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プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

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6分

渦中への帰還

 伝説の魔道士からの、まさかのご指名に、広場にいる全員が僕を見ている…… 「海神王(ネプトゥーヌス)様。申し訳ございません……(おっしゃ)っている意味がよく分からないのですが」  飛竜に乗ってやって来た、城塞都市からの使者は、困り顔で僕と菅谷(すがや)稀太郎(まれたろう)さんを交互に見る。 「ふむ。分からんだろうな……」  稀太郎(まれたろう)さんも、ちょっと困り顔だ。  いや、僕だって困ってるんだけど。 『ブルー、この人数にバラしちゃ、さすがにマズいよな?』 『そうだね。いくら魔界とはいえ、守備隊員は〝アガルタ〟に行けるみたいだし、どこから情報が漏れるか分からない』  だよな。さて、どうしたものか。  ……あれ? 稀太郎さんが近付いてきた。 「もしや秘密だったか? すまんな」  僕の耳元で(つぶや)く。  ……あ、そっか。この人には、ブルーと僕の会話が聞こえてるんだっけ。 『はい。実はちょっと困ります』 「そうか。ではひと芝居、打つとしよう」  そう言うと、稀太郎さんは、腰に下げた(かばん)から、ナイフを取り出した。 「見るが良い。この魔剣にはワシの魔力が込めてある。これを弟子である少年に託そう!」  稀太郎(まれたろう)さんが短剣を頭上に掲げると、周囲から歓声が上がった。 「という事にしておいてくれ。何の変哲もないナイフだ……果物でも剥くといい」  僕にナイフを手渡すと、ニコッと笑う稀太郎(まれたろう)さん。この人、なかなかやるなあ!  ……よし、それじゃ僕も。 「お師匠様……お力を拝借(はいしゃく)致します! わが命に替えましても、必ずや、城塞都市を救ってご覧に入れます」  大げさな身振り手振りでナイフを頭上に掲げたあと、バックパックに入れてペコリと頭を下げる。 「うむ。お前はいずれ、ワシをも超える魔道士になる器だ。任せたぞ」  なるほど、という顔で、一連のやり取りを見ている城塞都市からの使者。よし、辻褄(つじつま)が合ったな。 「それでは、お弟子(でし)様。早速ですが飛竜にお乗り下さい。城塞都市まで5時間ほどかかります。急ぎませんと……」  マジか! 空を飛んでも、そんなにかかるんだ。遠かったもんなあ…… 「彩歌さん、織田さん、バ……遠藤さん、辻村さん、ちょっとこっちに……」  そうそう。みんなで手をつないで輪になろう。 「達也さん、アレを試すのね」  お、覚えてたのか彩歌、さすがだな。 「内海さん、何を? 急がないと城塞都市が……」  いやいや織田さん。5時間もかけてたら間に合わないから。 「おおっ! アニキ、何が始まるんスか?」 「なになに? パイセン、これって何の遊び?」  お前らは、何でちょっとワクワクしてる感じなんだよ! 「とにかく、絶対に手を離さないで」  よし、僕の考え通りならこれで…… 「あの……お弟子(でし)様? 何をされているのですか?」  この場所にいる全員が、不思議そうに僕たちの作った円陣を見ている。これで上手く行かなかったら、ちょっと恥ずかしいぞ。 「この場から僕たちが消えたら成功です。先に城塞都市に着いていると思いますので安心して下さい……では参ります!」  僕は、大きく息を吸い込んだ……と同時に、周囲の景色は一変した。 「あ、アニキ?! ここ、どこっすか?!」 「マジ? 大砦に居たのに……! パイセンすげぇ! パネェ!」  眼の前にあるのは、見覚えのある巨大な門。よし! 成功だ! 「良かった。まだ門は破られてないわね」  僕たちは帰ってきた。一瞬にして城塞都市に。 「内海さん! これは一体……?!」  織田さんも、キョロキョロと周囲を見て、目をパチクリさせている。 「〝阿吽帰還(あうんきかん)〟の魔法です」  ……思った通り〝阿吽帰還(あうんきかん)〟の魔法は、呪文を唱えた場所まで、次に息を吸った瞬間に帰って来るという魔法だった。超便利だけど……僕しか使えないな。 「驚いた……内海さん、探検の間、ずっと息を止めていたのですか?! でも、それじゃ呪文を唱えるどころか、会話も出来ないんじゃ……?」  そう。そこが問題だったんだよね。だから僕はある方法を試してみたんだ。 「……胃袋の中に小さいゴーレムを作って、そいつに喋らせてた!? アニキ、それちょっともう、軽く引くレベルッすよ!」 「どおりでパイセン、声がヘンだと思ってたし! 途中で慣れて忘れちゃってたけど!」   そう、僕は〝使役:土〟で〝ミニ達也〟を胃の中に作って、代わりに喋らせていた。  なんと胃の中のゴーレムが詠唱しても、魔法は発動するのだ。 「アシスト機能は使えないから、全部覚えなきゃならなかったけどね」  スクロールの〝自動詠唱機能〟を使うと、勝手に自分自身の口で呪文を詠唱してしまう。そうなると、もちろん〝息を吸う〟事になってしまうので、呪文は一晩で暗記した。幸いな事に、僕の夜は誰よりも長いのだ。  ……あ、ちなみに、体の外に作ったゴーレムが唱えた呪文は無効のようだった。あくまで、僕の口から呪文が発せられるというのが、魔法の発動条件なんだろう。 「おい、お前ら何をしている?」  突然、背後から声が聞こえた。 「戦えるなら (やぐら)に上がるか、結界前で待機! 非戦闘員は避難だ。早くしろ!」  立派なローブを身につけた男性に声を掛けられた。 「既に外門はボロボロだ。いつ魔物が入り込んでくるか分からんぞ」  門の前にはバリケードが張られ、多くの魔道士が待機している。でもさ、確か門の前には結界があったよな。 「強力な結界があるから、大丈夫なんじゃないの?」 「いいえ、結界に魔力を送っている魔導球の出力には限界があるの。今回のように多くの魔物が一斉に結界に触れれば、絶対に保たないわ」  なるほど。それはマズいな。 「この北門だけではなく、西と南の門も、かなり厳しい状態だ。戦えるならこの場を死守して欲しい」  そう言って、男性は慌ただしく走っていった。  ……あれ? そういえば、飛竜に乗った魔道士も言ってたけど、なんで東門は大丈夫なんだ? 「東門は帰還用の門だから、いつでも開けられるように、常に優秀な魔道士が多く集められているのよ」  そういえば前にそんな事を言ってた気がするな。 「では、私は魔物の大侵攻の原因を止めてきます。皆さん、すみませんがもう少しの間、持ち(こた)えて下さい」 「おっと! ちょっと待った織田っち!」 「無事に城塞都市に帰ってきたら、全部話してくれる約束じゃん!」  お前ら、よく覚えてたな。 「……どうしても聞かれたいですか? 聞けばあなた方を巻き込むことになります」 「俺たち、友達じゃねぇか!」 「役に立たないかもしれないけど、力になりたいし!」 「ふふ。本当に第一印象って当てにならないわね。あなた達」  彩歌の言うとおりだ。バカップルなんて言ってゴメンな。 「内海さんと藤島さんは、どうされますか?」  ある程度はわかってるけど、このまま真相を知らないのは気持ち悪いな。 「聞かせて下さい。力になれると思います」 「うん。どういう事か教えて欲しい」 「……分かりました」  少し呼吸を整えてから、織田さんは静かに語り始める。  その内容は、身の毛もよだつような……僕たちの想像を遥かに超えた物だった。 渦中への帰還の挿絵1

初回投稿日時:2020年2月23日 7:05

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  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年2月23日 9時40分

    ついに明らかにされる世紀末救世主伝説……

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    SHO

    2020年2月23日 9時40分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月23日 9時50分

    アアッ( ;∀;)有り難うございますッッ! とうとう、集○社様からお叱りを頂く事に!! ((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 土下座したまま更新頑張りますッッ!←

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    ガトー

    2020年2月23日 9時50分

    カレーうどん
  • メタルひよこ

    Neo

    ♡100pt 〇50pt 2020年2月23日 12時00分

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    この世界観…好きですっ!

    Neo

    2020年2月23日 12時00分

    メタルひよこ
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月25日 22時00分

    ウオオッ!!。・゚・(ノ∀`)・゚・。なんと! 貴重なポイントを! 嬉しいですッ! 有り難うございます!

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    ガトー

    2020年2月25日 22時00分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡500pt 2020年2月25日 21時47分

    まさか息を止めていたとは……!!?:(;゙゚'ω゚'): パイセン、パネェっす!!!

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    hake

    2020年2月25日 21時47分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月25日 22時07分

    (人´∀`).☆.。.:*・゚有り難うございます! そうなんですよ! 度々、声がおかしいとか言われていましたが、そういう事だったんですねー (〃∇〃) 

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    ガトー

    2020年2月25日 22時07分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡200pt 2020年2月23日 10時04分

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    ほほう やるではないか

    渡鴉

    2020年2月23日 10時04分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月23日 10時19分

    有難きお言葉ッ! ヽ(=´▽`=)ノ🌏 いつもパワーをいただいております!

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    ガトー

    2020年2月23日 10時19分

    カレーうどん
  • れびゅにゃ~

    とら猫の尻尾

    ビビッと ♡100pt 2021年1月6日 7時13分

    《「……胃袋の中に小さいゴーレムを作って、そいつに喋らせてた!? アニキ、それちょっともう、軽く引くレベルッすよ!」》にビビッとしました!

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    とら猫の尻尾

    2021年1月6日 7時13分

    れびゅにゃ~
  • カレーうどん

    ガトー

    2021年1月6日 10時23分

    フオアアアアッヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。ありがとうございます!  天才的な〝使役:土〟の使い手ゆえに可能な方法ですね(≧∇≦)

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    ガトー

    2021年1月6日 10時23分

    カレーうどん

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