やっと、塔の外に出ることが出来た。
……と、ここだけ聞くと、塔から降りてきたのかと思われるかもしれないが、1ミリも登ってはいない。
ここ数日間、地下を這いずり回っただけだ。塔なのに。
『タツヤ……ナントカと煙は高い所に登ると言うね』
『いやいやいや、失礼だなブルー! 別に僕は、どうしても登りたいってわけじゃないぞ』
例えば、ゲームで〝塔〟の表示なのに、下へ下へと階段があったら、どう考えてもバグだと思うだろ。
「内海さん、どうしました?」
「あ、織田さん。いえ、塔なのに登らなかったなって……」
「はは、そうですね。まあ、私も塔の部分に関しては詳しくないですが、今回は内海さんも私も、地下に用があったのですから良いじゃないですか」
まあ、そう言われてみればそうだな。
……塔の部分は詳しくない、か。
「さて、地上に出るのにも2日掛かった。ここから大砦まで約1日……」
「モース・ギョネの死体、無事だと良いんだけど」
彩歌が言った。
……うっかりにも程がある。
大ちゃんの言う通り、モース・ギョネは、時間を操作する能力を持った、とても貴重な存在だった。何としてもサンプルを持ち帰りたいところだ。
そしてもう一つ、とても気掛かりな事がある。
「このままだと、卒業式に間に合わない……!」
広すぎだぞ魔界! あと、深すぎだダンジョン!
「達也さん、大丈夫?」
よっぽど神妙な顔つきだったんだろう。彩歌が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「いやいや。全然大丈夫だよ。それより、あっちは大丈夫かな?」
遠藤と辻村に視線を移すが、フッとそっぽを向かれた。地上に戻って来るまでの間も妙によそよそしかったし……
「どうしたんですかね、お二人とも」
織田さんが苦笑いで言う。
たぶん、僕の〝使役:土〟の威力を見たせいだ。
……やっぱある程度、説明するべきか?
『ブルー、このまま旅を続けるのは気まずいし、織田さんの正体もなんとなく分かってきたし、そろそろ良いんじゃないか?』
『そうだねタツヤ。ここまで見られてしまっては、説明しない方が逆に問題があるかもしれない』
やっぱそうだよな。
それじゃ、いま目の前に突然現れた、魔物の一団を片付けてから説明しよう。
>>>
……やっぱ説明しなきゃ良かった。
「マジで〝アガルタ〟ってあるんスか! え? じゃ何? 達也さんは〝アガルタ〟そのものって事?! パネぇ! もっと早く言ってくれれば良いじゃないスか! 水臭いっスよ!」
なんで急に舎弟みたいになってるんだよ、遠藤。
「世界を守るってカッケー! 本当は26歳って! マジおとなじゃん! 達也パイセンって呼んでいい?」
やめてくれ辻村。周りから変に思われるだろう。
「……想像以上でした。私はてっきり、魔王と何か関わりがあるのかと思っていましたが。内海さんの強さの理由が分かりましたよ」
ごめんよ織田さん。魔王とはガッツリと関わってるんだよね、僕。
でもパズズの件は、念のため伏せておいた。なるべくなら、僕がパズズを従えている事は言わないほうが良いだろう。魔界人が魔王の存在を極端に恐れるというのも理由のひとつだけど、それより織田さんは……
「達也パイセン! 魔物だし!」
だからパイセンって呼ぶなし!
……えっと、あの大きいカニみたいな魔物は、何て名前?
>>>
〝味噌〟の大群を倒した後、僕たちは大砦を目指して進む。
「時間があれば、あの魔物は美味しく料理できたんですが」
と、残念そうな織田さん。
やっぱりそうか。ここが一番うまいんだぜっていう部分が呼び名になっちゃってるパターンだ。という事は、相当美味しいんだろうな。
「すみません織田さん……なるべく早く、西の大砦に行かなければならないんです」
「いえいえ、急ぎなのは私も同じですので」
にっこり微笑む織田さん。
「暗くなってからも、少し歩くかもしれませんが、よろしくお願いします」
とは言っても、秘密をほぼ全部バラしちゃったんだった。全力を出せるなら危険は無いな。
「達也さん、大丈夫っス! 一生ついていくっス!」
「パイセン強ぇし! マジカッケーし!」
……お前ら、そのスタンスは絶対変えないつもりなのか?
「遠藤さん、辻村さん。さっきも言いましたけど〝アガルタ〟の事は絶対に誰にも言っちゃダメですからね?」
「地下牢行きになるわよ?」
ウソじゃない。魔界の一般人には〝アガルタ〟の存在は秘密なのだ。知っているのは、城塞都市の運営関係者と守備隊員のみ。
「分かってますよ、
※視点変更 内海るり → 内海達也 ※視点変更 神奈川県 → 魔界
開けて下さい
コメント
もっと見る
同じジャンルの新着・更新作品
もっと見る-
-
ダンジョン探索がプロスポーツとして確立された現代。かつて新進気鋭の戦術家だった男は、自らの指示遅れで恋人を死なせた(行方不明にさせた)という、消えない十字架を背負っていた。逃げるように東京を去り、大阪で酒溺れ、街を彷徨い歩く毎日に明け暮れること五年。男は「彼女に対して果たせる責任などない」という残酷な納得に辿り着き、自らの人生を完全に諦めようとしていた。 そんな彼の前に、一人の赤髪の少女が現れる。公園で酔いつぶれる男を強引に立たせ、有無を言わさぬ意志と救いを求めるような瞳で彼女は告げた。 「貴方には私たちの戦術担当になって貰うわ」 過去を捨てきれないまま、無理やり戦場へと引き戻された元天才。これは、絶望の淵で酒を煽っていた男が、少女の切実な願いに導かれ、失った誇りと責任を取り戻すための再起の物語である。 *カクヨム、なろうでも連載してます。
読了目安時間:26分
-
最凶で不死身のおっさん、ダンジョンを行く~現代日本に出現したダンジョンの謎解き冒険譚~
初めての現代×ダンジョン物です!
8
550
5
現代/その他ファンタジー
長編
13話
15,509字
2026年1月19日更新
現代日本。 富士山近郊に、突如出現した”ダンジョン”に日本を含めた世界が注目した。 そして、調査隊を結成し、意気揚々と調べ出したまでは良かったのだが……。 ──調査隊は、一人も戻って来なかった。 及び腰になる政府を、非難する団体やダンジョン調査自体を反対する団体も現れた。 そんな中、秘密裏に裏で調査隊を募集する組織の元に、金の亡者等、後ろめたい目的のある者達が集結し、”ダンジョン”の調査へ向かう事となる。 その中に、謎の”おっさん”がいたが、誰も気にも留めなかった。 その人こそが〇〇だというのに── (この作品は、HJ小説大賞後期参加作品です) (この作品は、ノベプラ様オンリーです) (不定期更新です) (2025/12/19 表紙をすずしろめざと(Mez)様にご依頼し、描いて頂きました)
読了目安時間:31分
読者のおすすめ作品
もっと見る-
【第一部】からの続編という名の蛇足w
241
588.7K
1.9K
現代/その他ファンタジー
長編
111話
336,085字
2026年1月19日更新
この話は『オレはワクワクできるファンタジー世界へ行きたい! ナッセの奇想天外な大冒険!』の外伝です。 基本的に主人公TUEEEE展開でギャグ多め! 本編では出てこなかったキャラやモンスターなどが多数出てきたりします! 最近では世界観が更に拡充していって風呂敷広げすぎて、もはやカオス化! 掲載日:2021年 12月 01日 ※この作品は300話以上になる場合があります! ↓↓↓↓【第一部】はココ!↓↓↓↓ 『https://novelup.plus/story/675889739』 ※この作品は「小説家になろう」にも投稿されています。
読了目安時間:11時間12分
コメント投稿
スタンプ投稿
SHO
どこまでも付いて回るバカップルの小者臭が逆に安心感w
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
SHO
2020年2月20日 7時30分
ガトー
2020年2月20日 11時39分
ぬはあ! ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。有難うございます! バカップルはレギュラー張れる何かを持っていますよね……それが何かは分かりませんが(;´д`)
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
ガトー
2020年2月20日 11時39分
hake
だんだん遠藤&辻村バカップルに愛着が……!!(笑) 達也パイセンには思わず噴いてしまいましたw
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
hake
2020年2月20日 14時03分
ガトー
2020年2月20日 14時42分
🌏ヽ(=´▽`=)ノ🍎あああああっ! 有り難うございますッ! なんだかんだで、憎めない二人……もちろん、私も好きなキャラです! パイセン、パネェっす! (人´∀`).☆.。.:*・゚
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
ガトー
2020年2月20日 14時42分
とら猫の尻尾
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
とら猫の尻尾
2021年1月2日 23時23分
ガトー
2021年1月3日 4時24分
ふぉおおおお! ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。有難うございます! ご期待に添えますよう頑張ります!!
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
ガトー
2021年1月3日 4時24分
渡鴉
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
渡鴉
2020年2月20日 13時24分
ガトー
2020年2月20日 13時42分
フアアアッ(*˘︶˘*).。.:*♡ こちらもッ! ! 有り難うございます! 嬉しいですッ!!
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
ガトー
2020年2月20日 13時42分
すべてのコメントを見る(4件)