消費税減税、首相発言が一転 「即効性ない」→「悲願」と積極姿勢に
高市早苗首相は19日の記者会見で衆院選で食料品にかかる消費税を2年間に限りゼロにする案の実現を自民党の公約として掲げる考えを示した。物価高対策として効果を見込む。就任後、かねての持論である消費税減税には慎重な姿勢をとってきた。発言のぶれは選挙目当ての日和見主義との批判を受けかねない。
首相は記者会見で食料品にかかる消費税ゼロの方針は2025年10月に日本維新の会と交わした連立合意に明記した内容だと強調した。
消費税減税を巡る発言が変化しているのではないかと質問を受け「私自身の悲願だった」と説明した。「自民党の中でもいろいろ意見が分かれていたが、改めて自民党の選挙公約にも掲げることになった」と回答した。
社会保障改革に関する政府・与野党の「国民会議」で議論し、結論を得られれば消費税減税を盛り込んだ税制改正案を国会提出する段取りを描く。実現には5兆円程度の財源が必要とされる。財政悪化の懸念から円や国債が売られるリスクがつきまとう。
首相のこれまでの発言を振り返ると、消費税減税には従来から意欲を持っていた。
25年5月に自民党の税制調査会が開いた勉強会後、記者団に「国の品格として食料品の消費税率は0%にするべきだ」と強調した。
同年の自民党総裁選中に臨んだ討論会では「前向きな考え方だったが、党内の意見集約ができなかった。党内で練り直してみることも大事だ」と語った。
総裁に選出された同年10月4日の記者会見では「選択肢として放棄するものではないが、すぐ対応できることを優先したい」と抑制した。
首相就任後は一層慎重な言いぶりが目立つ。消費税が社会保障政策の安定財源である点などを考慮し、軌道修正したとみられる。政府・自民党はこれまで野党が国政選挙で消費税減税を訴えると「無責任だ」などと批判してきた経緯もある。
11月の参院本会議での代表質問では「選択肢として排除しているものではない」と前置きしながら、実務上の課題を挙げた。「事業者のレジシステムの改修などに一定の期間がかかるとの課題にも留意が必要だ」と説明した。
12月23日の日本経済新聞のインタビューでも消費税減税への考えを聞いた。「選択肢としては排除しないが、物価高対策としては即効性がないと判断をした」と答えた。
消費税の安定財源としての優位性に触れた。「所得税のように現役世代など特定の層に負担が集中することがないという特長もある」と語った。
消費税減税の代わりに中低所得者対策として「給付付き税額控除」の導入を訴えてきた。所得税額から一定額を差し引く税額控除と給付を組み合わせた制度で、差し引く金額が納税額を上回るなら、その分を現金で給付する。
衆院解散で給付付き税額控除も導入時期のめどがつきづらくなる。政府と与野党が制度設計を議論する「国民会議」は1月中に始動する予定だった。選挙を控えて与野党の対決モードが強まり、開催は難しい状況だ。
時の首相の減税を巡る発言のぶれは自民党にとって鬼門でもある。1998年の参院選で同党は大敗し、橋本龍太郎首相は退陣に追い込まれた。「恒久減税」をめぐる橋本氏の発言が揺らぎ、有権者の離反を招いたとされる。
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(更新)- 竹中治堅政策研究大学院大学 教授分析・考察
首相は総裁選出馬に際し、消費減税を断念したはずだった。だが、維新と連立を組んだため、食料品消費減税が政策課題として残ってしまう。連立交渉の結果、連立合意に「飲料品については、二年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う」という文言が入る。「視野に」である。連立発足時、首相が減税について詳しく説明した印象はない。しかし、早期解散により事情が変わった。維新は執拗に時限減税を求めている。首相も応じざるを得ず、触れることになった。よく聞けば、早急な実現を目指しているわけではない。だが、再度テーブルに乗せ、「悲願」とまで言ってしまったため、早速「ぶれ」たと指摘されることになった。
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