
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2026年1月20日に開催された第59回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会にて、「H3」ロケット8号機打ち上げ失敗の原因究明について、最新の状況を報告しました。
準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」5号機を搭載したH3ロケット8号機は、種子島宇宙センターから日本時間2025年12月22日10時51分30秒に打ち上げられました。
しかし、1段目と2段目の分離後に2回予定されていた2段目エンジン燃焼のうち、第2回燃焼が早期に停止してしまったことで、打ち上げは失敗しました。打ち上げまでの経緯や打ち上げ当日の模様については、以下の記事をご参照下さい。
- 【更新】H3ロケット8号機打ち上げ失敗 「みちびき」5号機を予定の軌道へ投入できず(2025年12月22日)
また、打ち上げから3日後の2025年12月25日に開催された前回の第58回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会では、初期段階での分析結果が報告されました。前回の会合については以下の記事をご参照下さい。
- 「みちびき」5号機は打ち上げ当日に再突入か JAXAがH3ロケット8号機の原因究明状況を報告(2025年12月25日)
「みちびき」5号機は2段目の飛行開始時点ですでに離脱していたか
打ち上げから間もなく1か月となる1月20日に開催された今回の会合では、JAXAでH3プロジェクトチームのプロジェクトマネージャー(PM)を務める有田誠さんが、原因究明についての最新状況を報告しました。
まずは「みちびき」5号機の打ち上げ当時の状況です。
H3ロケット8号機の2段目に搭載されていたセンサーやカメラで取得・撮影したデータや画像を分析した結果、「みちびき」5号機は2段目エンジンの第1回燃焼が始まった時点で、すでに2段目から離脱してしまっていたと推定されることが明らかにされました。
次に掲載するのは、H3ロケットの2段目に搭載されていたカメラが捉えた飛行経路後方の様子で、前回の会合でも示されたものです。
1段目と2段目の分離後に撮影されたもので、上段が8号機(F8)、下段が「みちびき」6号機の打ち上げに成功した5号機(F5)のカメラで取得した画像になります。

8号機の画像には、右下に何らかの物体が写っています。これが、2段目から離脱してしまった「みちびき」5号機とみられています。
前回の会合の時点では、「みちびき」5号機はH3ロケット2段目とともに、一旦は地球を周回する軌道に入ったとみられていました。
一方、分析が進んだ今回の会合の時点では、1段目がエンジン燃焼を終えて2段目から分離するとともに、「みちびき」5号機も2段目から離脱。地球を周回することはなく、1段目の落下予想区域内に落下したとみられています。

フェアリング分離直後に衛星搭載構造が損傷した可能性
本来なら打ち上げの最終段階で分離されるはずの衛星が、この段階で離脱してしまったとみられる理由として、1段目での飛行中に実施されるフェアリング分離のタイミングで、2段目と「みちびき」5号機をつなぐ衛星搭載構造(※)を損傷させた何らかの異常が発生したことが考えられるといいます。
※…2段目上部に取り付けられた「衛星搭載アダプタ(PSS)」と、その上部に取り付けられた「衛星分離部(PAF)」からなる円錐形の構造。

異常が発生した時点では1段目エンジンが燃焼中だった=加速が生じていたため、「みちびき」5号機と損傷した衛星搭載構造の一部は、2段目の液体水素タンクに向かって落下。タンク上部に設けられている加圧配管を損傷させたことで、液体水素タンクの圧力低下が始まります。
その後、1段目エンジンは燃焼を終了しますが、この時点で加速も停止するため、押される力から解放された「みちびき」5号機と損傷部分は2段目から離れていくことに。間もなく2段目エンジンの第1回燃焼が始まったことで、すでに離脱してしまった「みちびき」5号機を残したまま、2段目は飛行を継続したと推定されています。

2段目の衛星分離部に搭載されていた加速度センサーや温度センサーのデータは、衛星分離部の機軸加速度がゼロになったタイミングで断線したことを示しているといいます。また、衛星と衛星分離部の間に設けられている分離スイッチのデータに変化はありませんでしたが、分離スイッチにつながる配線が断線すると非分離状態を示す仕様になっていることから、「衛星分離信号は送出されたが分離スイッチによる分離の検知がされなかった」という状況とも整合するとしています。
さらに、2段目のエンジン「LE-5B-3」は液体水素タンクの圧力低下にともなう推力低下(20~35%)の割に、短い燃焼時間の延長(5%程度)で第1回燃焼を完了させましたが、本来搭載されているべき「みちびき」5号機を失って質量が軽くなっていたと仮定すれば説明できるとされています。
原因究明ではフェアリング分離開始直後の事象に着目
打ち上げ当時に起きた異常の全貌が徐々に明らかになっていく中で、原因を絞り込むためのFTA(故障の木解析)も進められています。
今回の会合の時点ではまだ原因の特定には至っていませんが、フェアリング分離時の衝撃や、分離したフェアリングの接触・衝突、推進剤や高圧ガスの漏洩といった出来事が直接の要因になった可能性があるとして、評価が進められています。

加速度のデータや取得された画像からは、衛星搭載構造で検出された大きな加速度や「みちびき」5号機の損傷といった異常がフェアリング分離開始直後のタイミングで起きたことが示唆されることから、今後も引き続きこのタイミングに着目して原因究明を進めていくということです。
文・編集/sorae編集部
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