つも地上にあった」という事を思い出し、女王に話します。

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何かを悟ったのか、女王は話し始めます。
二つの真珠は人魚族が厳重に管理していた事、管理をしていたのは代々の女王である事、ルビスを目覚めさせるための管理であるという事を理解している事、そして…

それを愚かな人魚が捨て去ってしまった事を。


・愚かな人魚の昔話

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それは数十年前の事。

おろかな 若き人魚が
ある人間の男と 恋に落ちた。
それはもう 幸せな日々だった。
愛する者が 自分を愛してくれる。
それまでに感じたことのない
よろこびに 満ちていた。

人魚の女王の回想①

愚かな若き人魚、という言い方から始まりましたが、「それはもう~~喜びに満ちていた」までの部分は、どう考えても当人しか知りえないはずの感情表現です。

この時点で、愚かな人魚とは自分のことである事を隠すつもりはさらさらない語り始めである事が分かります。むしろ、ありありと当時の感情を取り入れることで「これは自分のことだ」と強調しているかのようでもあります。

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男は人魚に 愛の証として 人魚の世界で
もっとも 貴重なものが 欲しいと ねだった。
男の言葉を 真に受けた人魚は
女王の部屋から 大切な真珠を 持ち出した。
ふたつの真珠を 耳かざりにして
ひとつは自分に もうひとつは 男に渡し
ふたりで 同じものを 身に付けた。
真珠がもつ 本当の意味など なにも考えず
おそろいの 愛の証だと
浮かれ はしゃいでな……。

人魚の女王の回想②

そして、女王の部屋からふたつの真珠を持ち出したと語ります。言うまでもなく、これがマーメイドハープに必要な真珠です。ただ、この時点で女王は「大切な真珠」という事であるのは分かっていても、マーメイドハープのセキュリティーキーの役割としての重要性や、ルビスという存在をそこまで真に理解できていなかったのでは?とも読み取れます。


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だが次第に 男の足が遠のいていった。
会えないことを さみしく思った人魚は
ひとり人間の町へ 男に会いに行った。

そこで 見てしまったのだ。
愛する男と その父親である商人が
人魚を見世物にする 金もうけの 計画をめぐって
口論している様を……。
人魚は ともに過ごしてきた男と その父親が
商人だったことも 知らなければ
自分と 仲間の人魚たちを
見世物にしようと 企んでいたことなど
思いもかけなかった。
男は 約束してくれていたのだ。
人魚の存在や 人魚が暮らす町のことは
ぜったいに 秘密にすると……。

人魚の女王の回想③

人魚にとって大切な真珠を受け取った後の男が疎遠になり、様子を見に行く女王。そこでの男の口論の様子を見て、初めて気づくのです。

あぁ、自分はこの男のことを何も知らなかった。秘密にしてくれるっていった言葉を鵜呑みにして、その真逆のことをしようとしている可能性すら考えられなかった。
自分と親しくしてくれていた男の本当の理由は、金目の物を手に入れ、その後は金の生る木として人魚に近づくためだった。この男は初めから、自分を見ているわけではなかった。

これ、ロマンス詐欺やんけ…。
とんでもない男やな。異種族の娘を恋に落とし、秘密の関係であるという事を約束することで、特別感のある関係性を相手に共有させる事が出来る。いわゆるクロージング効果を有効に使って、効果的に幼少期の女王をハメ込んだということになります。


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その時 男と目が合った。
……そう私は思ったが 今となっては 本当に
向こうがこちらに 気づいたかどうか
確信はない。
私は逃げるように その場を去り
そして それきり男とは 会わなかった。
男とその父親も 人魚の暮らす場所には
結局 現れなかった。
人魚を見世物にするという 企てを
あきらめてくれたことだけが 救いだった。

人魚の女王の回想④

そして、この男と女王の関係はここで終わる。目が合ったと思った時、色々な事を考えたでしょうね…ここで自分が捕まったら人魚のみんなが大変な目にあってしまうかもしれないとか、自分を愛そうとすら思わなかったであろう男に対する抑えきれない憎悪とか、それはもう色々とね。結局その後、男が現れなかったことが救いだと語る女王は、その時どんな顔をしていたのでしょうか。


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だが私は 男のことが 憎くてたまらないのに
どうしても 忘れられず
海の上の様子を 度々見に行った。
そんなある日 転覆した船と
おぼれかけた漁師に 出くわした。
その者を見て 自分を裏切った 男の姿が
重なり 全身が総毛立った。
人間の男など 見殺しにしようとも思った。
だが……できなかった。
私は その漁師を助け
そして ずっと身に付けていた
耳かざりを 渡したのだ……。

人魚の女王の回想⑤
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当然、エリィは疑問を投げかけます。思い出の品をなぜ知らない人に?と。

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「私は 耳飾りを 見るたびに
 かつて愛し 自分を裏切った男を 思い出した。
 それに 耐えられなかったのだ。
 あの真珠は かけがえのないものだと
 わかっていた。
 だが 私は……
 いつの日か 勇者に手渡すべき
 カギとしてではなく 自分をだまし
 裏切った男との 恥ずべき 思い出の品として
 アレを遠くに 捨て去りたかった。
 人間にゆずってしまえば もう二度と 私が
 目にすることはない。そう思ったのだが……
 運命とは 皮肉なものだな。」

大筋は女王と男の恋愛が発端となっていたこともあり、ましてや「憎くてたまらないのに忘れられない」という、自身の想い出と相反する感情の衝突による混乱も相まって、あくまで建前上は「恥ずべき思い出の品」という表現をしたのだと思います。
ただ、まかりなりにこの時点でも女王は、真珠が勇者に手渡すべきカギとなる事について全く理解をしていないわけでもない。それにも関わらずそれを自ら手放そうとするという事は、当時の彼女が幼く愚かであったという事だけでは少々説明がつかないと思うのです。

恐らく当時の女王は、軽~中度のPTSD(心的外傷後ストレス症)に悩まされていた可能性が高いと思われます。今回の女王の失恋はただの恋人の喪失だけではなく、自身から大切なものである真珠を明け渡してしまったという羞恥心と罪悪感、そして他の人魚たちを巻き込むことになってしまったかもしれないという暴力への恐怖も重なったため、その出来事を呼び起こす対象物となっていた真珠の耳かざりはPTSD発症の引き金のようになっていたという事でしょう。
思い出す事に耐えられない、という表現はまさにPTSD症状のソレと同様です。まして当時は、男とその親がいつ人魚の町に来るかわからないという恐怖も、ずっと抱え続けていたでしょうから………。


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許されない事だと分かっているという女王に対し、寄り添うマルー。そう、この子のいいところってコレなのよ。自分たちに煩わしさがふりかかる事よりも、当時の女王の気持ちを汲んであげよう、助けてあげようとするこの姿勢よ。

それに…なんだろう、マルーが言うとより深いと感じるのは、やはり自分の気持ちを分かってくれない父親に対してのやりきれなさを彼女も感じているからなのかな、と。
マルーは両親の愛情をちゃんと理解していて、そのうえで自分の行動や発言を認めてほしいという欲求がある。でも、それを認めてくれない=自分の気持ちが裏切られる、という事を繰り返してきている彼女にとっては、人魚の女王の話はどこか他人事ではないと感じたのかもしれません。


・人魚の女王の「表層の崩壊」

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手がかりについて進言するバルトと、それを追う事に対しての難しさを反証するエリィに対し…

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なんと、例の男が乗っていた船が沈んでいるという情報を教えてくれます。

船は事故で沈没したものなのか?というバルトの問いに対し、

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「さて な……。
 いつ沈んだのか が乗っていたのか
 それは わからない。
 だがその船に 真珠が あるかもしれん。
 たしかめに 行こうとしたのだが……。」

船が沈んだ理由は分からず、「彼」が乗っていたのかはわからないとの事。そして、確かめに行こうとはしたけれども…。

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「その……徘徊する魔物が……
 多くて……それで……」

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「すまん……言い訳だ。
 あの船を 見ると……
 彼を 思い出してしまって……。
(涙を流しながら)
 行けないんだ……。
 あの船は 彼が 私に会いにくるときに
 乗っていて……。
 彼のことを……あれほど 憎んでいたはずなのに
 あの船を見ると 思い出が たくさんあふれて……。」

途端に、人が変わったかのように崩れてしまい、まるで子供に戻ったかのような話し方をする女王。

沈んだ船について語り始めたころから、女王は「男」の事を「彼」といい始めたのは非常に印象的でした。彼女にとってはこの沈没した船に関する話に触れる事自体が自身の感情を呼び起こす引き金のようになっていたのでしょう。それはまるで、かつて自身が手放そうとした真珠の耳かざりと同様に。

自分の呪縛の根源のはずなのに、好きだった気持ちが消えていない。あんなに酷い別れ方をしたのに、好きだった気持ちが消えていない。苦しいのに、悲しいのに、あの時の気持ちを、愛を、自分は自分の力で裏切れない。

そしてそれ故に、沈没した船を見に行くという行為はきっと耐えられない。それは「彼」に向き合うことになるのだから。船をみれば、彼との思い出が蘇ってしまう。それに船の中には、もしかしたら彼の遺体があるかもしれない。船にはもしかしたら、彼がこちらに侵攻しようとした証拠があるかもしれない。すべての事実を受け入れなければならない。

いやだ、いやだいやだ。何も見たくない。そんなものを見たら、きっと自分は耐えられない。きっと自分の心はまた壊れてしまうかもしれない。
恐らく、沈没した船を見た瞬間、真珠の耳飾りよりももっと強烈な「PTSD」と「別の何か」を引き起こしてしまったのでしょう。そしてそのうえで、そこにあるかもしれない答えを見る事を、彼女は拒絶してしまった。

そんなあまりにも弱すぎる自分の心を、もはや防衛本能のように隠そうとして言葉にしてしまったのが恐らく、
「その……徘徊する魔物が……
 多くて……それで……」
というセリフだったんだと思います。

女王の今までに見せてきてくれていた立ち振る舞いであれば、きっとこう話すはずです。

「調査を進めようと計画をしていたのだが、周辺の魔物は私の守りの力と近衛兵だけではなかなか太刀打ちできず、沈没船まで踏み入ることができなかったのだ。自身がまいた種を回収することすらできず、本当に申し訳ない」

狡猾に心を隠すならば、適当な嘘を織り交ぜて沈没船の捜索を依頼すればいい。そうでなくとも、自分の心の弱さをさらけ出さずに、建前上の理由を並べて謝罪を込めながらお願いをすればいい。

自身の過ちに対する良心の呵責も、沈没船に行くことができなかった本当の理由も、全部上手に隠して話をする頭の良さはきっと持ち合わせていたはずです。でも、彼女はここで女王としての威厳も立場も全てなくし、取り繕うことすらできず
「その……徘徊する魔物が……
 多くて……それで……」

そう漏らしてしまった。

違う。それは理由じゃない。本当の事だけど、それは本心じゃない。都合のいい理由づけにして、自分の本心から逃げているだけだ。
自分で自分が吐いた言葉の醜さに気づき、すぐにそれを言い訳と吐き捨てて、まるで教会の神父に懺悔をするかのように自分の感情を全て吐露する女王。

世界の危機を自分の感情と天秤にかけている自分に耐えられなくなった。この時が「来てしまった」と考えてしまう自身の弱さと醜さに、自分が耐えられなくなった。それが自身の過去を語りはじめるトリガーとなったのでしょう。この最後に見せた彼女の心の隙は、そもそも過去の出来事の吐露からすでに広がり始まっていたといえるでしょう。

きっと、過去を語りだした時点で彼女は既に限界だったんですよ。

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だから、何もかもをさらけ出して、子供のように泣きじゃくって無様な姿を見せて、罵倒も批難も何もかも受け入れようとした彼女にとって、マルーの言葉は優しく、そして痛いと感じたことでしょう。こんなにも愚かな自分に、なんでこんなに優しくしてくれるのだろう…そんな風に思っていたかもしれません。


・振り返ってみれば…

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ここでミリアの行いを無条件に許したのも納得がいきます。

なぜなら、自分にそれを咎める資格はないのだから。

むしろ、自分とは違って持ち出した理由には正当性があり、事実その行いによって物事は全て良い方向に動いた。しかも、ミリアは自分が持ち出したということを多数の人魚が集まるこの場所で堂々と告白した。勇者たちに悪い印象を持ってもらいたくないと、かばい立てをした。

皮肉なことに、同じ宝物を持ち出したという行いに対して結果も理由も行動も何もかもが正反対だったわけです。むしろミリアの勇気ある告白は自刃したくなるほどのまぶしさを感じたことでしょう。彼女の表層にある賢王のペルソナは、このあたりから少しずつ剥がれ始めていたのかもしれません。

これに気づいたワイ、もうこの時点でかなり胸の奥がズキズキと痛かったです。なんかもう、共感してしまう。自分たちを慕う人魚たちが、自分とは比べ物にならない善行をしている。封じ込んでいた自身の弱さや醜さを嫌でも直視するような話じゃないですか。

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さらに、今思えばこのマーメイドハープへの真珠のとりつけも不可解だったと気づくことが出来ます。
マーメイドハープの預かり主は主人公たちなので、真の力を引き出すための真珠のひとつを前もって取り付ける事自体にそこまで大きな問題性はないのですが、真の力を引き出すための話がでてから預かっていた真珠を取り付けるほうが本来のセキュリティの意図としては正当なはずなのです。なら、なぜこのタイミングで真珠を取り付けたのか。

言うまでもなく、自分が持っていたくなかったからなんですよね。

勇者たちがマーメイドハープを持っているのであれば、真珠を取り付ける理由としては不自然な点もなく概ね合理的です。それに、ここではまだ真珠の本当の力について女王以外に知るものはおらず、このやり取りを不自然と感じる第三者はいない。

真意を隠したまま、合理的に、自分の心を守ることができるから早く真珠を手放そうとした。彼女のペルソナが瓦解しはじめている事に、ここでも気づくことができます。ぐぅぅっ、人魚の…女王……(心臓を抑える)

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さらに極めつけは、その真珠の一つを見つけたのもパーティー一行であると知ったこのシーンでしょう。このセリフ、あくまで自分の勝手な推測なんですけど「見つけてくれた」というセリフの中には、

・自分の過ちを回収してくれた
・自分の過ちに近づく人が現れてしまった
・余計な事をしてくれた

という要素が、上から8:1:1くらいの割合で含まれているんじゃないかと思います。

心の底から、過ちを帳消しにしてくれた事には感謝をしていると思います。しかし、マーメイドハープを持ち、人魚の町を救ってくれて、妖精たちも救ってくれたロトの勇者たちが自身の過ちの象徴までもを回収してきたという事実に対しては、強く揺れ動く感情の津波が発生したことでしょう。
きっとこの子たちはルビスに出会う時がくる。きっとこの子たちは真実にたどり着く力を持っている。きっともう一つの真珠の事を話さなければならない時がやってくる。

この恩人たちに、自分の醜い過ちを告白しなければならない時がくるの…?

賢くなった今の彼女は、いずれ来るであろうその時を既にこの時点で予見した。きっと、「運命とは数奇なものだな……。」というセリフは、そんな彼女のペルソナの欠片のようなものだったのではないかと思います。

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ここからは予想なんですが、「近頃見つかった」とされる男の乗っていた船は、「たまたま見つかった」のではなく「血眼になって直近に見つけた」のほうが本当の姿なのではないかと思います。

恩人たちを失望させたくない。自分の力でなんとか自分の過ちを帳消しにしたい。そんな思いで、本当ならばバラバラになりそうな自分の心を押し殺して、今更動いている自分に嫌気を感じながらも必死に探しまわったのだと思います。

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女王本人が見つけたと示唆できる理由は、この「たしかめに行こうとした」です。侍女や親衛隊に見つけさせて、向かわせようとしたというわけではなく、自らが確かめに行こうとしたというこの言い方を考えれば、そもそも沈没船を見つけたのも彼女であると推理することが可能です。

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でも、できなかった。

船をみると、あの人の思い出がよみがえる。自身でも考えもしなかった唐突なリフレインに、溺れる。なぜ、思い出してしまうのだろう。あれほど憎かったのに、どうして忘れることができていないんだろう。今はそんな事に心を乱されている場合ではないのに。もしかしたら自分の今の不安を無くすものがそこにあるかもしれないのに。

なんで、それができないの。

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彼女のペルソナが粉々に砕け散り、仮面の糸がプツン…と切れた瞬間。それがきっとこの「その……徘徊する魔物が……多くて……それで……。」
だったと思います。この期に及んでまだ誤魔化そうとする自分の醜さに、仮面が耐えられなくなった。そこにいるのは、数十年前から何も変わっていない、傷ついた少女のままの彼女だった。

ああああああ!!!!人魚の、女王!!!!なんでアンタがそんなに苦しまなければならないんだ!!!!!!!!畜生、畜生!!!!(濡れた枕をボカボカと殴る)


・仲間たちの反応

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人に好かれよう、好きになろうという気持ちが強いタイプであろうマルーにとって、好きになる事を後悔するという出来事はかなりショッキングだったのではないかと思います。

しかも、何十年という時を、ずっと彼女は苦しみ抱え続けてきている。そんなの、かわいそうだよ…というマルー、マジでいい子すぎる…。

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賢いエリィさんは、ここで他の人魚たちに対して人間と関わらないように仕向けていた理由に気づきます。そして、同胞たちにこんな苦しみは絶対に味わわせたくないからこそ厳格に振舞っていた、と。

自身に起きた出来事と、自身が他者に対してとる振舞いのバランスに苦しんできたであろうエリィにとって、身につまされる話だったと思います。

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バルトは、聞いた内容通りの話だとしたら酷い話だと絶句。彼の目から見ても、やはり女王の心の傷は深いものであると分かるようです。

「ということなんですかね」「だとしたら」という言い方から、どこかでバルトもまた彼女のように「彼」が裏切ったと断定はしたくないという優しさを感じる事ができます。兄妹そろっていい子たちじゃて…ホンマに………。

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個人的に一番「ウッ!?うぐぐぐぐぐっ(悶絶)」となってしまったのは、この侍女の人魚のこの発言。何に悶絶したかは後々で数千文字くらい使って語るのでいったん置いときます。
重要なのは、常に女王の傍に寄りそう彼女がこの真珠に纏わる事件を知らなかったという事です。この事実によって、女王を取り巻く環境に関してはかなり多くの推測をすることができるようになります。


・真珠のセキュリティホール

まず、人魚にとっての重要なアイテムである真珠が、女王により持ち出されたという事を侍女すら知らないということにより、以下のことが推測できます。

1.真珠の存在は侍女にすら伝えないトップシークレットの扱いである
2.真珠の使用用途は女王以外の全ての人魚が知らない
3.真珠の存在、使用用途は女王の血筋にしか引き継がれない

これにより、そもそものすべての元凶として考えなければいけないのは真珠のセキュリティホールです。

確かに、真珠の存在や本来の使用用途を秘密裏にすれば、ルビスへ続く道を半ば強制的に遮断することができます。セキュリティを強固にするために、人魚のなかでもそれを知るものを女王の血筋のみに限定するという徹底ぶりはかなりのものです。

しかし、その中で「血筋のものがやらかす可能性」を考慮できておらず、また血筋のものであれば持ち出しが出来てしまう程度の緩い保管状況であったという点においては、『女王の血筋』の関係者全員に降りかかる過失ともいえるでしょう。

彼女(現人魚の女王)にとってこの真珠は当時「一番価値のあるもの」という程度の認識でしかなかった。その認識の浅はかさはしかし、門外不出のセキュリティを兼ねた一子相伝の情報である事も災いし、非常に不幸な「事故」を起こしてしまったのです。
そこまで重要なものであれば、その重要性を子供に真に伝えきるその時まで、そもそも女王以外が持ち出しできない(第三者に触れる機会を与えない)ような対応をするべきであった。これは明確に先代の女王の過失です。あるいは、遡ればそれよりももっと前の代の、マーメイドハープを封印することを決めた代の女王の方針ミスでもあるわけです。

横領は「動機」と「機会」が組み合わさることによって発生するものであるということは、会社のコンプライアンス教育なんかでも定期的に周知されるような内容です。

恋に落ちた幼く愚かな彼女が、使命をよく理解しないまま「動機」を得て、自身の血筋という立ち位置による持ち出しの「機会」を得てしまったから真珠は紛失してしまった。当然、主に悪いのは彼女で間違いありませんが、じゃあ重要性の教育や持ち出しのセキュリティはどうなっていたの?という話になれば、先代女王にも多少なりとも責任は出てきます。


・血筋への過度な期待

そしておそらくこれは、一子相伝とする際の「血筋への過度な期待」という要素も絡むでしょう。

自分の子はそんな過ちを犯すはずがないという、よくある「子は自身の分身体」という考え方は、ことさら成功者や重要な地位を担うような人には特に傾向として見られるものです。ましてやこの人魚という一族は、恐らく女王は血筋のものが代々受け継いでいく世襲制となっていたようですから、彼女がいずれ女王の地位を引き継ぐという事自体がすでに自他ともに周知の事実となっていたことでしょう。

その自他ともに周知の事実という空気感も重なり、先代の女王は「みんなの目もあるから、この子は賢く成長するはず」という考えをゆるぎないものにしてしまった可能性が考えられます。自分がそうだったのだから、という気持ちがあればなおさらです。


・「リーダー」に対するサポートケアの不足

そして、彼女は人魚の女王になった。犯した罪は誰にも知られず、自身の罪の意識により形成された『厳格な賢王』のペルソナをかぶりながら。

成長するにあたって彼女は、自身の使命を知り、自身の立場を理解し、往々として役割に値するようなふるまいを求められるようになったことでしょう。しかし、女王としての威厳を保つようにふるまう彼女の深層心理は、なにも知らず恋に恋して傷ついた少女のままで止まっているのです。
この表層と深層のちぐはぐさは、自身でもわかっているのに解きほぐすことができない物だったと思います。

本来、こういった状態からは第三者からの援助(いわゆるソーシャルサポート)を得ることができなければポシティブな成長をすることが難しいものです。しかし、彼女の立ち位置は、一子相伝の秘密を守らなければならない人魚の女王です。彼女のトラウマ(PTSD)を、いったい誰が理解し、癒し、支えることができるのでしょうか。

こうした構造的な欠陥問題は、いわゆる『リーダーの孤独』というものと相違ないものとなるでしょう。責任の重さ、同じ目線での相談者の不足、上長としての振る舞い、そして自身の犯した罪は理解されないだろうという閉塞感。女王として成長「しなければならなかった」彼女は、そういった見えない重圧にも日々耐えてきたことが想像できます。

もし、女王が世襲制でなかったなら、彼女は喜んですべての罪を打ち明け、女王となる事を拒んだことでしょう。しかし、そんな逃げ道すら彼女には許されなかった。彼女は、自身が苦しむ事になるレールから、逃れることはできなかったわけです。


・女王だけが悪い問題ではない

彼女は、確かに無知でひどい過ちを犯してしまいました。

もしかしたらドラクエⅡは彼女の失態によりルビスとの会合を年単位で阻まれ、ハーゴン討伐に対する大きなブレーキとなってしまった可能性が十分にあります。それにより、ベリアルがいくつかの町を滅ぼしてしまった可能性も考えられるかもしれません。

しかし、だからといって彼女だけを執拗に責め立てるのは、あまりにも惨すぎる。

なぜなら、このエピソードはそもそも
「ひどい失恋によるPTSD」「重大なセキュリティホール」「一子相伝の危険性」「子への過度な期待」「ソーシャルサポートの不足と困難さ」「リーダーの孤独」そしてそもそもの「悪意のある接触」が元となり起こってしまった内容です。

これに対し、彼女が持ち合わせていた要素は、「無知」と「恥」です。

大成し、成熟するまでの期間…子供だったら誰もが持ち合わせる「無知」と「恥」が、世界を闇へ陥れる可能性を孕む大きな過ちへと変貌させてしまった。ただ、それだけで起きてしまったのです。

不条理では、ないですか。

賢くなった彼女は、持ち出してしまったものの重要性を知り、一族を束ねるものとしての使命と立ち位置と振る舞い方を知り、過去の自身の愚かさを知って、後悔と共に学びを得た。しかし、自身の過ちそのものを取り戻すには、彼女はあまりにも身動きがとれない要素が多すぎた。

何度も、何度も、気が遠くなるほど何回も、自身の過ちを見つめ続け、頭では理解できているのに心がそれを拒み続ける地獄。自身に対する甘えの感情に自分で失望を重ねる地獄。従者にさえ一片たりともその情報を知らせることはなく、知らせることは許されず、自分だけが過ちを抱え続ける地獄。

私は考えます。この出来事は彼女だけが悪い問題ではない、と。


・男の手紙と、真実

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…ということで話は戻りまして、パーティー一行は無事、沈没船からもう片方の人魚の耳かざりを手に入れました。ちゃんとマーメイドハープに取り付けるための真珠も確認。すると…

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その人魚の耳飾りには、手紙の入ったビンが同封されていました。

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その手紙は、あの男…「彼」が書いたと思われる、人魚の女王宛ての手紙でした。


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「キミをだましていたこと ゆるしてほしい。
 たしかに最初は 人魚のキミとの出会いを
 金もうけのチャンスだと 思っていた。
 この耳かざりも 高く売れるだろうなんて
 考えていた。
 でも ボクは変わったんだ。
 キミと一緒に過ごして キミを知るたび
 キミを好きになった。
 けど バカだったボクは
 自分の本当の気持ちに 気づく前に
 父に キミのことを……人魚のことを
 話してしまっていた。」

「彼」からの手紙①

「父は キミの町へ行って 人魚を捕まえ
 見世物にして 金もうけをしようと 企んだ。
 それで ボクと父は 大ゲンカになった。
 ……それが あの夜
 キミに見られてしまった ときのことだ。
 あの時の 悲しみと 失望に満ちた
 キミの目は 一生忘れることは できない。
 傷つけてしまって 本当にごめん。
 父は ボクの説得も聞かず あろうことか
 他の商人仲間たちにも 人魚のことを
 話してしまった。」

「彼」からの手紙②

「父は そいつらと 人魚を捕まえに行くから
 ボクに案内しろと 詰めよった。
 そのときボクは キミへの想いを 証明して
 ほかの人魚たちも救う たったひとつの方法を
 思いついたんだ。」

「彼」からの手紙③

「ボクは父の言い分に
 納得したフリをして 船に乗り込んだ。
 人魚のことを知った すべての商人たちも 一緒だ。
 ボクの計画が うまく すすんでいれば
 この船は 海の底に 沈むはずだ。
 キミの生きる海で 永遠に眠るのだと思えば
 今から しようとしていることも 怖くはない。
 
 キミを愛した気持ちに ウソはなかった。
 傷つけてしまって 本当にごめん。
 ずっとキミを 想っている。」

「彼」からの手紙④

手紙の内容に号泣するサマル兄妹。本当にいい子だよな、君たちは…。泣きすぎてグッショグショな濁点つけて話す姿が、あまりにも愛らしすぎる。

パーティー一行は、耳飾りと手紙を携え、女王のもとへ戻ることに。


・白でも黒でもない、黒よりの灰色な恋愛

「彼」の手紙の内容、これは非常に賛否の分かれる内容じゃないかと思います。最初は金もうけのために近づいた、という点は残念ながら事実だったし、自らが約束を破って父親に人魚のことを話したのも事実。
この点を踏まえると、自身の想いを証明したいのなら自身の命を差し出してけじめをとる行為は当然である、決してこれは美談ではない、という考え方はあまりにも全うで反論の余地がないと思います。

でもね、ワイはこの「彼」の心変わりとその人間としての不完全さには何となく感じてしまうところがあるんですよ。例えるならばそう、これは浅田次郎さんの「ラブ・レター」という作品を見た時と非常に似たような心情を持ってしまうといいますか。


最初は、ただ利用しようとしていた。

外道として振る舞い、どんな行為をしてでも金銭を得ようとする自身の行いに、何も思うことはなかった。「彼」はずっと、そんな生き方をしていたんだと思います。父親も同じような考え方をしていた事から、それが当たり前の環境で生きてきたのでしょう。

でも、だからこそ、自身に対してひたすらに曇りのない愛情を向けてくれる「彼女」の存在は、とても心地よかったんだと思います。なぜなら彼女と接して恋人ごっこをしている間だけ、自分の汚さから目を背けられる甘美な時間だったのですから。
悪意を向ける事が当たり前で、悪意を向けられる事も当たり前だった日々だったからこそ、純粋無垢で無邪気な愛情は、彼のペルソナの下にある素顔をすこしずつ変えていったのだと思います。
自分の中で、もはや彼女との時間のほうが大切になっていると、自分でも気づかないほどに。

だから、何のためらいもなく人魚の宝を持ってきてくれた彼女の姿に、久しく感じたことのない良心の呵責を覚えたのでしょう。

本来の目的と自分の気持ちがかみ合わなくなり、会いに行く足が遠のいてしまったのでしょう。

そして、ちぐはぐな感情のままに父親へ人魚のことを伝え、父親と言い争いになった瞬間から自分でもおかしくなったことに気づいたんでしょう。

なんで自分は父親と言い争っているんだ、自分だってそれが目的で近寄ったんじゃないか。…あぁ、そうだ。彼女に対して自分はこんなにも酷い事をしているくせに、いつのまにか自分は、あまりにも身勝手に彼女をここまで好きになっていたんだ。
皮膚と同化するほどにベッタリと張り付いていた悪意のペルソナの下の素顔に、初めてここで気が付いた…という事でしょう。

しかし、自分の気持ちにようやく気づき始めた瞬間に見えたのは、彼女の絶望という「終点」

そうか、聞こえてしまったんだ。聞こえてしまったんだな。全部なにもかも聞こえてしまったんだな。楽しそうにする顔しかみてこなかったから、その顔が何を物語っている顔なのか、すぐにわかってしまった。
その顔がどんな事を考えている顔なのかは、悪事に身を投じてきた「彼」だからこそ、すぐに理解できてしまうという、皮肉。

ほんの一瞬みただけでそれがすぐにわかったのでしょう。だから、それ以上目を合わせることはなかった。いや、目を合わせられなかった。
自分のちぐはぐな感情と、本心と、それが今なにもかも一気に壊れてしまったという事実を映すその顔から、目を背けることしかできなかった。

(人魚の女王の回想④)

彼女が「もしかしたらこちらに気づいていなかったかも」と思うくらいに、彼は彼女を見ることができていなかったということがここで分かります。

彼が自身の本心に気づいたのは、
何もかも最悪の瞬間という、
これ以上ないほどの、黒い人生への報い。

自分のせいで人魚の秘密を知るものが増えてしまった。例え自分がここで逃げたとしても、この商人船団は人魚を諦めることはないだろう。いつか必ずそこに行きついてしまい、人魚たちが酷い目にあわされてしまうかもしれない。

そもそも、自分は最愛の人を絶望させてしまった。考えうる最悪の形で最愛を裏切った。ここで自分が逃げて彼女へ許しを乞うたとしても、こんなものは絶対に覆ることなどない。もうすべて、失ったのだ。

ならば、最適解は。
彼にとって最大の「贖罪」は。

独りよがりな愛も、自身が招いた最悪も、
自分で届けることも叶わない虚空の手紙も、
全て沈めてお仕舞いにすること。

お前が望むものは何も叶わないと、
お前が全て理解して受け止めて、
そのうえで最愛の人の海へ還ること。

「彼」は真っ黒な自分の人生を、いよいよ清算することなく終えてしまった。だれも救われてなどいない。なんなら同伴させていた豪商を父親含み軒並み道連れに冥界へと旅立たせている。豪商たちの家族の事も、なにも知ったことではない。とんでもない死神だ。全て彼のわがままで進み、自ら海の藻屑となり果てたのだ。同情なんて、する余地はない。

でも、そんな彼が残した最期のこの手紙は、「彼女」の深すぎる心の傷をきっと癒してくれる。あなたの想い人は、最期の最期まであなたの恋人だった。あなたと同じく自身の過ちに気づき、後悔し、酷い事をしたと自身を追い詰め、贖罪のために自身の命を、恋人と、恋人の町に捧げた。


これ、そろそろ一本の映画つくれませんか?

ドラクエは今までも、町が救われたとしても白でも黒でもないモヤモヤっとした気持ちにさせられるイベントはまぁまぁありましたよ。でもこの人魚の女王イベントは、全てすべての要素が不純物だらけで、それゆえにあまりにも主要人物の2人が人間臭すぎるんですよ。お前ら二人とも不器用すぎるんだよ。なんなんだよこの灰色の恋愛は。くそっ、切ないなぁ。やるせないなぁ。救いがないんだよなぁ…。


・女王へと届く、虚空からの手紙

戻ってきたパーティー一行は、さっそく人魚の女王へ人魚の耳飾りを差し渡します。

呪縛のような日々から解放された彼女は、きっと心の底からの安堵を得たと思います。全て、清算してくれた。二度の過ちと一族の危機を、この小さき勇者たちは救ってくれた。

自身の生涯を賭してでも、この子たちの力になろう。これからの生は、この子たちに捧げる。きっと、そんな心持ちだったと思います。

しかし、マーメイドハープを受け取ったパーティー一行は、表情を変えない。不思議に思った人魚の女王が問いかけた時、

一同がお互いに目を合わせ、覚悟を決めた後、女王の手にあの手紙が渡されました。

手紙を受け取った瞬間、ボロボロと泣き崩れる人魚の女王。せめて、この幼き勇者たちの前ではもう二度と見せまいとこらえていたであろう最後の涙の防波堤は、ここで完全に決壊してしまいました。

涙が落ちた瞬間、すぐに後ろを振り向いた侍女の人魚が非常に印象的でした。

あぁ、くそ、まじですごいいい子たちだな、最高だなこのパーティーは。

手紙を読んだ瞬間に、なにもかもぐちゃぐちゃになって言葉も出せず泣きじゃくるような女王の姿を想像して、心情を察して退席してあげるその聡明さと気遣い。
本当だったら、手紙を読んで心が救われるであろうその瞬間を目の当たりにしたいという気持ちも持つはずなのに、「彼女」の個としての感情を、この子たちは優先してあげたということなんです。

自分も、ここですぐに引き返して女王に話しかけるという操作を、することができませんでした。手紙を読んだ彼女の姿をすぐに引き返して覗き見ることは、この勇者たちの気遣いを無下にすることだと思って、指が止まってしまったんですよ。

もうね、情緒がメチャクチャでした。
言葉遣いやキャラのしぐさなど、一挙手一投足のすべてに「感情」が込められすぎていて、「お、俺は何をみせられているんだ…これ、本当にドラゴンクエストか…?」と思ったほどでした。


・本当はきっと、すぐそばに救いはあった

さて、そろそろ〆も近くなってきたのでこの「侍女の人魚」についても語らせてください。

自分はこの、女王と侍女の関係性もかなり尊いなと思ったりしてるんですよ。まず真珠の行方について打ち明けるシーン、そもそもこの侍女の人魚を退席させていなかったということ自体に何かこう、感じません?ワイが過敏なだけ?それならゴメン。

いずれにせよ、本来であれば真珠についてのお話は他のどの人魚にも知られていなかったトップシークレットである事に間違いはありませんでした。この重大な内容を、女王が初めて打ち明けた人魚サイドの相手がこの侍女の人魚であったという事実は、もう少し妄想考察をしてもいいのではないかと思うんです。

まず、女王が一番信頼している人魚は、この侍女の人魚である事は間違いないと思います。そして回想で退席させなかったのは、女王側としては是非とも貴女にも聞いてほしいという意味で、意図して同席させた路線を強く推します。

恐らく、その意図は懺悔だったと思います。偉そうに女王として君臨していた私は、実はこんな有様なのだ、と。
勇者たちには話すのに、長年自身の世話をしてくれている侍女には打ち明けないのは自分が許せない。そんな心持ちだったのではないかと思います。

語り終わった彼女のこの発言から、なんとなくそういった意図を感じました。

で、すべてを聞き終わった後の侍女さんは、やはり少なからずショックは受けているような様子でした。今まで仕えていた賢王のような女王が、恋に傷つき過ちを後悔しワンワン泣いてしまうようなごく普通の子であったことに、まだ理解が追い付いていない様子だと感じました。

けど、この二度目の涙を流すシーンでは、初めて彼女は人魚の女王を向きます。今まで凛として前を向き続けていた彼女が、初めて女王のことを気にかけ、背を向けた瞬間です。

そして、4人が退席したその瞬間、彼女はすぐに女王へと駆け寄るようなしぐさを映しつつ、画面はフェードアウトします。

多分…彼女は泣きじゃくる女王の横にそっと立って、涙を拭いてあげたりしたんじゃないかと思います。手紙を読みながら声を上げて泣く女王をもしかしたらそっと抱きしめてあげていたかもしれません。
全てを知った彼女は、それでもなお女王の傍に仕えたい…いや、女王の横にいてあげたいと願ったのではないかと思います。

そしてこれは、侍女である彼女から見ても人魚の女王は立派に女王としての責務を全うし町を治めていた歴史がある事の証左でもあります。

我々プレイヤーは、この一連のエピソードを切り抜いた内容だけを見ているので、人魚の女王の普段の統治がどのようなものだったのかは想像の域を超えることができません。なので、人魚の女王は人によっては泣きじゃくって自分の責任も果たさない弱い女王としかみない人もいるかもしれません。

しかし、何十年という長い時を共に横で過ごした侍女の人魚から見れば、人魚の女王は誇るべき王であった。自身がこの女王に仕えることに対し、もしかしたら信仰心すら持ち合わせていたかもしれません。

事実人魚の女王は、人魚の聖域でもマヒャド使いの幹部相手に毅然とした態度をとり、同族を守り切ることが出来ていますしね。

もしほんの少し人魚の女王に勇気があったら、もっと早く、もう少しだけ心が楽になるきっかけを作ることができたんじゃないのかな…なんて思ったりします。きっと侍女の人魚は、もっと早くから彼女の良きパートナーのような存在になっていたに違いありません。

理解者が傍にいれば、PTSDの症状にも向き合って、そして他の近衛兵の人魚にも力を借りながら、自身の過ちに向き合う礎が出来た未来もあったのかな…などと。単純に悩みを打ち明けるだけで町の人魚たちは協力してくれるくらいには、人魚の女王は本当は慕われていたと思いますけどね。

まぁ、そういう所も含めて、人魚の女王は「彼」に似てますよ。本当に不器用なモン同士なんだからさ。


・まとめ

ということで、このnoteはそろそろいい加減〆に移りたいと思います。最後はエンディングにて心の整理をつけた女王を眺めながら終わりにしましょう。

エンディングでは、女王は人間たちと手を取り合っていこうと考えている事、そして我々の武器は協力、信頼、そして『愛』であるのだと語ってくれたのが非常に印象的でございました。PTSDを乗り越えた人魚の女王の、なんと力強い発言よ。愛です。愛ですよ。

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この「ふふふふっ!」に込められた栄養、分かりますか?

過去の物理的な過ちも、自身の恥も、女王としての威厳も、立場も、そして癒えることはないとあきらめていた心の傷すらも、すべてを救ってくれた勇者。そんな相手が、我先に自分の国に来てくださいと言い寄ってくることで自然と漏れ出たこの幸せそうな笑みを。

とんでもなくうれしかったんだと思いますよ。あんな事があった後でも対等以上の存在として接してくれること、自分の存在を認めてくれることが。

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人魚の女王、いや、「愛を知りたかった幼き少女」の心が救われてよかった。ここまでの冒険で心をたくさん動かしてくれた小さく勇敢で心優しい勇者たちが、この大きな少女の心を救ってくれて、本当によかった。

ということで、不器用で過ちだらけの、愛すべき人たちの物語でワイの心がぐちゃぐちゃになっちゃったという話はこれで終わりです。


最後に、このnoteを書きながらリピートしていた摩天楼オペラのすごくいい曲を2曲ほど紹介して〆とさせていただきます。興味のある方は是非、歌詞を見ながら聴いてくださいませ。


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