戻る

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

175 / 267

7分

※視点変更 内海達也 → 内海るり ※舞台変更 魔界 → 神奈川県

まゆねこ

 誰かに見られている気がして、周囲を見渡した。 「……誰も居ないなあ」  私は内海(うつみ)るり。小学5年生。  さっきの、妙な視線は何だろう。  いま現在、ウチの地下には〝悪魔〟が2匹と〝魔界人〟が5人も居る。  ……厳密に言うと〝天才ヒーロー〟と〝宇宙人〟と〝救世主様〟も居るんだけど。  もしかして、そっち関係かな? 「で、ちなみに、アニキと〝魔法使い〟は不在、と。ずいぶん長い(あいだ)留守にしてるけど、魔界とやらで、楽しくイチャイチャしてるんじゃないの?」  そのアニキというのは〝星の化身〟だって。  ……何なのよ、それ。イマイチ分かり(づら)いわ。 「それにしても……」  やっぱり誰かが、私を見ている気がする。  しかもかなりの威圧感だ。一体なにもの…… 「……あ!」  ネコだ。  塀と塀の隙間(すきま)から、真っ白なネコがこっちを見ている。  なるほど、そんな低い位置だったんだね。すぐに気付かないわけだわ。  ……けど、何だろう。  この子、まだ小さいくせに、妙に眼力(めぢから)が強いような? 「……っん!! ぶぁあああーっはっはっは! あんた何、そのマユゲ!」  サインペンかな? 見事に(まゆ)を書かれている。  真っ白なせいでクッキリと。 「かなり絵心のあるヤツに書かれたみたいね? 見事に劇画チック!」  巨悪に単身で立ち向かいそうなぐらいに凛々(りり)しい眉だ。  でも、この眉の作者 (?)は、きっと飼い主じゃないな。  だって、悪意が溢れてるもん。いや、分かんないけど。  ……飼い主じゃないと信じたいわ。 「お前、どうしたの? なんで私を見てるの?」  どうやら私は、普通の人とは違う〝能力〟を持っているらしい。  ……とは言っても、魔法や超能力を使えたり、変身したりは出来ないんだけど。 「にゃー」 「眉が眉だけに、声が可愛いと違和感があるね」  首を(かし)げる(まゆ)ネコ。  可愛い仕草なんだけど、私の視線は眉に釘付けだ。  その顔で首をひねられても、やり手のビジネスマンが難題を押し付けられたように見えてしまう。 「にゃあ?」 「ごめんねー。和也さんなら分かるのかも知れないけど、私じゃお役に立てないわ」  私に与えられたのは〝救世主と同じ時を生きる〟という能力。動物の言ってる事なんか、分かろうはずもない。  ……けど、なんだろう。 「この子、何か私に言おうとしてる?」  真剣な眼差しを見ていると、なんとなくそんな気がする。いや、眉は関係なしに。 「にゃ」  ついてきて! って言ってるな。  ……まあ、ヒマだし、眉を書いたアーティストの事も気になるし、行ってみるか。  >>> 「……思い出した。この子、乱丸(らんまる)だ」  私が11歳に〝早送り〟される前までの同級生、二度岩(にどいわ)ハルちゃんの飼ってるネコだ。  ……落書きひとつで、印象ってこんなに変わるんだなあ。 「もしくは、画力のすごさ?」  なんてね。  どっちかっていうと、私の能力のせいで、イマイチ記憶が曖昧なせいだな。  ……私には、物心ついてから小学3年生までの、すごくボンヤリとした記憶と、それよりハッキリとした、小学5年生までの記憶がある。  和也さんやブルーさん(いわ)く〝どちらも現実〟なのだそうだ。  へぇ、そうなの。としか言いようがないよね。 「ハルちゃんの家に向かってる……」  私には、同級生としての記憶があるけど、ハルちゃんには無い。  彼女にとって私は〝5年生のお姉ちゃん〟なのだ。ちょっと寂しい。 「にゃー」  おや? ずいぶん手前で止まったな。え、どこ行くんだよ乱丸…… 「裏口? ちょっとちょっと。私は知らないわけじゃないけど、向こうは私の事を知らないも同然なんだぞ?」  完全に不審者じゃん、裏口からって。こら、乱丸! 私をどこに連れていく……ん? 「……いいか? わかったな?」  裏口から男性の声。確か、ハルちゃんのお父さんは、海外に単身赴任中だった。親戚の人? 「……おとなしくしてろ。痛い思いはしたくないだろ?」  あーあ。違う違う。そんな事を言う親戚はちょっと居ないな……アレだ。不審者とか犯罪者的なヤツだわ。 「乱丸、まさかこれを知らせに来たの?」 「にゃー」  そうみたい。  さてさて、どうしますかね。  ……まあ、ここは普通に警察に行くかな。  私って、あの5人と違って、こういう時に役に立つ能力は無いんだよな。 「にゃ」  え? うしろ?  振り向いた途端に、大きな手で押さえつけられた。しまった! もうひとり居た!  >>>  さるぐつわ。なるほど、これは(しゃべ)れないや。  となりには、後ろ手に縛られたハルちゃんと、そのお母さん。  同じように、さるぐつわと……2人はご丁寧に、目隠しまでされている。 「この、変な眉のネコ、助けを呼びに行きやがったのか?」 「へへへ。変な眉って、それ書いたのアニキじゃねぇですか」  なんだ、ここに居たのか画伯。 「さて、あと10分もすりゃ、車が来る。そうしたら開放してやるよ」 「にゃー」  嘘だ。  乱丸は、ちゃんと聞いていた。  本当は私たちを皆殺しにして逃走。  ……ここを焼くための灯油も用意してあり、準備も万端らしい。 「にゃ」  なんで分かるんだろう。私もとうとう、何らかの新たな能力に目覚めちゃった?  ……え? 違う? 逃走車が来るまで待て?  なんか、乱丸の声がそう聞こえてるのかと思ってたけど、違うみたい。  そっか、この声は…… 「お? 来たみたいだな。おい、準備だ」 「へいアニキ」  外から、大きめのエンジン音が聞こえる。なんで逃走用にあんな騒々しい車を選ぶんだ? バカなのか? 「さてと……ヘヘヘ、悪く思うなよ?」  アニキとやらが刃物を取り出した。  ハルちゃんの髪の毛をつかんで、喉元にその刃物を……  その時、ズガンという大きな音が響いた。 「何だ? おい、何の音だ?」 「さあ、ちょっと見てきましょうか……あ、あれ? そのネコ、黒かったッスかね?」  いや、白地(しろじ)(まゆ)だったと思うけど? 「2匹居たんじゃねぇか? それより、外を見てこいよ」 「あっ、はい!」  ううん。ハルちゃんちのネコは乱丸だけ。黒いのは、ウチのネコだ。 『おまたせ! ごめんね。〝いちもうだじん〟にするって、カズヤがいうから』 「分かってる。あと、謝る必要は無いって和也さんに伝えておいて」 『りょうかい!』  クロは目に見えない速さで私たち3人の拘束を解いて、さるぐつわを外した。  目隠しを外さないのは、大ちゃんの指示かもね。  そして次の瞬間には、犯人の刃物を弾き飛ばしたようだ。早すぎて見えないけど。 「な? 何だ?」  何が起きたのか分からず、慌てふためく犯人。 「和也さんも言ったと思うけど、殺しちゃダメだよ?」 『ん、ちょっとちがうよ?』  え、そう?  ……和也さんなら〝犯人は殺すな〟って言うと思ったんだけど。 『カズヤはね、もしるりちゃんになにかあったら、すきにしてもいい。だって』 「!!」 『まっかになった?! るりちゃんだいじょうぶ? はんにん、ころすね!』 「あー! ちがうちがう! これは犯人のせいじゃないから!」 『ちぇー。そうなんだ。じゃあ、うごけなくするー!』  >>>  クロの軽い一撃で、犯人は玄関先まで吹っ飛び、泡を吹いている。 『たぶん、みっかは、めをさまさないよ』 「よかった。永遠に目を覚まさないかと思った」 『うーん。カズヤもルリも、なんで、わるいやつにやさしいの?』  玄関を出ると、大破した車と、その中には犯人の仲間であろう運転手。そしてさっきの〝舎弟口調の男〟が、仲良く拘束された上、気を失っていた。 「さすがに仕事が速いなあ」  ヒーローたちは、騒ぎになる前に立ち去ったようだ。  きっと大ちゃんが通報済みだろうし、私も逃げよう。 「にゃー」  駆け出そうとした私を、乱丸が呼び止めた。 「あ、そうだ。乱丸、ありがとう! 助かったよ!」  今日の功労賞は、乱丸だよな。眉は綺麗に洗ってもらいな。  ……って、え?! 「るりちゃん!」  目隠しを外したハルちゃんが立っていた。フラつく足取りで、近付いてくる。 「ハルちゃん……?」  ハルちゃんとは、私が11歳になってからは、会話もしていない。  ……もちろん、覚えているはずがない。 「る……りちゃん……ありがと……」  そう言ったあと、ハルちゃんは膝をつき、気を失った。  まさか、思い出してくれたの?!  ……涙が止まらない。 『ルリ、はやくしないと、ひとがくるよ』 「……うん。行こう」  涙をぬぐい、私は急いでハルちゃんの家を離れた。 『ルリ、ないているの? やっぱり、はんにん……』 「殺さなくていいよ。これは〝嬉し涙〟だから」 『ふーん』  あーあ、これじゃアニキに〝泣き虫〟なんて言えないな。  まゆねこの挿絵1

初回投稿日時:2020年2月19日 6:57

0

この作品が面白かったら「いいね」を押してね!

会員登録をして、さらに応援スタンプ・コメントで作品を応援しよう!

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


  • 賢者

    SHO

    ♡300pt 〇100pt 2020年2月19日 7時26分

    大ちゃんとカズヤとユーリのイラストが下半身のみカラーに!? ……と細かい所に気付いたボクを褒めて褒めて!(笑)

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    SHO

    2020年2月19日 7時26分

    賢者
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月19日 7時34分

    キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! おはようございます! いつもありがとうございます! 細かい所までお気づき頂き、有り難うございます!(๑•̀ㅁ•́๑)✧フワアアア!!  ファンアートなのにむちゃくちゃイジらせて頂いております(ノ∀`)hakeさん、ゴメンナサイ……

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月19日 7時34分

    カレーうどん
  • チンチラちゃん

    hake

    ♡1,000pt 2020年2月19日 22時04分

    あ……ぁぁぁぁぁあぁぁぁぁああ!!!!!(悶え) ちょっ く、栗っち!!! くっ ぐおおおおぉおおぉおぉ(語彙力崩壊)

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    hake

    2020年2月19日 22時04分

    チンチラちゃん
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月19日 22時25分

    アアッ(ノ´∀`*) 有難うございます! 栗っちも、男前ですねえ! ヾ(*´∀`*)ノ お喜び頂けて嬉しいです~!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月19日 22時25分

    カレーうどん
  • れびゅにゃ~

    とら猫の尻尾

    ♡500pt 2020年12月31日 0時15分

    顔をまっ赤にする、るりちゃん、めっちゃ可愛い!この回、大好き!

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    とら猫の尻尾

    2020年12月31日 0時15分

    れびゅにゃ~
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年12月31日 2時00分

    フォオオオオオオオ! ((o(´∀`)o)) 嬉しすぎます!! 有難うございますッ!!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年12月31日 2時00分

    カレーうどん
  • ひよこ剣士

    渡鴉

    ♡200pt 2020年2月19日 9時50分

    ※ 注意!このコメントには
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    良き哉 良き哉

    渡鴉

    2020年2月19日 9時50分

    ひよこ剣士
  • カレーうどん

    ガトー

    2020年2月19日 11時01分

    有り難うございます! ヾ(*´∀`*)ノいつもパワーを頂いております!

    ※ 注意!この返信には
    ネタバレが含まれています

    タップして表示

    ▼▼

    ガトー

    2020年2月19日 11時01分

    カレーうどん

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る
  • 私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

    どこかで結ばれていた彼と彼女

    31

    50

    1


    2026年1月19日更新

    ホームで出会った彼を何故か見つめてしまった 前にも会っていたのかも 私は、今年の4月から中学3年生の女子 田舎なので電車で4ツ先の駅まで乗って通学している。そのせいか同じ駅から乗るのは1~3年までで6人だけ。途中からはだんだんと増えて来るのだが。彼のことは、知らない。だけど、その日は何故か 前から知っているかのように見つめてしまった。彼も、私のことを見詰めているような気がしたのだ。だけど、私と彼との間には 生まれ変わっても 結ばれる運命にあったのだ。

    • 性的表現あり

    読了目安時間:2時間3分

    この作品を読む

  • 飲んだくれ無職のオッサン、公園で美少女に拾われ、迷宮に帰る

    頑張れオッサン

    1

    0

    0


    2026年1月19日更新

    ダンジョン探索がプロスポーツとして確立された現代。かつて新進気鋭の戦術家だった男は、自らの指示遅れで恋人を死なせた(行方不明にさせた)という、消えない十字架を背負っていた。逃げるように東京を去り、大阪で酒溺れ、街を彷徨い歩く毎日に明け暮れること五年。男は「彼女に対して果たせる責任などない」という残酷な納得に辿り着き、自らの人生を完全に諦めようとしていた。 そんな彼の前に、一人の赤髪の少女が現れる。公園で酔いつぶれる男を強引に立たせ、有無を言わさぬ意志と救いを求めるような瞳で彼女は告げた。 「貴方には私たちの戦術担当になって貰うわ」 過去を捨てきれないまま、無理やり戦場へと引き戻された元天才。これは、絶望の淵で酒を煽っていた男が、少女の切実な願いに導かれ、失った誇りと責任を取り戻すための再起の物語である。 *カクヨム、なろうでも連載してます。

    読了目安時間:26分

    この作品を読む

  • アイパッチガール

    引き金を引くのは、少女の眼。

    47

    27.2K

    0


    2026年1月19日更新

    街で噂される“神の血”──《ディヴィニル》 その脅威に襲われた男を救ったのは、眼帯の少女。 無関係だったはずの彼は、その日から静かに蠢く超常の闇に巻き込まれていく。 闇の中では、神骸を巡る血塗られた殺し合いがすでに始まっていた。 静かに“照準”を合わせる少女── 彼女が戦っているモノはなんなのか?

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり

    読了目安時間:2時間13分

    この作品を読む

  • 最凶で不死身のおっさん、ダンジョンを行く~現代日本に出現したダンジョンの謎解き冒険譚~

    初めての現代×ダンジョン物です!

    8

    550

    5


    2026年1月19日更新

    現代日本。 富士山近郊に、突如出現した”ダンジョン”に日本を含めた世界が注目した。 そして、調査隊を結成し、意気揚々と調べ出したまでは良かったのだが……。 ──調査隊は、一人も戻って来なかった。 及び腰になる政府を、非難する団体やダンジョン調査自体を反対する団体も現れた。 そんな中、秘密裏に裏で調査隊を募集する組織の元に、金の亡者等、後ろめたい目的のある者達が集結し、”ダンジョン”の調査へ向かう事となる。 その中に、謎の”おっさん”がいたが、誰も気にも留めなかった。 その人こそが〇〇だというのに── (この作品は、HJ小説大賞後期参加作品です) (この作品は、ノベプラ様オンリーです) (不定期更新です) (2025/12/19 表紙をすずしろめざと(Mez)様にご依頼し、描いて頂きました)

    • 残酷描写あり
    • 暴力描写あり
    • 性的表現あり

    読了目安時間:31分

    この作品を読む

読者のおすすめ作品

もっと見る