『いきたい』。消えたい。
虐待を受け続け、消えたいと思うようになった彰人をニーゴカイトが見つけるが………。
※彰人がニーゴに所属している
※病み、嘔吐、過呼吸表現あり
設定↓
父、絵名、彰人の3人ぐらし。母親は父に嫌気がさして家出している。
父は彰人が絵名のために動くことを知っているので、絵名を人質にして彰人を痛めつけたり奴隷のように扱い、ストレス発散の道具にしている。
奏、まふゆ、瑞希にはこの事を1ミリも話しておらず、バチャシン達にも消えたいと思う理由を隠し通している。
絵名と彰人は警察に言っても無駄だということ、下手なことをしたら更に酷い目に遭わされる事を理解していて、そこに恐怖と父親の圧力が加わっているので助けを求めることができていない。
要約「つまりご都合設定」
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深夜1時に動き出すサークル「25時、ナイトコードで。」そのサークルの作る曲はネット上に投稿され、沢山の人々を救うきっかけとなるのだ。
「雪、作詞どう?」
作曲担当、Kこと宵崎奏
「…大体はできてる。みんなにも見てほしいから確認して」
作詞担当、雪こと朝比奈まふゆ
「ねぇねぇ、ここのイラストさ、もう少し明るめの色欲しいな〜!すこ〜し修正お願いしても良い?」
動画担当、Amiaこと暁山瑞希
「わかった。色味は?」
そして、イラスト担当のオレ。シアノこと東雲彰人
「いや…、やめて…!やめてよ!!」
…あぁ、また始まった。助けねえと、
ドア越しに聞こえる姉の叫び声。絶対親父だろうな。
「しばらくミュートにする」
Kから了承を受けたあと、ドアを開けて階段を降りる。涙目の姉とすれ違い、気にすんなよと一言だけ声をかけてリビングの扉を開けた。
その瞬間にリモコンが胸に飛んできた。ガンっという音を立てて床に落ちる。
「いっ…てぇ、」
胸を擦りながらリモコンを棚の上に置く。段々と足音が近づいてきてオレの目の前で止まった。
絶対、顔を上げたら怒鳴られる。別に罵倒されたって絵名のせいじゃない。なんとも思わない。はずなのに…
指が震えて、どうしても顔を上げられなくて不甲斐なさで気持ちがいっぱいになって唾を飲み込んだ。
「顔上げろよ。」
静かになったリビングで冷たい声だけが聞こえる。それでも顔を上げられず、逆に更に俯いてしまった。
やばい、行動ミスった、殴られる、
ドカッ
「っ…けほ…けほっ、、」
いつもより力強え、痛え…、
「お前さ、生意気なんだよ!!!」
体を強く押されてドアにぶつかった。背中にまだ痣があるから思った以上に痛くて、うめき声をあげそうになったのを下唇を噛んで堪える。
絵名の方がよっぽど辛いから、耐えねえと…
「なにボーっとしてんだよ!!早く立て!!また立てないとかしでかしたらどうなるかわかってんだろうな!!あ?!」
「うるせぇな…立てばいいんだろ…」
痛みに耐えて背中を預けながらゆっくりと立ち上がった。けど、
「なんだその目は!!!
立つのもおせえよ!!彰人ぉ!!」
……やっぱだめだった。これから逃げる事とか、到底無理だな。
思わず笑ってしまいそうな現実に、今日もまた引きずり込まれた。
「今日はこんくらいにしてやるよ」
終わった…やっと…、今回はいつもより長かったな、早くK達のとこ行かねえと…でも…腹痛すぎて…無理、動けない……、いや…それでも…いつも通りに…しねえと…、
悲鳴をあげてる体にムチを打って立つ。
「ゔっ…!は、…いっでぇ…、」
やべえ…今回まじで辛え、
壁に寄りかかりながらドアを開けて廊下を歩く。階段が笑えるくらいにキツかった。なんかの罰ゲームでもやらされてんのかってくらいに。
部屋に戻るとナイトコードが少し騒がしかった。平常心を保つために少し息を吸って吐いてを繰り返してからミュートを解除する。
「悪い、遅くなった。」
「「シアノ…!」」
「シアノ、遅かったね。」
「悪い、私情が長引いた。っ…」
「…シアノ?」
「…なん、でもない。悪い、今日もう落ちる。イラストの修正やっとく」
逃げるように一方的に通話を切り、じくじくと痛い腹をそっと腕で囲み布団に寝っ転がった。それですら痣は痛いが、横になれるのはかなりでかい。
「ふ、ゔ…ぁ"、」
呼吸だけでも腹痛え、もうこれ無理じゃね…、?学校行けっかな…、
「ははっ…もう死にてえ…」
かすれた声で呟いたあと、オレはそっと目を閉じた。
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目眩のようなぐるぐるとした違和感を抱えたまま登校した学校。今は4時間目、黒板に文字を書く音が響くいつも通りのめんどくさい授業。そしてオレにとって、苦痛の時間。
シャーペンを握っている手が痺れてるみたいに動かしづらく、指先が冷たい。それに加え今日は異常なくらい激しい動悸や気持ち悪さがある。
や…ば、気持ち悪い…動悸エグい、治れ…頼むから、ほんと…、まじで、授業中なのに…吐き気止まんな…、
何度も何度も心の中で治まれと願うが1ミリも良くならない。それどころか悪化してきてる気さえする。
「…っ、」
脈が、鼓動が、気持ち悪い。耐えろ……耐え…ねえと…、けど…無理…ほんと…、耐えれな…、
冷や汗が流れてきてシンプルにキツすぎる。
「もうすぐでチャイムなると思うから今日の範囲はここまでな」
やっと終わった。けどまだチャイムが鳴っているわけでは無いから席についたまま各々の生徒は喋りだす。オレはひたすら冷えた体を温めようと腕を擦っていた。
「げほ…ゔぇ、っは…お"ぇ"…」
クソ…気持ち悪ぃ…、てか、やば…昼飯食う時間なくなる……いや別に、食わないでいいや…とりあえず教室…
「あ、東雲さん!」
…あぁ、クラスメイトの…
「…白石さん?どうしたの?」
猫かぶり得意で良かった。
「そのー…東雲さん、顔色悪かったから…ちょっと気になっちゃって!気分どう?大丈夫?」
「…大丈夫だよ心配かけてごめんね」
流石に隠しきれてなかったか
「じゃあオレ行くね。気にかけてくれてありがとう」
「はーい!」
…随分、元気な女子だな。暁山の友達だからそこそこの付き合いではあるが…
「………」
…羨ましい
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「ただいま…」
スマホを片手に靴を脱ぐ。廊下へと足を踏み入れ、荷物を置こうと自室を目指そうとした時だった。
バンッ!と大きな音を立ててリビングのドアが開いた。びっくりして身体に力が入る。視線を向けた先にいたのは…………親父だった。
「彰人」
「…なんだよ、…い"っ!!つぅ…!」
突然親父がオレの事を壁に向かって突き飛ばした。バッグの中身が散乱し、スマホが床に落ちた。少し離れたところまで滑っていく。
やっべ…、
頭を打ち付けたせいで視界が白くぼやけてみえる。目の前へと視線を投げると、瓶を片手に持っている親父がいた。
は…?う、そ…だろ……?なにかんがえて…、
殺されるかもしれない恐怖と不安、自分が全て受け止めなければという責任と逃げなければという生存本能。脳が危険信号をだしているにも関わらず頭がごちゃごちゃになって体が全く動かない。
息が吸えない。足が動かない。殺されるかもしれない。
…でも、いっそ死ねたら……楽に…
そう考えた時にはすでに瓶が振りかざされていた。殺してほしいと願ったはずなのに、結果的にオレは腕で頭を守っていた。
「い"っ!!っは、!ひゅ…!」
痛い、苦しい、死にたい。痛い、痛い…
「クソが!なんで死なねえんだよお前はよ!!ふざけてんじゃねえよ!!」
顔を殴られ、腹を殴られ、蹴られ、罵詈雑言を浴びて。耐えなければいけないのに、耐えるべきなのに、オレはスマホを拾い、自室へと逃げ込んでいた。全力で逃げて、追いかけられて。鍵を閉めたから入られることは無いが、ずっとドア越しから罵声が飛んできている。
「開けろ彰人!開けろ!!このゴミが!!才能の欠片もないお前が生きれてるのは俺のおかげだぞ!!!殺すつもりだった!!!お前さえいなければ楽に生きれたんだよ!!!足手まといだ!!迷惑なんだよ!!!」
「ひゅっ…!はーっ…、ひゅ、げほっ!げほ、けほ、!かはっ…はぁっ…!」
酸素が入っていかない。息が吸えない。苦しい。オレが全部悪いのか。全て、オレが。
ドンドンと扉が叩かれる。背中にその振動と親父の感情が伝わってきて頭が真っ白になる。オレは、親父の言葉すべてを肯定していた。
しばらくすると階段を降りる音がはっきりと聞こえて力が抜けた。膝が折れ、なるがままに座り込む。
スマホを持ってきていたのを思い出し、絵名にオレが良いと言うまで家に帰ってくるなと連絡を入れた。そして、警察に通報するなとも。既読は付かなかったが、いずれ目を通すだろう。
……消え、たい。…セカイなら、一人になれるか。誰にも、邪魔されずに…死ねんのかな。
オレはカッターをポケットに突っ込み、悔やむと書いてミライの再生ボタンを押した。
「……」
やっぱここは少し落ち着く。
誰にも見つからない場所に、早く行くか。
「おい」
「……?」
後ろから声が飛んでくる。振り返ると顔を顰めたカイトがオレをまっすぐ見ていた。
「なにか用でも…」
「話せ」
「は……?」
最初は何を言ってるのかが分からなかったが、自分の腕が血だらけのままなのに気づき、ああこのことか。と思った。
「話せ。何があったんだ」
顰められた顔。怒りの感情が伝わるその瞳。オレの中でさっきの出来事がフラッシュバックする。
「っ…やめろ…、」
その目でオレを見るな、オレが悪いってわかってる。わかってるから、謝るから…頼むからその目でオレを見ないでくれ。
「……は…?」
「っその目で、オレを見るな…!!」
オレはカイトの胸ぐらを血だらけの両手で掴みかかっていた。カイトは目を見開いてオレの突然の行動に驚いている。
落ち着け、違う。こんなことがしたいわけじゃない。落ち着けオレ、迷惑をかけるな。
「いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも…!うんざりなんだよ!!操り人形にしやがって…!!」
「っ、おい落ち着け!」
「お前さえいなければ絵名もオレも母さんも!!全員普通の家庭で生きれてた!!恨むならお前の言動全てを恨めクソ親父が!!殺してやる!!!」
カイトを押し倒し、首へと両手を移動させる。少しずつ体重をかけていけばカイトは苦しげに目を細めた。口角が上がる。オレがオレでは無いみたいに笑いが込み上げてきた。
やめろ。落ち着け。こんなことしたくない。手を離せ。落ち着け、落ち着け、落ち着け。
「ぐ、っ…!っはな、せ…!!」
「ははっ、!あははははは……!!」
あと少しで殺せる。殺してしまう。でも…オレの気に触れたお前が…悪いよな…?
「目を覚ませ彰人!!」
「っ…!」
叫び声で我に返った。バッと手を離す。カイトは喉を押さえて鉄骨を掴みながら立ち上がった。
「ッ…げほっ、げほ…!かはっ」
「っあ…ぁ、」
違う、こんなことがしたいわけじゃなかったんだ。違う、オレは、
「…落ち着け、何があったんだ」
カイトは喉元を気にする素振りを見せてはいる、が、視線の先はオレ。なんでだよ?なんでそんなにオレを気にする?オレはお前を傷つけたんだぞ…?お前はミク達に甘やかしていると言うが、お前も大概なんだな。
「…話せ。このままじゃ、お前が壊れるぞ」
「っお前に何がわかんだよ…!お前なんかたかが機械だろうが!そんなお前に何がわかるってんだよ!!」
「っ……!」
「ぁ…、」
『迷惑なんだよ!!!!お前さえいなければ!!!』
ドクンと心臓が嫌な音を立て始める。それと同時にくる絶望感。
やってしまった。絶対に迷惑をかけないと決めたのに。カイトの深く傷ついた表情を見てしまった。オレはなんて冷酷なのだろう。やはり、どうあがいてもオレは親父の息子なのだ。目の前が真っ白になる。息が上手く吸えない。
「ご、め…。もう、二度と来ねえから…」
「っおい、待て…!彰人!」
カイトが呼び止めるが知ったこっちゃない。現実世界に戻って早々、カイト達が干渉できないようにスマホの電源を落とした。ふとポケットにカッターを入れていたのを思い出し、取り出すために視線を下に向ける。そこで視界に入ったのはオレの腕。無数の赤色が散る腕。
「…………うっ、ぇ…!」
気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い。何度も頭の中をよぎる。怒鳴り声、眼差し、殺意、嫌悪。迷惑…迷惑。何故オレは生きている?自分とはなんなのか、生まれた意味や生きている理由はあるのか、これ以上もう迷惑をかけずに済む方法はなにか。後悔、責任、絶望。色んな物がオレに重くのしかかってくる。
絵だけでも…描かねえと…、早く…あいつらが望む絵を…。
「ひゅうっ…げほっ…かは、っは…!」
だめだ、早く描かねえと…。絶対に迷惑かけらんねえ、治れ…早く…なオれ、おさマれ。ハヤく。ハヤク。
鼓動が激しくなってくる。まただ。また、この胸の奥が締め付けられる感覚。息が苦しい。何をしようとしても思い出してしまう。ドア越しに聞こえる親父の怒鳴り声と、一瞬だけ見せたカイトの悲痛な顔を。どぷりと自己嫌悪の深い沼に呑み込まれていく。
…オレは、辛くなんかない。オレは耐えれる。何とも思っていない。苦しくなんて、痛くなんて…ない……。絵名のためにオレは…
「はっ…ぁ、えな…」
そうだ、絵名は…?どうなった?既読はついただろうか
ふと姉の存在を思い出してスマホへと手を伸ばす。友達の家に泊まれているかの確認をしたい。でもスマホまであと少しのところで手が止まった。セカイから帰ってきてそう時間は経っていない。今電源を入れたら、確実にカイトが様子を見に来るだろう。
オレは…あいつに会えない。
「もう…いいや…、つかれた」
オレはアルコールティッシュで腕の乾いた血を拭いた後、すぐベッドに入り込んだ。
絵も描かずに、明日が来ませんようにと馬鹿馬鹿しい願いを心の内に呟きながら。
2時、4時、5時、5時半、5時50分、5時59分
3…2…1……
手元のスマホからアラームが鳴る。その瞬間にストップと書かれた方向にスワイプした。こんなにも疲れているのに、眠気が一切来ない。オレはずっと時計を眺めてその夜を明かした。こんなにも無駄な時間はないだろう。
「……いきたく、ない…」
学校に『行きたくない』。もうこれ以上『生きたくない』。後悔を背負ったまま『逝きたくない』。
今オレはどの意味で言ったのだろうか。もしかしたら無意識に全部思っていたのかもしれない。
でも、
オレは。
「ははっ…」
消えたいなぁ……、