【独自】熊本県、公益通報者把握か 旅行割引事業巡り 木村氏「あなたのおかげ」

熊本日日新聞 2026年1月18日 05:00
熊本県庁
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 熊本県がコロナ禍で実施した旅行割引事業を巡り、2023年9月に県上層部の対応を追及する公益通報(外部通報)をした県職員に対し、当時副知事だった木村敬知事が同年12月、「あなたのおかげで悪だくみが止まった」と伝える音声データが存在することが17日、通報者の代理人弁護士らへの取材で分かった。職員はその後、懲戒処分を受けた。県は現時点で「通報者が誰かは知らない」という立場だが、木村氏の発言に基づけば県は処分の前に通報者を把握していたことになる。

 県の第三者委員会が24年4月に公益通報の調査報告書を出した直後、通報者は部下へのパワハラを理由に懲戒処分を受け、その後退職した。通報者側は「通報者を特定した上での報復措置だ」として処分の取り消しを求めて県人事委員会に審査請求しており、代理人らが近く記者会見する。

 公益通報は23年9月、報道機関12社にあった。県の旅行割引事業で一部の事業者が助成金の不適切受給を疑われているのに「県上層部が担当課に見逃しを指示した」という内容だった。

【独自】熊本県、公益通報者把握か 旅行割引事業巡り 木村氏「あなたのおかげ」

 通報者側によると、木村氏は23年12月27日、通報者を県庁の副知事室に呼び出した。音声データでは、木村氏が通報者に「お礼を言っておかないといけない」と発言。「僕はあなたに助けられた」「あなたのおかげで悪だくみが止まったけん、昨日の報道のようになった」と述べていた。

 「昨日の報道」とは、24年春の知事選で自民党県連が支援する有力候補に木村氏が浮上したと報じた熊本日日新聞の記事を指していると通報者側はみている。

 木村氏は17日、熊日の取材に「その発言をしたかどうかも含め、人事委員会の場(審理)で私の見解についても正式に答えているので、それ以上のことを申し上げるわけにはいかない」と答えた。

 通報者側は、懲戒処分のほかにも定期異動で課長級から「事実上の降格になった」とし、精神的に耐えられなくなってその後に退職を余儀なくされたと主張。「一連の県の対応は公益通報者保護法が禁じた不利益な取り扱いに当たる」と訴えている。

 県の旅行割引事業を巡る公益通報について県の第三者委は「不適切受給とは言えず、見逃し指示も認められなかった」との報告書を公表した。(植木泰士、小山智史)

 法改正で通報者保護強化

 公益通報者保護法は組織の不正を告発(通報)した労働者を不利益な扱いから守るのが目的で、昨年6月の改正で通報者保護の規制が強化された。報復的な解雇や懲戒処分に関与した関係者に6月以下の拘禁刑か罰金30万円、法人の場合は3千万円以下の罰金を科す刑事罰が新設された。2027年までに施行される。

 通報者の秘匿性は現行法でも最重要視されているが、兵庫県庁で24年に公益通報した元局長が死亡した事例など通報者が特定されるケースが相次いだ。これを受けて改正法は、これまで指針にとどまっていた通報者が誰かを探る「探索行為」を明確に禁じた。

 さらに通報から1年以内の解雇や懲戒処分を報復と「推定」する規定も導入。不利益な扱いに当たるかどうかの立証責任は、改正後は雇用側が正当性を証明する必要がある。一方、「不当な配置転換」については「推定」の対象外で、罰則導入も見送られた。(植木泰士)

 熊本県の旅行割引事業 コロナ禍の経済対策で実施された「くまもと再発見の旅」。一部事業者が助成要件を満たしていないとの疑惑が2023年1月以降に浮上し、県は14社に助成金返還を求めた。県上層部が担当課に不適切受給の「見逃し」を指示したとの公益通報を受けて調査した県の第三者委員会は「不適切受給と言えず、見逃し指示は認められなかった」との報告書を公表。その後就任した木村敬知事は「旅行事業者と県民に陳謝する」としたが、助成金は事業者から「要求がない」として返金しなかった。

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