公明党になったのに なりきれない立民な人々
記事では、↓この話をします。
加藤文宏
公明党と羊泥棒
教会の信徒を、宗旨が違う別の教会が奪うことを羊泥棒と呼ぶ。政治的理念が水と油ほど違う公明党に立憲民主党が吸収され、公明党そのものになった中革連をめぐる一連の動きは、政界の羊泥棒大作戦と呼ぶのがふさわしい。
登場人物は、中革連、公明党、創価学会、立憲民主党、立憲民主党の支持者、左翼・リベラルを標榜する報道機関だ。
物語は混沌とした石破政権と、高市政権の誕生から始まる。
公明党は国民民主党から断られて、立憲民主党と談合を始めた。減少傾向にあるとはいえ票数が読める創価学会票は、組織票が期待できなくなっていた立憲民主党にとって、とても魅力的だった。また高市政権が動き出すと、立憲民主党は若年層と働き盛り世代からの支持を完膚なきまでに失って焦った。
選挙協力では足りない。そこで公明党主導で新党を結成することになった。公明党および創価学会は、左翼・リベラルを宗旨とする立憲民主党から議員を奪い中革連に吸収した。政治的な羊泥棒である。
こうなると立憲民主党支持者や、同党を同胞とみなしてきた報道機関は、議員たちを盗まれた側という構図になる。
ただし、そこまで単純ではなく、公明党に向かって歩き出した羊議員のあとを支持者たちが追い、そのまま中革連の本堂に入ってしまった。報道機関は、立憲民主党議員だけでなく同党の支持者まで盗まれてしまったのだ。
さらに、物語は複雑な様相を帯びる。
本堂に掲げられた看板は「中道改革連合」であるにもかかわらず、公明党は「五つの旗演説」で、立憲民主党が溶解しきって、公明党そのものになったのを宣言した。
物語が、ホラー映画なみの恐ろしい展開になったのである。
立憲民主党の議員たちは公明党と創価学会に迎合し、服従し、票をもらうため、彼らの理念と政策と意思を封印し、これらに基づいて活動してきた過去を忘れることにしたのだった。立憲民主党議員としては死に、数だけは多いゾンビになったのだ。
ゾンビと半熟ゾンビ
公明党と立憲民主党は水と油だった。
主要なところでは次の3点が相違していた。
第一点、安保法制。
公明
安保法制の整備を進め、憲法9条下の専守防衛を堅持する。
立民
安保法制では違憲部分を削除する。
第二点、憲法。
公明
自衛隊を憲法が定める統治機構に位置付ける。
立民
安保法制をもとに自衛隊の存在を明記すれば憲法の基本原理に反する。
第三点、原発。
公明
原発再稼働を認める。
立民
原発ゼロ基本法案の提出。原発ゼロ宣言。
上記のように、立憲民主党は安保法制反対、自衛隊は違憲、原発ゼロをスローガンとして掲げてきた。
これが中革連では次のようになった。
安保法制
安保法制が定める存立危機事態における自国防衛のため自衛権行使は合憲。
憲法
自衛隊の位置付けなど国会での議論を踏まえ、責任ある憲法改正論議を深化させる。
原発
安全性が確実に確認され、実効性のある避難計画があり、地元合意が得られた原発を再稼働。
端的に言えば、立憲民主党の議員たちは安保法制賛成、自衛隊合憲、憲法改正、原発再稼働へと寝返ったのである。
日本共産党の小池晃書記局長は「(立憲民主党は)安保法制廃止と、立憲主義を取り戻す立場を表明し、わが党もそれを確認し、選挙の協力を行ってきた」とした上で、「党名を変えるということを、一晩で国会議員の中心部分だけで決めるのは、私たちの民主的な党運営からすると、なんでそんなことができるのか非常に疑問に思う」と語った。
これは、また会う日までの置き手紙ではなく、立憲民主党の裏切りへの日本共産党からの三行半と言えそうだ。
日本共産党に対してだけでなく、左翼やリベラル層への裏切りはこれだけではない。
反宗教の立場を鮮明にして議員の枠を超越した活動で知られた有田芳生氏ばかりか、立憲民主党も(かつての支持母体であり組織票の一画を担っていた立正佼成会の存在を隠しつつ)反宗教的、反公明党・反創価学会の立場を取っていたが、今や中革連であり、中革連であるなら公明党で、彼らが頼りにする組織票の大元である創価学会の影響下にあることになる。
反原発議員の米山隆一氏も、再稼働を目指す中革連に入党した。
報道機関は、羊泥棒の被害者として記者会見で安住淳氏を質問攻めにした。すると安住氏は自らが議員バッジ欲しさのためゾンビ化したと言えるはずもなく、矛盾に満ちた返答を繰り返すばかりだった。さらに政権の座を目指すなら責任がともなうとし、立憲民主党のように何でも反対の無責任な姿勢は取れないと言わんばかりの発言まで飛び出した。
あたりまえだが世論の反応は辛辣で、慌てた一部の立憲民主党議員たちが票欲しさの本音と体面との板挟みになり、中革連の方針に従ってばかりではないと言ってみたりしている。ゾンビになりきれない、往生際の悪い半熟ゾンビといったところか。
だが、立憲民主党の執行部はそろって中革連だ。立憲民主党を名乗る党の実態は中革連と変わりないのだから、異論がある議員は立憲民主党や中革連からも離党していなければおかしい。
中革連だろうと立憲民主党だろうと、意識がはっきりしている公明党を除いて、他の議員たちはゾンビか半熟ゾンビかの違いしかないのである。
勝っても負けても地獄
中革連は公明党にとって党勢拡大装置だ。
現時点での衆議院会派別所属議員数は以下の通りで、単独では議席数第5位の公明党が、中革連で立憲民主党を飲み込み、同化させたことによって、自民党に伍する規模の政党へと膨張した。
繰り返すが、中革連は立憲民主党でも、立憲民主党と公明党が双方の政策を補完し合う党でもなく、公明党そのものだ。
衆院選での中革連の勝利とは、自民党を超える議席を獲得するか、自民党の単独過半数を阻止した場合である。
この場合、勝利するのは公明党なので、ゾンビ化によって公明党に馴染みきった元立憲民主党議員は別として、本音と建前の葛藤に苦しむ議員や、宗教団体を母体とした規律にうるさい党風土に居心地の悪い思いをする議員が続出するだろう。
今は公明党側に立憲民主党の「規模」への期待があるので、安住淳氏のような煮え切らない、中途半端な姿勢と発言が容認されている。しかし勝利したあとは言論が統制され、「五つの旗」にそむく議員はパージされるだろう。なぜなら、彼らは公明党から都合の良い「駒」であることを期待されているだけの存在だからだ。
もし党是を無視してもパージされないなら、単なるデタラメ集団でしかない。
いっぽう敗北は、自民党が過半数の議席を獲得した場合である。このとき公明党は組織票を元手にして比例制で現在の議席数程度は死守するだろうが、立憲民主党はかなり議席数を減らしているはずだ。
かろうじて議員バッジを手にした元立憲民主党議員は、公明党である中革連に居残るか、廃墟化した立憲民主党に戻るか迷いが生じるだろう。中革連でゾンビになったままでいるか、みすぼらしい家で暮らすかの選択が待っていると言える。
もはや共産党は助けてくれない。
ともに行き場のない支持者たちが加勢してくれるかもしれないが、圧倒的多数である非支持者たちは、中革連の公明票に頼ったゾンビ化議員を「嘘つき」で「汚い手を使う」「ズブズブ議員」と見ている。
嘘つきでズブズブなのは、支持者たちも変わりない。
左翼・リベラルの総合商社かつ大手である立憲民主党が中革連化によって崩壊して、自らの過去を嘘で塗りつぶしたことで、彼らが支持者とともに責任を負う気がないまま安全圏から石を投げつけ、他人の足を引っ張り、身内だけで金銭と名誉を循環させるエコシステムの住人であり、そのくせ正義の判定者として振る舞ってきたのが白日の下にさらされた。
元立憲民主党議員、支持者、左翼・リベラルは戻るべき場所だけでなく、正義と正義の裏付けにしていた名目を失ったのだ。
羊泥棒大作戦の結末
選挙は結果が出るまで、勝敗だけでなく、その後の行く末も分からない。
とはいえ、長期的に勢力を維持するのは無理としても、一時的に規模を膨張させた公明党が、今のところ得をしているかに見える。
公明党の母体が創価学会である以上、同党の適正規模は創価学会票の規模とほぼ等しいものだろう。これが、政治的な羊泥棒によって立憲民主党議員140名分まで規模が拡大したとあっては、健全とは言い難い影響が必ず現れるはずだ。もちろん創価学会も影響と無縁ではいられないだろう。
創価学会を母体にした公明党に、政教分離の問題はない。
しかし中革連によって、これまで以上に創価学会が注目され、自ずと信徒家庭の問題や、高額献金や、過去の過激な折伏が今更のように話題になり、批判され、同教と信徒が嫌悪されている。
統一教会/家庭連合の信徒や、彼らと関係したとする人々を「壺」と呼ぶなら、創価学会の信徒と関係した人々だけでなく中革連の議員は「仏壇」であるとする声がある。
有田芳生氏が中革連に加わり、公明党と統一教会問題に取り組むと姿勢を明らかにしたが、これは同時に創価学会問題には触れず、同教と敵対関係にある宗教に対して追及や攻撃を行うと宣言したようなものだ。
有田芳生氏が創価学会問題に触れないなら、彼と協調体制以上の関係にある鈴木エイト氏も取り上げず、同じく紀藤正樹氏と全国弁連も何があっても見て見ぬ振りをするのではないか。かつて、自民党議員と旧統一教会の関係は「濃い」が、立憲民主党との関係は「淡い」という、珍妙な濃淡論を主張したのが紀藤氏である。
統一教会/家庭連合が政治と深い結びつきがあったから見逃されてきたとするスティグマが、これからは有田芳生氏と紀藤正樹氏や全国弁連の名とともに創価学会へと反転するのではないか。なにせ、統一教会/家庭連合のアクティブな信徒数は6万人ほどとされているが、創価学会は600万票ほどの組織票を用立てられる規模の宗教法人で、これによって有田芳生氏をはじめとする立憲民主党議員が公明党化したのである。
一事が万事だ。
中革連の結党にともない公明党と創価学会に与えられた汚名は、政策や教義にまつわる批判以上に、「たくらみ」「不誠実」「身勝手な保身」といった清潔な党や平和の宗教を名乗る両者にふさわしくない物語をともない、強烈なスティグマになるのはまちがいない。
このスティグマは、成人したばかりで初めて投票する人が、働き盛りになっても語り継がれるだろう。
それは、郵政民営化が争点になった衆院選で実態が分からないまま「郵政改革」のまやかしに目が眩み賛意を示してしまった人々や、「コンクリートからヒトへ」や「子ども手当」などマニュフェストが小気味良いものに感じられ民主党に投票した人々が、いまだに後悔の念を語るようにだ。
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