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先生と責任/Novel by レイ・クローナ

先生と責任

5,373 character(s)10 mins
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『アコはユキトを追ってここまで来た』。
(え…そうだったの!?)
「「「……ッ」」」
カヨコの確信めいたその一言に、俺がさらに困惑しているとアビドス対策委員会が動いた。
彼の前に立ち、眼前の風紀委員会を睨んだ。
手出しはさせない。
その目と、いつでも撃てるように構えられた武器が彼女達の思いを示していた。
「「「「……」」」」
それは便利屋68達も同様だ。
臨戦態勢に入る彼女らに、イオリ達風紀委員会も武器を構える。
数は圧倒的に優っているが、油断はできなかった。その証拠に、風紀委員会の全員が緊張で顔を強張らせている。
(っなんて迫力だ……!!)
イオリは喉を鳴らす。その音すら交戦の合図になりそうで、常に意識を目の前と引き金に向けていた。
そんな状況の中。
『……ふふっ、なるほど』
アコは小さく笑う。
『ああ……便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れてました。のんきに雑談なんて、している場合ではありませんでしたね……まあ、構いません』
笑顔を浮かべたまま、パチンと指を鳴らした。
すると、ザッザッザッと柔らかな砂を踏む音が聞こえ始める。
それは徐々に近付いてくる。探る必要もなく、その正体が明らかになった。
「……!?」
『12時の方向、それから6時の方向……3時、9時……風紀委員会のさらなる兵力が四方から集結しています……!!』
夥しい数の風紀委員会の兵力だ。
まるで圧縮せんとばかりに、アビドス対策委員会を、便利屋68を、ユキトを囲っている。
「……増員」
『まだいただなんて……それに、こんなにも数が……!』
シロコは冷静を装っているが、こめかみから流れる冷や汗が彼女の心情を表している。
アヤネに至っては不安を隠し切れていない。その声は震えていた。
ユキトは違う。
辺りをゆっくり見回すと、アコに視線を向ける。
「こりゃーまた…随分な大所帯だな…てか俺狙いってマジか」
『えぇ…認めたくはありませんが貴方はヒナ委員長以上の実力者…これぐらいあっても困らないでしょう?正直私は足りないとすら思っていますよ?』
「…今度ゲヘナ行った時その横乳ビンタしてやる」
次にアコが目を向けた先にいたのは先生だ。
『さて。先程のカヨコさんの推理ですが、まだ完全な正解ではありません…私達の最終的な目的は……シャーレの先生、貴方なのですから』
「……私?」
突如、自分の名前が出たからか。先生はそう聞き返す。
アコは事のあらましを告げた。
発端は、ゲヘナ学園と長年敵対関係にあるトリニティ総合学園の生徒会『ティーパーティー』であること。
彼女達がシャーレの報告書を手にしていると、ゲヘナの情報部から上がった。対抗心からか、それをきっかけにアコはシャーレの存在を知り、行動を起こしたとのことだ。
『連邦生徒会長が残した正体不明の組織……大人の先生が担当している、超法規的な部活。そして連邦生徒会のNo.2でありキヴォトス最強と呼ばれている天秀ユキトが護衛についている…どう考えても怪しい匂いがしませんか?』
(まあ、確かに)
口に出して言われれば、そんな気もしないでもない。
黙って頷くユキトに、アコは白けた目を向ける。
『納得していますが、貴方もその一因なんですからねユキトさん? ヘイローがあるとはいえ100人を超えるヘイロー持ちを制圧するって何ですか、ふざけてるんですか?本当に貴方はぶっ壊れてますね!』
「ふざけてねェしぶっ壊れでもねぇよ。俺に言うなそれは」
単純に相手が弱かっただけ
仮にその100人全員がホシノやヒナクラスの実力者だったら良くて半分程度しか削れなかっただろう…
アコから睨まれるのは心外だった。
二人のやり取りを聞いていたムツキが、ぽつりと呟く。
「ふざけてるのはどっちかなぁ……ッ。ユキユキがいくら強いとはいえ、不意打ちで砲撃を打ち込むなんてどうかしてる!」
徐々に声の音は上がっていき、最後は叫んでいるようなものだった。歯を剥き出しにして、怒りを露わにしている。
それを受けてなお、アコは涼しい顔だ。
『服が破けてるだけで無傷で済ましてるじゃないですか……。それにヒナ委員長以上の実力者が、砲撃程度で倒れるわけないでしょう?』
とはいえ、多少はダメージを与えられれば嬉しかったのですが。
続けられたアコの言葉は、信頼とも楽観的とも言える。
その物言いにユキトに庇われた便利屋68、その現場を見たアビドス対策委員会は、アコに鋭い目を向けた。
「何も…知らない癖に……!!!」
「私達が、どんな思いをしたと思ってるのよ!!!」
ハルカとアルの声は震え、瞳から涙が零れ落ちている。そこまで爆発させていないが、カヨコとムツキも同様だった。
『えっ!? な、何でそんな顔をするんです……!?』
それにアコはぎょっとする。
ここまでの負の感情を表す便利屋68を見たことがなかったからだ。
(周りが騒々しいと冷静になるって本当なんだな…)
おかげでユキトはアコが自分に対して砲撃をしてきた理由を、大体推測できた。
少しはダメージを与えられればよかった。
そして彼女の最終的な目標はシャーレである。
この二つが結びつく。
「成程。つまり先生を確保すんのに脅威になりそうな俺を、最初に無力化しようとしたってわけね」
さらに注がれる視線が強くなり、アコはしどろもどろにながらも首肯した。
『え、ええ。シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に見えます。これからのトリニティとの条約にも、どんな影響を及ぼすのか分かったものではありません…ですからせめて条約が無事締結されるまでは、わたし達、風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせて頂こうと思いました…そこで最大の脅威であり障害となるであろう、ユキトさんをまずどうにかしようとするのは、当然の帰結ではないでしょうか……?』
「…まぁ妥当だな」
先生は目を見開く。
つまり、それは……。
「私の…せい……。私がユキトを、シャーレに引き込んだからっ! ユキトが、あんなっ、あんな……!!!」
アコの狙いはシャーレだった。そしてその最大の障害になると判断され、ユキトは襲撃に遭ったのだ。
もしユキトがシャーレに来ていなければ、その被害はなかったということになる。先生はその事実に気付き、力無く膝を地面に付けた。
そして自責の念に駆られ、自分の髪をグシャグシャと掻き乱す。
その目の前に、ユキトが立った。そして言う。
「でも先生がいなければ俺はずっとアビドスの敵を知ることは出来なかった」
ユキトは先生の両腕を掴み、下ろさせた。
そしてしゃがんで、彼と目を合わせる。
「そんな自分を責めるなよ先生。
俺は先生に本当に感謝してるんだ…だからさ」
「ユキト……でも」
「ほらほら先生立って立って。今すべきことは、下を見ることじゃねぇだろう?…それにあれは俺が油断しまくってたせいだし俺自身の失敗だ…それを先生や他の誰かに勝手に背負われちゃたまらねぇよ」
ユキトは笑いながら、先生の手を掴み立ち上がらせた。
そして視線で誘導し、先生に前を向かせる。そこにはホログラムのアコやイオリ・チナツを含む、風紀委員会がいた。
「…連れていきますって言われて、『はい分かりました』って先生は身を差し出すのか? まだアビドスには片付けるべき問題が山程残ってる…助けて欲しいと思っている生徒達がいる…なあ先生答えてくれ…あんたは責任を放棄して助けを求める生徒達の手を振り払う…そんな糞みたいな大人なのか?」
ユキトは真剣に先生の顔を見て問う
「……違うっ!!!!、 私はそんな無責任なこと絶対にしない!!」
先生は勿論、アビドス対策委員会も抵抗する姿勢を見せている。
そんな中、セリカはチラッと便利屋を見た。
「あんた達は……って言うまでもないか」
その目で分かる。 
今の便利屋68は獲物を眼前にした獣そのもの。これから起こる戦闘から、逃げるわけがない。
彼女達の怒りはまだ、胸の内で燻っている。
「ええ……完膚なきまでにアイツらを叩き潰すのに、協力するわ」
「そうだね社長。先生、大変だとは思うけど私達の指揮もしてくれると嬉しいな」
「勿論!」
断る理由はなく、先生は力強く頷いた。
ムツキとハルカは不満げにユキトを見る。先生とユキトの会話についてだった。
「それにしても、あの行政官に全く怒ってないのは何で? ちょっと人が良すぎない、ユキユキ。…もしかしておっぱい大きいからって贔屓してる?」
「してねェよ。俺を何だと思ってんだ」
「じゃあ何故……? い、言ってくれれば私が」
「それはこれからすんだろ、一緒に。言っても言わなくても」
眼前の大群を叩くのは変わらない。とはいえ、チクチクと刺さる視線は地味に気になる。
ユキトは後頭部を掻いて、口を開いた。
「まあ、あっちの気持ちは理解出来るからな。それに今さらだろう?ここはキヴォトス…銃弾が飛び交い爆弾が爆発しまくる場所。今回は俺が油断して怪我したそれだけだ」
「何それ! ムツキちゃん納得できなーい」
「子供か!。いや、子供だったな……」
そう諭すが、ムツキは唇を尖らせている。
やはりアコが何も知らず、兵を動かし自分達を制圧しようとしているのが気に入らないようだ。
「まあでも、確かにあの物量はちょっとめんどーだな」
ユキトはそう言うと、対策を少し考える。
目の前の兵は圧倒的な数だ。今は好戦的な様子を見せている対策委員会と便利屋だが、戦い続けるのはキツいだろう。
体力や弾丸が先に尽きるのは、間違いなくこちらだ。
(…俺がまた殲滅するのもアリだけど…)
正直俺はもう風紀委員会に罰は与えたので満足しているのだが皆が満足していない以上戦闘はたぶん避けられない
(……となれば、俺がすべきことは風紀委員会の士気を下げること。出来ればそれをきっかけに半数は制圧したいな)
それを可能にするであろう方法は、思い浮かんでいる。
普段なら絶対やらない方法だ。
しかし、もう先生含めた彼女達にはバレているし。正直もういいや〜ってなってる。
そして風紀委員会は俺が怪我をするなんて想像しないしたぶんできないだろう…俺がキヴォトス最強と呼ばれているが故にこれの効果はかなり期待できる。
「よし。そうと決まれば行きますか!…と…その前に…先生これ汚したら悪いから持ってて」
「へ?ちょっユキト!? 駄目だ、一人で行くな!!!」
先生が悲鳴に似た声を上げる。
だが、ユキトは風紀委員会に向けて走り出していた。その行動に、彼以外の全員が目を剥く。
「っなんてスピード……。私でも無理」
シロコがそう溢した。
便利屋と対策委員会が彼を引き戻そうとするが、走る一歩一歩の距離と速さが比較にならないほど大きく、速いのですぐに振り切られてしまったのだ。
「ユキトさんが来るぞ! 一斉に撃て!!!」
「「「は、はい!!!」
イオリの号令で、風紀委員会が発砲を開始した。
簡単に避けられる。イオリはそのように予測し、対応しようと銃を構え。
ドチュドチュドチュ!!!
「……は?」
イオリはその音と目の前の光景に、呼吸を忘れ。
「「「ひっ……!!!」」」
撃った風紀委員会も顔を引き攣らせる。
そしてアコは、その顔を青褪めさせた。
彼女達の視線の先には、ユキトがいる。
『な、何で…貴方には…ヘイローがある筈!何で、血が、身体に穴が……!!!』
頭部より下に、多数の穴を空けた。
そこからは滴る赤い液体と、身体の中身が少しだけ見えている。
立っているのが不思議なくらいだった。
ユキトは、心臓辺りに出来た傷口を片手で塞ぎ静かに呟く。
《will of almighty god》…《sublime liberation》…【rebirth】
("?")
「けほっ……やっぱりあんまりこれ使いたく無いな…ペッ」
ユキトは血反吐を吐く
(でも…効果はあった)
その場にいた全ての者がユキトを見ていた
アコの瞳孔も、ユキトの身体の異変を目撃し、大きくなる。
『え!? 傷口が…ない…!?』
ユキトの傷口がいつの間にか消えていた。
幻かと思ったが、彼の身体とその周辺に付着している赤い血が、先程彼が致命傷を負っていたことの証明だった。
(だから便利屋達は……! ということは、私達は一回彼を……!!!)
気分が悪くなり、アコは口を押さえる。
画面越しで指揮する人間がこうなのだ。
「うあ……ご、ごめんなさいっ! ごめんなさい……!!」
「も、もう駄目。撃てない。撃てないよォ……!!」
現場で、しかも戦闘に参加している風紀委員会はこれ以上の罪悪感を抱く。
ゆっくりとこちらに向かってくるユキトに、照準が合わせられない。
原理は分からないがキヴォトス最強である筈の彼の身体を傷付けたという感覚はもう一度彼を撃つという考えを彼女達から完全に奪った。
一触即発寸前だったアビドスの砂漠は、いつの間にか静かになっている。既に戦いなんて出来る空気ではなかった。
そんな中。
「……」
サクサクサク。
「……」
ザフッ。ザフッ。ザフッ。
二つの小さな足音が、その静かな戦場に近付いている。
邂逅の時は近い。 

Comments

  • りり

    February 24, 2025
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