高市早苗首相が、23日の通常国会冒頭で衆院を解散すると表明した。衆院選は27日公示、来月8日投開票となる。
首相は記者会見で解散理由について、連立政権の枠組みが自民党と日本維新の会に変わったことや「経済財政政策の大転換や安全保障政策の抜本強化などに挑戦する」ためだと述べた。
なぜこのタイミングなのか、納得できる説明とはいえない。
高市政権には物価高をはじめ、首相の台湾有事を巡る発言に端を発した対中関係の緊張など課題が山積している。
首相は「責任ある積極財政のもとで強い経済を実現する」とし、2026年度予算案審議への影響を「最小限にとどめる」と述べた。なぜ予算成立後の解散にしないのかという問いには「当面の対策を打つことができた」からだと繰り返した。
予算案を編成した以上、年度内成立を図るのが内閣の責任であり、それより優先される課題はないはずだ。政治空白をつくる解散に大義はない。
しかも解散から投票日まで16日しかなく、戦後最短の超短期決戦となる。高水準を維持する内閣支持率を背景に、野党の準備が整わないうちに選挙を戦いたいというのが本音だろう。
首相は与党で過半数に達しない場合は退陣する意向を示し、今回を「自分たちで未来をつくる選挙」と名付けた。だが、国会審議より政権基盤強化を優先させるのは解散権の乱用であり、自己都合にほかならない。
■選挙を私物化するな
首相は会見で、安全保障関連3文書の改定前倒しなどを挙げ「国論を二分するような大胆な改革に挑戦していきたい」と述べた。首相自らが国内の対立や分断をあおるような発言をすることは容認できない。
自民党が少数与党に転落した衆院選からまだ1年3カ月で、議員の任期は3分の2以上残っている。有権者は、勢力が伯仲する与野党が熟議で政策を進めることを求めた。その民意は今も変わっていないはずだ。
1月の衆院解散は1990年以来で、戦後2回しかない。4月に予定されていた軽油引取税の暫定税率廃止など幅広い政策の実施が遅れる可能性が高い。
超短期決戦のため、各党が公約を練り、有権者が吟味する時間も極めて短くなる。人口減少対策や国際社会での日本のあり方など、本来は国政選挙で重視されるべき中長期の課題の議論を深めるには時間が足りない。
政権には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る新たな問題も浮上し、野党の追及で内閣支持率が低下する前に解散する思惑も指摘される。
維新が衆院選と同日投開票の大阪府知事と大阪市長の出直し選に踏み切ったことも看過できない。選挙は民主主義の要だ。にもかかわらず自維政権が選挙を私物化する姿勢は目に余る。
この時期は厳寒で北海道などは大雪に見舞われることも多く、有権者は街頭演説や投票所に足を運びにくくなる。時期、手法とも有権者を軽視した解散と言わざるを得ない。
■難題後回し許されぬ
物価高が長引き、暮らしが上向いている実感は乏しく、政府は要因である円安に有効な手を打てていない。積極財政への期待から株価は上昇しているが、今後の財政悪化を懸念して長期金利は上昇している。
対中関係ではレアアース(希土類)の輸入にも影響が出始めた。トランプ米大統領の言動などで国際情勢も混迷を深める。
こうした難局にいかに対処していくのか、まず国会の場で議論を掘り下げるべきだろう。
社会保障制度に関する国民会議の月内設置を見送る一方、首相は社会保障の財源である食料品の消費税率を2年間ゼロとする方針の検討を表明した。
首相は昨年の自民党総裁選で減税に意欲を示していたが、就任後は「レジのシステム改修に時間がかかる」などとして慎重姿勢に転じた経緯がある。
立憲民主党と公明党が結成した「中道改革連合」や野党各党が消費税減税を掲げていることを受け、争点をつぶす狙いが透ける。与党として責任ある態度とは言えない。
■立憲は転換の説明を
中道は綱領と基本政策を発表し、安全保障関連法に関し「存立危機事態での自国防衛のための自衛権行使は合憲」とした。立憲は「違憲部分の廃止」を訴えてきたが、方針を転換した。
立憲は「原発ゼロ」も封印し、原発依存脱却を目指しつつ、地元合意などを条件に再稼働を容認する。憲法でも、自衛隊を明記する自民党の9条改憲案への反対に触れず、自衛隊の位置付けなどについて「改憲論議の深化」を目指すという。
立党の原点だった主張を唐突に変えた形だが、党内議論は乏しく、支持者には戸惑いも広がる。右傾化を強める政権への対抗軸結集は必要だとしても、与党との違いも見えにくくなった。明確な説明が必要だ。
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