高市早苗首相が19日に記者会見し、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散すると表明した。物価高対策を最優先課題に掲げながら、2026年度予算案の本年度内の成立を断念してまで、なぜ国民に信を問う必要があるのか、納得できる説明はなかった。大義を欠く権力乱用と断じざるを得ない。
首相は、自民党が連立相手を公明党から日本維新の会に組み替えたこと、自身が掲げる「責任ある積極財政」の是非を問うことを、衆院解散の理由に挙げた。自維連立はいずれ国民の審判を受ける必要があるとしても、冒頭解散は経済最優先の姿勢と矛盾する。
国民は積極財政の効果を実感するに至らず、財政悪化の懸念から長期金利上昇と円安が進み、物価高騰がさらに進む可能性も指摘される。首相の経済運営への評価に戸惑う有権者も多いだろう。
首相は政策実現には「安定した政権基盤」が必要と訴えたが、説得力に乏しい。現状でも予算案の年度内成立は可能だったからだ。衆院で過半数を占める与党に加え野党の国民民主党も予算案の早期成立への協力を約束していた。
首相が自民党の衆院選公約にする考えを示した食料品の消費税減税も、すでに多くの野党が唱えており、解散などしなくても、約2年9カ月残る現衆院議員の任期内に実現できる状況だ。
冒頭解散は結局、内閣支持率の高いうちなら与党が勝利できるとの党利党略でしかない。台湾有事を巡る首相答弁や裏金問題などの「政治とカネ」、旧統一教会と自民党との密接な関係に対する追及を避ける意図もうかがわれる。
衆院選は27日公示、2月8日投開票の日程で、解散翌日から投票まで戦後最短の16日間。経済や外交・安全保障政策など重要課題で論戦を深めるには十分な期間とは言い難い。予算編成期の地方自治体には選挙事務が重い負担になる。雪深い地域はなおさらだ。
憲法7条は、内閣の助言と承認による衆院解散を天皇の国事行為の一つとし、解散は「首相の専権事項」と解釈されてきた。
しかし、内閣不信任決議案が可決されたり、国論を二分するような問題がないにもかかわらず、勝てそうだからという、党利党略の解散が「国民のために」と言えるのか。衆院選では各党・候補者の公約はもちろん、冒頭解散の是非も問われなければならない。
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