高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言を機に、日中関係の悪化が続いている。日本企業は近年、中国の大学生をリクルートしていたが、その動きに黄信号が出ている。企業にとっても、中国大学生にとっても「痛手」になりかねない。(外国人労働者についての特集全9回の8回目)
【写真】日本に就職するハズが…中国の大学で開催された日本企業への就職説明会
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「『日本と中国の現在の政治情勢から、開催を取りやめた』と、領事館から連絡がありました」
そう話すのは、一般社団法人・高度外国人材支援センター代表理事の琴安国(こと・あんこく)さん。中止になったのは、例年は12月に中国・大連で行われていた「日本語人材育成フォーラム」。中国の大学生の日本企業への就職を念頭に置いたフォーラムで、日本領事館が主催だ。琴さんはこのフォーラムで、日本企業への就職市場動向について、講演するはずだった。
中国の大学「学生の日本渡航は認められない」
台湾有事をめぐる高市首相の発言の影響は大きい。
中国東北部出身の琴さんは、中国教育部(日本の文部科学省にあたる機関)傘下にある大学卒業生就職協会の日本窓口として、中国の若者の日本での就職の支援を行ってきた。2026年1月には、中国の大学4年生の九州への「修学旅行」を企画していたが、これも政治情勢から、立ち消えになった。
この修学旅行は北九州市とともに企画し、福岡銀行と在瀋陽日本領事館が支援していた。中国の大学生30人ほどが1週間かけて九州各地をめぐりながら、地元企業を見学。旅の終わりに北九州市役所で企業見学の感想を発表してもらい、そこに集まった企業の採用担当者と面談し、面接や内定にもつなげる予定だった。
参加者募集を領事館の公式サイトに掲載したのは25年11月1日ごろ。「大学や大学生からの反応はよかった」(琴さん)が、同月7日、高市首相の台湾有事をめぐる発言があると、1週間後には、中国の大学から、こう連絡があった。
「日本で何かあったら困る。在校生の日本渡航は認められない」
公式行事は止まっている
中国政府から大学側に「学生を日本に渡航させるな」と明確な指示があったわけではない。中国国営中央テレビや政府機関の公式SNSなどで、「日本への渡航については慎重に判断してください」と伝えられただけだが、反応は早かった。
琴さんはこう話す。
「中国の大学は、その『空気』を読んで行動する。日本の外交官や企業も同様です。ですから、私が知るかぎり、中国での日本が関係する公式行事はすべて止まっています」
















