「40歳以上お断り」は差別なのか 飲食店が「年齢制限」に踏み切る深刻な理由とは
「年齢制限」を打ち出す飲食店が増えている
都市部で「20代限定」「25歳以上限定」「40歳以上お断り」といった「年齢制限」を掲げる飲食店が増えており、メディアやSNSなどで話題になっている。若年層の賑やかさを歓迎する店、大人の落ち着きを尊重する店など、その線引きは店ごとに異なるが、共通しているのは「客層を絞る」という経営判断だ。
飲食店が年齢制限を設ける最大の理由は、客層の「均質化」によって体験価値を高めることにある。年齢が近い人同士で構成された空間では、会話のテンポやテンション、滞在時間の期待値が揃いやすい。それだけに店内の空気感は安定し、メニュー構成や価格の設定、サービス設計なども効率的になる。
例えば若年層をターゲットに絞った居酒屋では、価格を抑えた飲み放題やリーズナブルな料理といった従来の魅力に加え、「気兼ねなく騒げる空間」が提供されている。一方で30代以上の年齢層向けには、料理や酒、さらには接客のクオリティを上げて体験価値を高め、「大人が落ち着いて食事を楽しむ場」を訴求している。
居酒屋など大衆的な飲食店は、これまで老若男女幅広い客層に向けて門戸を広げて「料理の味」や「価格」で競ってきた。しかし現代の消費者の価値基準は「どんな人たちとどんな時間を過ごせるか」に確実にシフトしている。店側はこのニーズに対応するために「年齢制限」という手段を上手に利用しているのだ。
多様化するニーズにどう向き合うか
コロナ禍以降増えつつある外国人観光客への対応も飲食店にとっては重要な課題だ。関東を中心に展開する立ち食いそばチェーンでは、「旅行者の方は、ランチタイムの来店をご遠慮ください。当店は、この近辺で働く人たち・学ぶ人たちを優先します」と日本語のほかに英語や中国語、韓国語で店頭に貼り紙を掲示したことが賛否を招いた。
この「外国人観光客お断り」というスタンスの背景には、インバウンド需要の回復により多国籍、多文化の客が一気に混在するようになったことがある。言語やマナー、食事スピード、写真撮影の頻度など、価値観の違いが顕在化しやすくなり、結果として「落ち着いて食事をしたい層」「会話を楽しみたい層」との摩擦が生まれているのだ。
「年齢制限」や「観光客お断り」という施策は、不公平感を招くというリスクもある。しかしながらマーケティングやブランディングの観点からは非常に有効だ。多くの飲食店が集まる都市部において、その店のコンセプトをひと目で理解させることは、何より強いメッセージと拡散力を持つ。
またこのような差別化は飲食店の収益構造にも直結する。客単価や滞在時間の予測が立ちやすく、スタッフ教育や厨房オペレーションの効率化にも寄与する。年齢や国籍という属性を軸にすることで、不特定多数をターゲットにした業態よりも絞られた客層に合致したサービスを提供することが可能になっているのだ。
飲食店の二極化が加速する時代へ
さらに飲食店がコンセプトを明確に打ち出してターゲットを絞ることで、深刻な人手不足への効果的な対策にもなり得る。客層の年齢や属性を揃えることで、店内の雰囲気が安定し、トラブル対応のリスクが軽減される。その結果、スタッフの負担も減り、少人数でのオペレーションも組みやすく効率的な店舗運営ができるのだ。
今後、飲食店の二極化はさらに進んでいくことだろう。従来のように幅広い客層をターゲットにした店と、狭い客層をピンポイントで狙っていく店の二つだ。これまでは価格によって客層はセグメントされていたが、そこに新たな指標として「年齢」や「国籍」が加わることで、より解像度の高いターゲッティングが可能になる。
人口減少と人手不足という2つの構造的課題に直面する飲食業界にとって、限られたリソースで最適な顧客体験を提供するための戦略として、年齢制限を含む様々な顧客選別の手法がこれからも模索されていくことは間違いない。「店が客を選ぶ」と聞くと嫌悪感を覚える人もいるかもしれないが、店と客の双方にとって最適なマッチングを実現させて、客の満足度を最大限に高めるために、顧客選別は有効な手段なのだ。
※画像は生成AIを使って作成したものです。
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