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「だから言ったのに」とわかったように言う人が持つ後知恵バイアスの正体

 人生の岐路に立ったときに下した決断が、後ほど芳しくない結果となった場合に「あのとき、ああすればよかった」と思った経験がある人は少なくないでしょう。

『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』の著者で、認知心理学の知見を武器に世界で活躍した元ポーカープレーヤーのアニー・デューク氏は、「後悔して過ごすよりも、もっと悲惨なこと」があると言います。

「良い決断」と「良い結果」は必ずしも一致しない。私たちの思考を歪めている「後知恵バイアス」の正体に3回連載で迫ります。

『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』(サンマーク出版) 書影
『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』

転居・転職後に寒さに滅入って仕事を辞めて出戻りしたら


【1】あなたはフロリダで育ちジョージアの大学に通う。大学卒業後、ふたつの会社からオファーをもらう。ひとつはジョージア、ひとつはボストン。

ボストンの仕事のほうが条件はよさそうだが、南部育ちのあなたはニューイングランドの天候が心配で仕方ない。あなたは2月にボストンに出向き、冬のようすを確認して、大丈夫そうだと判断する。チャンスを見送るほど悪くはないと。

あなたはボストンの仕事を受ける。

結果は最悪!

最初の冬を迎えて2カ月、あなたは寒さと暗さに滅入ってしまう。仕事は望んだとおりのものだったが、2月になるころには仕事を辞め、地元に戻ってくる。

地元に戻った自分が言うであろう台詞、または友人から言われるであろう台詞に○をつけてみよう(複数可)。

(  )友人「やっぱり向こうは合わないと思ったんだよね」(でも前もって言ってくれなかった)。

(  )こうなることを予想すべきだった。寒さに耐えられるほどいい仕事じゃなかった。

(  )冬が厳しいことをもっと理解しておくべきだった。南部育ちの私に耐えられるわけがなかったのに!

(  )ジョージアで仕事を受ければよかった。

(  )友人「1年以内に戻ってくると思った」


 私たちには、「だから言ったのに」と言ってくる友人がいる(本当に前もってそう忠告してくれたかどうかは関係なく)。

 そして私たちは、明白な結果を予見できなかった自分を打ちのめすのが得意だ。

 あなたが大半の人と同じなら、すべての項目に丸をつけたかもしれない。

転居・転職後に雪が気に入って長く留まれたら


【2】あなたはフロリダで育ちジョージアの大学に通う。大学卒業後、ふたつの会社からオファーをもらう。ひとつはジョージア、ひとつはボストン。

ボストンの仕事のほうが条件はよさそうだが、南部育ちのあなたはニューイングランドの天候が心配で仕方ない。あなたは2月にボストンに出向き、冬のようすを確認して、大丈夫そうだと判断する。チャンスを見送るほど悪くはないと。

あなたはボストンの仕事を受ける。

受けてよかった!

冬は大して問題じゃない。むしろあなたは雪が気に入り、スノーボードに夢中になる。そのうえ仕事は望んだとおりのものだった。

結局、あなたはボストンに長く留まることになる。

あなたが次の台詞を言う可能性はどのくらいだろうか?「冬の心配をしてこの仕事を断ろうとしていたなんて信じられない。冬なんて大したことなかったのに」
言わない  0 1 2 3 4 5  言いそう

誰かが次の台詞を言う可能性はどのくらいあるだろう?「だから大丈夫だって言ったでしょう。絶対気に入るって! そっちでの幸せに比べたら冬なんて大したことないって!」(ただし、事前にそう思っていたことは伝えてくれなかった)。
言わない  0 1 2 3 4 5  言いそう


 おそらくいずれも「言いそう」が優勢だったのではないだろうか?

経験する以外に天候が幸せに与える影響はわからなかった

 結果はさておき、どちらかの仕事を受けるという決断は同じだった。そしてあなたはボストンのほうがよさそうだと判断した。問題は、天候があなたの幸せにどれほど影響を与えるか、という点だ。

 しかしニューイングランドの冬を本格的に体験したことがないあなたには、経験する以外にその答えを知るすべはない。

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◼️結果 決断時の知識

 あなたはボストンへ移るべきか悩んでいる。ボストンは好きな場所じゃなかった。どうして来る前に気づかなかったのだろう?

 あなたはボストンへ移るべきか悩んでいる。ボストンはいいところだ。どうして来る前に気づかなかったのだろう?

 同じ決断に、反対の結果。いずれにしても、もっと早く知っていればと思う。どちらの結果になっても、結果は必然だったと感じるし、友人は「やっぱりね!」と言うだろう。

 もちろん、「気に入ると思っていた」と「気に入らないと思っていた」を同時に言うことはできない。だが、私たちはそう感じているのだ。

 つまり、これはどういうことか?

 いわゆる、後知恵バイアスだ。

 決断をする際には、知っていることと知らないことがある。

 絶対に知らないことのひとつは、いくつもの可能性のある結果のうち、どれが実際に起こるかということだ。

 しかし結果を前にすると、「どうしてわからなかったのか」、あるいは「最初からわかっていたのに」と思うことがある。実際の結果は、決断時の知識をあいまいにする。

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「だから言っただろう」と言われる悲惨

 結果主義は、結果の良し悪しから決断の良し悪しを判断させる。

 後知恵バイアスは、結果を知ったあとにあれこれ言うだけでなく、決断時に知っていたことをふたつの方法で歪める。

 ① 決断時の見解を誤った記憶に置き換え、結果が出たあとの知識に一致させる。

 ② 予測可能性や必然性の観点から、こうなることを予想するべきだったと考える。

 もちろん、その決断はあなたひとりのものではない。他人の決断にも影響されるし、他人もあなたの決断に影響される。

「あのとき、ああすればよかった」と後悔して過ごすよりも、もっと悲惨なことを知っているだろうか?

 それはその後悔に加えて、ほかの人から「だから言っただろう」と言われることだ。

後知恵バイアス:ことが起こったあとに「予測できた」「必然だった」と思う傾向。「初めからわかっていた思考」あるいは「後づけ論」とも呼ばれる。

◎続きはこちら

<本稿は『How to Decide 誰もが学べる決断の技法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock

【著者】
アニー・デューク(Annie Duke)
作家、コーポレートスピーカー、意思決定に関するコンサルタント
米国科学財団(NSF)から奨学金を得てペンシルヴェニア大学で認知心理学を専攻し、修士号取得。認知心理学の知識をもとにプロのポーカープレーヤーとして活躍し、2012年の引退までにポーカーの大会で400万ドル以上の賞金を獲得。共同設立した非営利団体「Alliance for Decision Education」は、意思決定に関する教育を通じて生徒や学生を支援し、彼らの生活を向上させることを使命としている。このほかにも「National Board of After-School All-Stars」のメンバーや、「Franklin Institute」の役員を務め、2020年には「Renew Democracy Initiative」の一員となる。自著『確率思考──不確かな未来から利益を生みだす』(日経BP、2018年)が全米ベストセラーになる。

【訳者】
片桐恵理子(かたぎり・えりこ)

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