____________________
傀儡「 ..... 何よ、また来たの?しかも今日は月霊達も連れて ..、ここはあなた達の遊び場じゃないの、さっさと帰ってくれる?(視線だけ向けて、冷ややかに言い放つ)」
少女「 ごめんね、サンドローネ .. でも、この子達に君の話をしたら、どうしても会いたいって ..。」
傀儡「 ... ふん、なら願いは叶ったじゃない、私は貴方達と戯れる程暇じゃないの、その子達を連れてさっさとお帰りなさい、コロンビーナ。」
少女「 でも .. さっきため息を着きながら私の名前を呼んでいたよね、本当に忙しいの?( ふふっ )」
傀儡「 .... なッ ..?! ( カアァ )」
少女「 .. う~ん .. でもやっぱり忙しいなら無理に居座っても迷惑になっちゃうよね .. 」
(名残惜しそうに振り返りながら、袖を引いて小さく抗う月霊達を宥めるように抱き寄せ、そのまま静かに踵を返す)
傀儡「 ま .. 待ちなさい!! ... しょうがないわね、少しだけよ!!」
少女「 ....!!( パァァァ ) 」
____________________________
それから傀儡が言葉を投げ終えるより早く、月霊達は歓声もどきの淡い光を弾ませ、一斉に傀儡の周囲へと群がった。袖に、髪に、足元に――好き勝手にまとわりつき、逃げ場を塞ぐようにふわふわと漂う。
傀儡「ちょ、ちょっと……!触らないでって言ってるでしょう!」
そう言いながらも振り払う手つきはどこか及び腰で、月霊達はそれを遊びと受け取ったらしい。ひとつが頬のすぐ横をくすぐるように回り、別のひとつは肩に留まって微動だにしない。
少女は少し離れたところで、その光景を見守りながら思わず息を詰めた。普段は冷たく突き放す傀儡が、困ったように眉を寄せ、言葉を荒げながらも完全には拒めずにいる――そんな姿は、月霊達にとって格好の的だった。
傀儡「……本当に、好き勝手ね……」
少女「 皆喜んでるみたい ..、( 微笑 ) 」
少女はそう口にしながら、唇の端に柔らかな微笑を浮かべていた。月霊達が嬉しそうに傀儡の周囲を舞い、無邪気にまとわりつく様子を見て、外から見ればそれは穏やかな光景だったが、胸の奥では、言葉にできない感情が静かに波立っていた。
――取られた、わけじゃない。
ーーただ、仲良く遊んでいるだけ ..。
そう自分に言い聞かせても、視線は自然と傀儡へと吸い寄せられてしまう。月霊達に囲まれ、困ったように眉をひそめながらも完全には突き放せない彼女の姿が、なぜか胸に引っかかる。
自分だけが知っていると思っていた表情。
自分にだけ向けられていると、どこかで思っていた距離感。
それらが月霊達に分け与えられていくような感覚に、少女はそっと指先を握りしめた。笑顔は崩さないまま、ほんのわずかに、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
ーー変だよね。
誰にも責められる理由のない感情を、ただ飲み込む。微笑みの裏に滲むその小さな嫉妬は、月霊達の淡い光に溶けることなく、静かに彼女の中に残り続けていた。
ーー .... ーーービーナ! コロンビーナ!!!
少女「 ... !!」
傀儡「 ちょっと ..、いい加減この子達をどうにかしなさいよ!」( 月霊達に囲まれて身動きが取れず、眉を吊り上げながらも助けを求めるように声を荒げる )
少女「 .. あ .... ごめんね、サンドローネ。( 汗 )」
( まだ遊びたいと言わんばかりに傀儡の服を引っ張る月霊達を何とか引き剥がし )
傀儡「 ... はぁ .. お陰で酷い目にあったじゃない .. 」
( 体中至る所にシールやステッカーの様な物をペタペタと貼られ服も髪も乱れてしまった )
少女「 .... この子達にマーキングされちゃったね。」
傀儡「 .. 冗談じゃないわ!!全く ... 」
( ため息を吐きながら淡々とシールを剥がし始める )
少女「 .............。」
傀儡「 .... コロンビーナ?」
少女「 .. なぁに?サンドローネ。」
傀儡「 貴方 .. 今日は少し様子が変よ ..。」
少女「 .... ううん、平気だよ。 」
( 胸の奥に渦巻く感情を押し込めるように、いつもより少しだけ強く微笑んで見せた )
傀儡「 ... ふっ まさか月霊達を私に取られて嫉妬しちゃったの?安心しなさい、別に取ったりしないわよ。」
少女「 ...... 嫉妬 ..、なのかな、でも、君があの子達と遊んでいる所を見てたら、少し胸がザワっとしたの ...。」
傀儡「 まさか貴方に嫉妬されるなんてね .. だけど別に私は貴方から何かを取ったりはしないわ、貴方から貰うぐらいなら自分で創り出した方がまだマシよ。」
(突き放す言葉とは裏腹に、その表情は一瞬だけ曇り、すぐに元の冷たさを取り戻す)
少女「 ... ( あれ?.. )」
今、サンドローネの言葉を反芻して、ようやく違和感の正体に気づく。
サンドローネはコロンビーナが月霊達を取られたことに嫉妬していると思っている。けれど本当は、逆だった。
月霊達のことじゃない、私の視線が向いていたのは、いつだってサンドローネの方だった。
困ったように眉をひそめる顔も、だる絡みに耐える不機嫌そうな仕草もーーそれらを誰かと共有している光景を見て、胸がざわついたのだ。
少女「..... ( サンドローネは勘違いをしてるみたい .... )」
その事実に気づいた瞬間、不思議と胸のざわめきは形を変え、くすぐったい熱を帯びた。コロンビーナは思わず、ふふっと小さく笑みをこぼす。
次の瞬間、間合いを詰めるように一歩踏み込み、軽く体重をかける。予想外の動きに、サンドローネの身体が後ろへ傾き、そのまま押し倒される形になった。
傀儡「…… ちょっと .. いい加減何とか言いなさいよ ...... っ?!」
驚きに見開かれた瞳と、すぐには言葉が出てこない表情。
コロンビーナはその上から覗き込むように身をかがめ、いたずらが成功した子どものような笑みを浮かべた。
傀儡 「……っ、急に何のつもりよ!!」
押し倒された体勢のまま、サンドローネは眉を吊り上げる、鋭い声が出かかったものの、言葉は途中で途切れ、代わりに短く息を呑む。
少女「 .. 違うよ、サンドローネ。」
コロンビーナはそう囁くように告げると、ふふっと小さく微笑む、それから逃げる間も与えないまま、指先でそっとサンドローネの顔を引き寄せる。
傀儡「 ....っ?!?/// 」ビクッ
コロンビーナはすぐに身を引き、何事もなかったかのように穏やかな表情に戻る。
少女「 .. ふふっ、可愛いね、サンドローネ。」
傀儡「 .. な、貴方 ...ッ 今何して ... ( カアァ )」
少女「 サンドローネがあの子達と遊んでいるのを見て .. 凄く複雑な気持ちになった ..、でもそれはあの子達を取られたからじゃなくてね ..。」
コロンビーナは、これまで伏せていた瞼をゆっくりと開いた、そのまま、逃げ場のない距離で視線を合わせ、ふふっと小さく微笑みかける。
傀儡「 ....っ!!!///」
少女「 この先は言わなくても分かるでしょ? ..。」
そっと伸ばした指先が、サンドローネの顔をそっと撫でる
傀儡「 ..... わ、わかったから .. 少し離れてちょうだい .. //」
そう言いながら、サンドローネは視線を逸らし、慌てたように片手で顔を覆った。指の隙間から覗く耳元は、隠しきれずにわずかに熱を帯びている。
少女「 ..... ふふっ、ごめんね、サンドローネ .. でも、もう少しこのままがいいな。」 ギュッ
傀儡「 .. はぁ?!// 」
そう囁くと、コロンビーナは逃げ道を塞ぐように、そっと腕を回した。力を込めるわけでもなく、ただ離れないと伝える程度の、静かな抱擁。
押し倒された体勢のまま、サンドローネの身体が一瞬こわばる。だが突き放すこともできず、行き場を失った手が宙で止まったままになる。
fin.
_________________________________