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なぜ、ワクチンをためらう人がいるのか?〜110万人の大規模調査から見えた「ためらい」の正体〜

感染症専門医
写真:イメージマート

1. はじめに:ワクチンへの「ためらい」、その心の内とは?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下で、私たちはワクチンについて様々な思いを巡らせました。中には、接種を受けるべきか迷ったり、不安を感じたりした方も少なくないでしょう。

では、人々がワクチンをためらう背景には、具体的にどのような理由があるのでしょうか?そして、一度ためらった人は、その後もずっと同じ考えなのでしょうか?

こうした疑問に明確な答えを示してくれる、イギリスで行われた110万人以上を対象とした非常に大規模な研究があります。

2. 調査の概要:イギリスで行われた110万人規模の大調査

この研究は、2021年1月から2022年3月にかけて、イギリス(イングランド)の成人1,137,927人を対象に行われました。

調査の方法はシンプルです。まず、参加者に新型コロナワクチンに対する考えを尋ねます。そして、本人の同意を得た上で、後日、実際のワクチン接種記録を確認しました。人々の「考え」を尋ねるだけでなく、実際の接種記録という「行動」と結びつけた点に、この研究の非常に大きな価値があります。これにより、表明された意見が実際の行動にどう繋がったかを客観的に追跡できたのです。

3. ワクチンをためらった人は、どのくらいいたのか?

調査の結果、ワクチンに何らかのためらいを示した人は、調査期間全体で**3.3%**でした。

ただし、この割合は時期によって変化しています。

  • ワクチン接種が始まった当初(2021年初頭)が最も高く、**8.0%**でした。
  • その後、割合は減少し、2022年の年初には**1.1%**という最低値を記録しました。
  • しかし、続く2月から3月にかけては**2.2%**へと再びわずかに上昇したのです。

4. 「ためらい」の理由:大きく分けて8つのタイプ

調査では、ためらいの理由が大きく8つのカテゴリーに分類できることが分かりました。人々が抱える懸念は、決して一様ではないことがうかがえます。そして、この懸念の種類が、その後の接種行動に大きく影響することが、この研究の重要な発見点です。

  • ワクチンそのものへの心配
  • 長期的な健康への影響や副反応が心配
  • ワクチンの効果がどれくらいあるか、もう少し様子を見たい
  • 新型コロナウイルスに対する考え方や不信感
  • ワクチン開発者を信用できない
  • 自分は新型コロナにかかるリスクが低い、または影響は誇張されていると感じる
  • 個人の健康状態や体質に関する懸念
  • 持病やアレルギー反応が心配
  • 注射や針が怖い
  • 過去のワクチンで好ましくない反応が出たことがある
  • その他の個人的な事情
  • 妊娠中・授乳中である
  • すでに新型コロナに感染したから不要だと考えている
  • 接種会場への移動が難しい

5. 最も重要な発見:「ためらった人」のその後

では、一度ワクチンをためらった人は、その後どうしたのでしょうか?この研究の最も重要な発見がここにあります。

驚くべきことに、追跡調査が可能だった「ためらいを示した人」のうち、大多数にあたる65%(約3人に2人)は、その後ワクチンを1回以上接種していました。

この結果は、多くの人にとって、ワクチンへのためらいは「固定された最終決定」ではなく、「変化しうる一時的な心の状態」であることを強く示唆しています。

6. 解消されやすい「ためらい」と、根強い「ためらい」

この研究はさらに一歩踏み込み、どのような「ためらい」が後に解消されやすく、どのような「ためらい」が根強く残るのかを明らかにしました。

解消されやすい「ためらい」

調査の結果、「副反応」や「ワクチンの有効性」を心配していた人々は、その後ワクチンを接種する可能性が最も高いことが分かりました。

これは、これらの懸念が具体的であるため、信頼できる情報が増えたり、周りの人が安全に接種する様子を見たりすることで、時間とともに解消されやすいことを意味します。これは裏を返せば、ワクチンそのものの有効性や、公衆衛生上の情報提供、そして実際の接種体制が成功したことの証左とも言えるでしょう。

根強い「ためらい」

一方、「ワクチン全般への不信感」「新型コロナのリスクは低いという認識」「開発者への不信感」などを理由としていた人々は、その後もワクチンを接種しないままである可能性がはるかに高いことが示されました。

これらの理由は、単なる情報不足というよりも、個人のより深い信念に基づいているため、情報提供だけでは変化しにくいと考えられます。特に、2022年初頭にためらいが微増した背景には、感染力は強いものの重症化リスクが低いとされたオミクロン株の流行があります。多くの人が感染を経験したことで、「すでに感染したから不要だ」「新型コロナのリスクは誇張されている」という考えが強まった可能性が指摘されています。中でも「ワクチン全般に反対」と回答した人は、最も接種に至らない傾向が強いという結果でした。

7. この研究から私たちが学べること

この大規模調査は、私たちに重要な教訓を与えてくれます。「ワクチンへのためらい」の多くは、固定的な「反ワクチン」の思想ではなく、安全性や効果に対する具体的で理解可能な懸念に基づいているということです。そして、それらの懸念の多くは、信頼できる情報が広く行き渡り、時間が経過することで乗り越えられる可能性がありました。

この研究が示す教訓は明確です。将来の公衆衛生を守るためには、人々を「反ワクチン」とひとくくりにせず、一人ひとりが抱える具体的な懸念に対して、透明性の高い正確な情報を提供し、信頼を築き続けることこそが最も重要だということです。

YouTubeチャンネル:くつ王アカデミア「ワクチンためらいの2つのタイプ」

※ 本記事はNotebookLMが生成した文章を筆者が加筆修正したものです。

参考文献: Profiling vaccine attitudes and subsequent uptake in 1·1 million people in England: a nationwide cohort study. The Lancet. DOI: 10.1016/S0140-6736(25)01912-9

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ありがとうございます。
感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王アカデミア」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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