さて、企業エンタメはかなり面白くなってきた――延期・面談・先行異動という名の即興劇
アルプスアルパインの一連の動きを、少し距離を置いて眺めてみる。
すると、どうにも整理がつかない感覚が残る。
まず、異動の実施時期が9月に延期された。
判断としては決して悪くない。
むしろ、現実を直視した結果だと受け止めることもできる。
しかし、である。
それならば、最初からその判断はできなかったのかという疑問が残る。
12月の事後通知、元旦発令という謎の人事を選び、
現場と家族に混乱と緊張を強いた末に、
「やはり延期する」と修正する。
これは柔軟性というより、計画不在の証左に近い。
さて、企業エンタメはかなり面白くなってきた。
次に示された「次のステップ」を見ると、
課長・本部長・社長の3者がまず面談、あるいは会談。
その後に、社員・本部長・人事による面談が続くという。
ここで素朴な疑問が湧く。
順序が逆ではないか。
通常、組織は
方針を定め、説明し、意向を聞き、必要なら調整する。
ところが今回は、
決定 → 通知 → 混乱 → 延期 → 面談の多重化
という、後付けを積み重ねる構造になっている。
まるで、決めながら考えているのではなく、
考えていなかったことを会議で埋め合わせているように見える。
この流れの中で、
12月29日の省人化を目的とした200億円投資、
さらに1月15日の300億円規模の強気な投資発表が重なる。
数字は威勢がいい。
だが、人をどう動かすのかという設計は定まらないまま、
人を減らすための投資だけが先行していく。
これは経営なのか。
それとも数字による自己説得なのか。
さらに不可解なのが、
3月に「支障のない人から先に異動する」という方針である。
支障のない人とは誰を指すのか。
業務の切れ目にいる人か。
家庭事情が比較的軽い人か。
あるいは、異議を唱えない人か。
仮に一部の社員が先に動いたとして、
残るチームはどうやって業務を回すのか。
引き継ぎは分断され、責任は曖昧になり、
現場の負荷だけが増える構図が容易に想像できる。
それでも「回る」と考えているとすれば、
それは現場の献身を前提にした幻想である。
ここまで並べると、ある像が浮かび上がる。
異動は決めきれない。
説明は後追い。
投資は先行。
面談は重層化。
実行は分割。
これは戦略ではない。
迷いが可視化されただけのプロセスである。
延期そのものが問題なのではない。
問題は、
なぜ延期が必要だったのか、
何が誤っていたのか、
それがいまだ言語化されていない点にある。
経営とは決断の芸術である前に、
順序を設計する行為である。
順序を誤れば、
どれほど立派な理念も、
どれほど巨額の投資も、
現場ではただのノイズになる。
いま起きているのは改革ではない。
改革が設計されなかった結果としての、
即興的な調整の連続である。
おかしいではないか。
そう感じる社員が増えるのは、
むしろ自然な帰結なのである。
この記事は本当は、次に同社が出してくる資料
というものを確認してからの方が、タイミング的にはいいのだと思う。
しかし、私はその資料に既に興味を無くしてもいるので
このタイミングで書いた。
その背景を以下に書く。
おわりに――あくまで、私個人として。
CEOの年頭挨拶を聞いたとき、私は正直に言って、
怒りよりも先に「可哀そうだ」という感情を抱いた。
それは批判ではなく、どちらかと言えば気遣いに近い感覚である。
傷んだ仲間を何とかしたい、それにも近い。
会社を立て直したい。その気持ち自体は、本物なのだろう。
しかし同時に、
「この視野しか持てないのか」
「その経験不足を、全社員の前でさらす必要があったのか」
という思いも拭えなかった。
長年、会社に尽くしてきたのだろう。
仕事に人生の大半を預けてきたのだろう。
だからこそ、評価してくれる偉い人の名前を並べ、
正しさの裏付けを外側に求めてしまう。
それはOEM依存という事業構造だけの問題ではない。
生き方の問題でもあるように、私には見えた。
私は問いたくなる。
あなたは、本当はどう生きたかったのか。
そしてこの会社は、これから何で飯を食っていくと、
なぜ決めきれないのか、と。
投資をしないと儲けられないと誰が思っているのだろう。
研究会の仲間たちと酒を飲み、アウトドアで笑い、
学生の内定を皆で本気で後押しする。
そんな時間の中に、もし、CEO、あなたが若い頃から身を置いていたなら、
その年齢になって、ここまでの迷走をしなくて済んだのではないか。
そんなことを、ふと考えてしまう。
これは断罪ではない。
個人攻撃でもない。
ただ、同じ時代を生きる一人の人間として、
どうしても拭えない悲しさを書き残しておきたかった。
手をかけたおかずと味噌汁と
炊きたての白いご飯で、もてなしながら
癒してあげたいという気持ちに近いものも持ち合わせている。
頑張ってきたあなたに、頑張れとは言わない。
ただ、私は個人として
正解はあなたの視野の外にしかないことを伝えたい。
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