第6回絶望しても理想を追った 坂本龍一さん、ベートーベンに重なる生き方

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聞き手 編集委員・吉田純子
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 音楽家・坂本龍一が旅立った。のこされた音には何が託されたのか。そこから何が芽吹いたのか。親交のあった人々が語る。

著述家・プロデューサー 湯山玲子さん

 坂本さんとは「ベートーベンのどこがすごいのか」という話を、対談でも、プライベートな会話でもよくしていました。でも、ふと考えると、坂本さん自身もベートーベンに、とてもよく似ているんですよね。

 ベートーベンは「悲愴(ひそう)」の第2楽章のような、人の心を揺さぶるメロディーを書ける人でした。アイデア豊かでキャッチー。しかし、そこに安住しなかった。

 持ち前の才能が発揮できる音楽から、構造や音響の世界である交響曲へと関心の対象を移し、挑戦を続けた。しかも反権威でした。シラーなどの詩作を読みあさり、結果として到達したのが「人類みな兄弟」を歌いあげる「第九」です。

 理想と挫折という、フランス革命の時代精神の反映としての音楽を作ったベートーベン。それに対し、坂本さんも、人間だけが作り得るメロディーや和声の世界を離れ、自然界の音や時間の概念を織り込んだ音響的アプローチへと踏み込んでいきます。それははからずも、地球と人類の存続を危ぶむエコロジーの潮流と重なります。

 音楽だけじゃなく、人間性も似ています。

 中傷を浴びても、絶望しても、不屈の努力で理想を追い続ける。この生き方も、まさにベートーベン的です。

 坂本さんと同世代、つまり全共闘に青春を捧げた若者たちは、その後、ほとんどが挫折していきました。理想はしょせん理想であり、生活や経済のリアルを知らない「お花畑」的言説であると。

 でも坂本さんは、「理想を現…

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この記事を書いた人
吉田純子
文化部|本社コラムニスト、編集委員
専門・関心分野
音楽、舞踊